現在、タンタンミーティングで受検者の皆さんの第13回論述の個別指導をしておりますが、昨日で18名全ての方の指導が終了しました。

 

それで、第13回論述試験問1についての捉え方を述べていきます。

 

受検者の皆さんは、相談者Aの訴えた問題を事例記録から事実として捉え、主訴にあたるもののみを取り上げている方が多いように感じました。

 

それで、第12回と第13回の設問の違いを確認していきましょう。

 

第12回1級の必須問題の問1では、

 

「問1 この相談者Aについて、どのような問題があるか、あなたの考えをその根拠を含めて記述せよ。」

 

この設問では、相談者Aが抱える問題について、事例指導者にキャリアコンサルタントとしての見解を求めています。

 

解答者は、事例全体を通してAが直面している様々な問題を総合的に捉え、それに対する自分の考えを根拠を示しながら述べることが求められます。

 

つまり、相談者Aの問題点を広範囲にわたり分析し、その中から重要な問題点を抽出し、根拠を持って説明することが期待されています。

 

一方、第13回1級の問題では、

 

「問1 相談者Aが訴えた『問題』は何か、記述せよ。」

 

この設問は、相談者Aが具体的に訴えた問題に焦点を当てることを目的としています。

 

解答者は、Aが面談中に直接言及した「問題」を明確にし、それを簡潔に記述することが求められます。

 

ここで重要なのは、相談者A自身がどのように問題を表現し、訴えているかを正確に把握することです。

 

従って、事例指導者(キャリアコンサルタント)の見解や分析ではなく、相談者Aの言葉や表現に基づいた具体的な問題点を示すことが重視されます。

 

設問の意図の違いの背景として焦点の違いは、

 

第12回の設問は、事例指導者(キャリアコンサルタント)としての総合的な問題把握と分析力を試すものです。

 

これにより、相談者Aの問題を広範に捉え、根本的な原因や複数の問題点を包括的に理解する能力が求められます。

 

第13回の設問は、相談者Aが具体的にどのような問題を訴えているかを特定し、それを正確に記述する能力を試すものです。

 

これは、相談者のニーズや訴えを正確に理解し、共感する能力を測るためのものです。

 

解答の深さとしては、

 

第12回では、解答者はAの問題に対する自分の見解を述べる必要があるため、深い分析とその根拠を示すことが重要です。

 

第13回では、相談者Aの発言に基づいて問題を特定することが求められるため、深い分析よりも正確な特定と理解が重視されます。

 

スキルの違いでは、

 

第12回の設問は、事例相談者(キャリアコンサルタント)の分析力と問題解決能力を評価することが目的です。

 

第13回の設問は、事例相談者(キャリアコンサルタント)の傾聴力と共感力を評価することが目的です。

 

第12回と第13回の設問の意図の違いは、第12回は相談者Aの問題を総合的に捉えて根拠を示しながら分析する力を問うことと、第13回は相談者Aが具体的に訴えた問題を正確に把握する力を問うことにあります。

 

この違いにより、解答者にはキャリアコンサルタントとしての多面的なスキルを評価する意図が現れています。

 

では、相談者Aがどのような問題を抱えているか、第12回の設問の意図から観ていきます。

 

①Aは予算管理に強い苦手意識を抱えており、これがプロジェクトの成功に対する不安を引き起こしています。過去の予算未達の経験がトラウマとなっており、この苦手意識が管理職への昇進に対する抵抗感を生んでいます。

 

Aは管理職になることで責任が増えることに対する不安を感じています。特に予算管理の責任が増えることがプレッシャーとなっており、管理職の役割を担うことに対する心理的な抵抗を示しています。

 

③Aは妻と二人の娘を養うために、収入を増やす必要性を感じており、家族の経済的プレッシャーを抱えています。管理職になることで収入が増える可能性があるため、その点に関してはポジティブに捉えていますが、同時に責任が重くなることに不安を感じています。

 

④Aはプレイヤーとしての仕事を好み、スペシャリストとしての道を追求したいと考えており、キャリアの方向性に対する葛藤を抱えています。しかし、現在の職場環境や家族の経済的な状況を考えると、管理職になることが避けられないと感じています。

 

次に、第13回の設問の意図から、相談者Aの訴えた問題を観ていきます。

 

①Aは予算管理に対する強い苦手意識を抱えており、特にお金に関わる話になるとプレッシャーを感じて仕事が思うように進まなくなると訴えています。

 

管理職になると予算管理の責任が増えるため、そのことに対する不安を強く感じています。過去に予算未達の経験があり、その責任を担うことが非常に荷が重いと感じています。

 

③妻と二人の娘を養うために、自身の給料だけで生活している状況を鑑みると、収入を増やすためには管理職になる必要があると経済的責任で悩んでいます。この経済的なプレッシャーが管理職への昇進の判断に影響を与えています。

 

両方とも①予算管理に関する苦手意識、②将来の管理職の不安、③家族の経済的責任に対する問題の意図は同じですが、第13回では、④キャリアの方向性に対する葛藤の問題は捉えていません。

 

正確に相談者Aの問題を特定するという意図からは、確かにプレイヤーを続けてスペシャリストの道を選択する悩みは訴えていません。

 

事例相談者Bが、相談者Aの管理職を選択しない場合の本質的な悩みであるキャリアの方向性について質問をしたことから、相談者Aが自己開示しスペシャリストの選択について発言をしています。

 

従って、事例相談者Bの見立てたことを「相談者Aの訴え」として捉えることが重要です。

 

1級の事例指導の目的は、事例相談者Bの成長に向けて事例指導者が指導することにあることを考えると、以下のように第12回と第13回の設問の意図を抱合した解答が求められているのではないかと考えます。

 

予算管理に対する強い苦手意識があり、これがプロジェクトの成功や管理職への昇進に対する不安を引き起こしています。家族の経済的責任を感じており、収入増加のために管理職への昇進を考えざるを得ない状況です。また、プレイヤーとしてのスキルや専門性を活かしたいとの希望と、管理職になることでの役割や責任の変化に対する不安や葛藤で悩んでいます。

 

受検者の皆さんはどのように考えられますか。