第13回1級キャリアコンサルティング実技(論述)試験問3についての考えを述べていきます。

 

2023年度後期1級実技(論述)試験、採点官から観た受検者の傾向には、下記の意見が寄せられています。

 

■「相談者を支援するために、必要なネットワーク」について


・前段の設問に連動して検討いただくものになりますが、相談者の取り組みについて具体的に検討することができた受検者は、必要なネットワークについても具体的かつ多面的に検討することができている印象でした。


・一方で、具体性に乏しい一般論的な回答は今回も多いと感じました。例えば「コミュニケーションに関する研修を受講する」「先輩や同僚に相談する」という内容も必要なネットワークかもしれませんが、事例のどこからそれが必要であると考えたのか、相談者が訴える問題との整合性という観点では少し気になりました。

 

この問3の必要なネットワークについては、

「機能別の能力把握法」の

イ キャリアコンサルティング能力

ロ 指導能力

ハ コーディネート能力

のコーディネート能力を評価されます。

 

コーディネート能力については、次の通り説明があります。

 

「指導レベル」を目指すキャリアコンサルタントにおいては、組織への働きかけや関係者との連携等の「コーディネート能力」も重要である。領域間の連携、専門家へのリファーだけでなく、企業内の能力開発制度や教育機関のキャリア教育プログラムの設計、運営、評価等ができることが望ましい。

 

第12回までの設問は選択問題の問3で解答していましたが、第13回からは必須と選択が統合された事例記録に変更され、次の設問になりました。

 

【第12回】選択問題

問3 この事例相談者が相談者を支援するために「必要なネットワークや環境」への働きかけは何か。また、なぜそれが必要であるか根拠を記述せよ。(20 点)

 

【第13回】統一問題

問3 相談者Aを支援するために必要なネットワークは何か。相談者Aの置かれた環境への働きかけについて関係機関や関係者との連携も考慮し、記述せよ。(20点)

 

この2つを比較すると第12回では「この事例相談者が」という主語がありますが、第13回では主語がなくなり、誰のためのネットワークではなく、相談者Aを支援するためという目的語が強調されていますし、関係機関や関係者という言葉が入っていますから、ただ単に会社という環境だけを捉えることではありません。

 

つまり、問1、問2で解答した相談者Aの訴えている問題と取り組みについて連動したネットワークでなくてはならないのです。

 

そして、2級レベルの解答として、

「コミュニケーションに関する研修を受講する」

「先輩や同僚に相談する」

のような一般的な解答を求められていることでもありません。

 

それで、問1で相談者Aが訴えている問題を「予算管理が苦手」というように捉えて解答をしていると、問2でも、それを解消するような取り組みを解答することになります。

 

さらに、問3の設問と連動させて解答を考えると、相談者Aが予算管理を理解するためのネットワークを構築することになります。

 

相談者Aの訴えている問題については、事例相談者Bが捉えた相談者Aの問題であるからにして、事例相談者Bが連携できるネットワークである必要があります。

 

今回から、主語がなくなっているので、相談者Aのネットワークと環境への働きかけを解答する受検者の方がいらっしゃるかもしれませんが、この1級の検定試験は事例指導者(受検者)が事例相談者(キャリアコンサルタント)の成長を担って、相談者Aのキャリア形成支援を行ったキャリアコンサルタント(事例相談者)の指導を行うものですから、誰のネットワークかということは明らかです。

 

ということは、設問の内容が変更になっているからと言って、第12回までの「必要なネットワークと環境」への働きかけと異なった解答をすることではないかと考えます。