さて、実技試験で測られる事例指導とはどのようなものでしょう。
キャリアコンサルティング協議会のFAXには、
問:「1級試験の合格に求められるレベルを教えてください。」
答:「個人の相談支援を2級より高い水準で的確に行うキャリアコンサルティング能力を有し、組織への働きかけや関係者との連携等のコーディネート能力が求められ、キャリアコンサルタントからの相談に対して不安を解消し、気づき」、成長を促すような指導・アドバイスができるレベルです。」
この答えには、キャリアコンサルティング能力が2級より高い水準で求められているので、キャリアコンサルタント(事例相談者)の行ったキャリアコンサルティングとは違うキャリアコンサルティングを行うことが必要なのです。
問:「事例指導はどのようなことですか。」
答:「事例指導とは、相談者への良い支援と、事例相談者のキャリアコンサルタントとしての成長を目的に、事例相談者の担当する事例を通して指導を行うものです。具体的には、相談者に対する面談過程、事例の見立てや対応の方針、組織への働きかけ、リファーやコンサルテーション、事例相談者に不足する態度、役割意識、知識やスキル等について、気づきを促し情報提供や助言を行うことです。」
この答えは、1級実技(面接)試験実施概要と同じ内容です。
表層的で具体的な展開や内容は把握できませんが、重要なことは
「相談者に対する面談過程、事例の見立てや対応の方針、組織への働きかけ、リファーやコンサルテーション、事例相談者に不足する態度、役割意識、知識やスキル等について、気づきを促し情報提供や助言を行うこと」
の部分です。
【対応指導】
相談者に対しては、キャリアコンサルタントにキャリアコンサルティングの「面談過程」、「見立て」、「対応方針」、「組織への働きかけ」、「リファー」、「コンサルテーション」についての気づきの促し情報提供や助言を必要とします。
【育成指導】
事例相談者に対しては、そのキャリアコンサルティングの不足している「態度」、「役割意識」、「知識やスキル」等についての気づきを促し情報提供や助言を行うことが求められます。
では、「事例指導」と「スーパービジョン」との関係は、
「指導レベル」キャリアコンサルタントが、熟練レベル等のキャリアコンサルタント(言わば「一人前」のキャリアコンサルタント)に行う指導・アドバイスのあり方については、今回の研究会で議論され、一定の結論を得たところであるが、その一方で、キャリアコンサルティングにおける「スーパービジョン」については、今回は議論が完結していない。
そのことについては、「キャリアコンサルティング研究会」報告書「キャリアコンサルタントの資質確保体制の整備に係る調査研究」において「指導レベル」キャリアコンサルタントに求められる機能として「スーパービジョン」を揚げ、
「キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングの実践を重ねる中で抱える、思ったようにいかない、どのように対応したらよいかわからない等の不安を解消したり、自分が正しいと思っているやり方が実際には独善的で誤っていることに気づかせる等、第三者の視点からキャリアコンサルタントの歪みを正す機会としての機能」
と定義している。
今回の調査研究においては、「指導レベル」キャリアコンサルタントに求める指導能力の重点については、
「現場のキャリアコンサルタントからの相談に対して、不安を解消し、気づき、成長を促すような的確な指導・アドバイスができる能力」
と整理されている。
まとめてみると、
①不安の解消
②気づきと成長を促す
③的確な指導・アドバイス
が求められており
他方
①一方的な受け身の傾聴
②一方的な依存に指示・命令
は相応しくない
すなわち「関係構築重視型」「問題解決重視型」では事例相談者と事例指導者の間には信頼関係は構築できないと考えます。
この両方のうち、一つのやり方だけでは信頼関係は構築できないし、事例指導はできないので、2つを組み合わせた関りを持たなければならないということです。
これでも、事例指導とは何かすっきりしません。
キャリアコンサルティング協議会の試験範囲には
学科試験
事例指導=スーパービジョンと記載してありますが、前述のように「キャリアコンサルティング」におけるスーパービジョンは定義されていないはずです。
実技試験
実技試験の事例指導の項目には、スーパービジョンについては触れていませんので、学科試験で示されているスーパービジョンとは違うようです。
事例指導の定義を明確化してほしいと思いますし、試験範囲の解説も整理が必要だと考えます。
次回に続く。