今日は、「評価区分と口頭試問」というテーマで話します。

 

初めに1級キャリコン検定の評価区分を見直してみます。

 

【1 級実技(面接)試験の評価区分とその内容】 


「基本的態度:自分の強みや弱み、自分の感情と相手の自分への感情を受容し、指導中の自 分の行動の適切性を評価できること。キャリアコンサルタントとしてのあるべき姿を理解し、それに近づく努力を実践するとともに、周囲への啓発を行っていること。自分の改善点に気づき、向上のために自らのゴールを定め、学ぶとともに実行していること。」

 

 「関係構築力:相談者との人間関係(職業専門家に向けた育成効果の高い関係)を構築し、事例相談者に気づきや成長を促す関係を作ることができること。キャリアコンサルティ ングの進め方を体系的に理解したうえで、キャリアコンサルタントとして、事例相談者 に対する受容的・共感的な態度や誠実な態度を維持しつつ、事例相談者が面接の課題に気

づき成長できるよう、様々な理論とスキルを

用いることができること。」

 

「 問題把握力:事例相談者が担当している相談者や事例そのものの状況を客観的に把握し、事例の本質を掴むことができること。事例相談者の能力やスキルを客観的に把握し、育成的な視点で事例相談者が取り組むべき問題を特定することができること。事例相談者の問題を明確化し、状況や環境に適した問題を共有化することができること。」

 

 「具体的展開力:事例相談者の問題を解決するために、適切な目標を設定し、効果的な指導 を企画することができること。事例相談者に対して、適切でわかりやすく、理論的・具体的な説明を行うことができること。指導プロセスにおける個々のセッションの中で、 事例指導者が企画した指導方法を効果的に遂行するために、専門的な介入を行うことができること。 」

 

まず、「基本的態度」です。

 

基本的態度では、面接の評価と思っている人がいると思いますが、それだけではありません。

 

面接中の態度と口頭試問での自己評価で採点されるのです。

 

面接で「受容・共感・一致」が上手くできたと思っていても、採点が低い時があります。

 

それは、面接と口頭試問の整合性が取れていないからです。

 

面接ではできたと思っても、口頭試問では、面接で行ったことではなく、あらかじめ用意した答えを応えることで、自己評価ができていないと判断されます。

 

では、基本的態度の評価区分の内容と口頭試問の内容と照らし合わせてみます。

 

「基本的態度では、自分の強みや弱み、自分の感情と相手の自分への感情を受容し、指導中の自 分の行動の適切性を評価できること。」

 

これには、

①今回のロールプレイを振り返って、ご自分の良かった点、改善したい点は何ですか。

が当てはまります。

 

自分の良かった点では、面接で発揮できた自分自身の強みは何であるかを答えることです。

 

たとえば、「自分の感情と相手の自分への感情を受容し、」と言っていますから、自分の感情とは事例指導者の感情のことですから自己一致していること、事例相談者の事例指導者への感情のことですから、感情への応答について上手くできたことにより、信頼関係が、築けたたことを言ってもいいでしょう。

 

また、改善したい点では、面接で露呈した自分の弱みに気づいてどのようにしていくのかを答えることです。

 

たとえば、「自分の抱いた感情を抑えたことにより、自己開示ができずにモヤモヤした気持ちを抱え面接を進めたので、これからは自分の感情も大事にしながら、面接に適切に反映できるようにしたいと考えています。」と答えることもできるでしょう。

 

自分への相手の感情を受容できなかったら、もちろん信頼関係は築けませんので、それを改善点に挙げるのはマイナスです。

 

「キャリアコンサルタントとしてのあるべき姿を理解し、それに近づく努力を実践するとともに、周囲への啓発を行っていること。」

 

これには、

②今回のロールプレイを振り返って、ご自身に何か気づきはありましたか。

が当てはまります。

 

すなわち、

「キャリアコンサルタントとしてのあるべき姿を理解すること」

「それに近づく努力を実践していること」

「周囲への啓発を行っていること」

を答えればいいのです。

 

キャリアコンサルタントのあるべき姿は、行動原則に制定されています。

 

【キャリア・コンサルタントの行動原則】

 1.キャリア・コンサルティングの本質を理解し、自己研鑽を行い、活動する 

 

2.相談者の「自分らしさ」の追求と、問題解決の支援を行う

 

3.個人では対処できない環境の問題を発見し、改善する 

 

4.自己の経験や自説にこだわることなく、相談者の視点に立って、活動する 

 

5.客観的な評価を行い、適切な指導を受けることによって、活動の質を高める

 

この5つの中から、今回の面接に適合するものを選び答えることです。

 

それから、それに近づく努力を実践していること、周囲への啓発を行っていること、については「キャリアコンサルタントの活動」がヒントになります。

 

【キャリア・コンサルタントの活動】

 【キャリア・コンサルタントの行動原則】に基づき、キャリア・コンサルタントが行う主な活動 は、以下のとおりである。 

 

なお、「4.スーパービジョン」は、キャリア・コンサルタントが十分な経験を積んだうえで、さ らに一定の能力を習得した「指導レベルのキャリア・コンサルタント(スーパーバイザー)」の活動 として、

 

また、「5.自己研鑽」は、すべてのキャリア・コンサルタントが自分自身の能力の維持・ 向上のための活動として整理している。

 

 1.カウンセリング活動 

 2.教育・普及活動

 3.環境への働きかけ

 4.スーパービジョン

 5.自己研鑽

 

上記の5つの活動の中から、自分が行っている活動を挙げて答えることができます。

 

最後の、

「自分の 改善点に気づき、向上のために自らのゴールを定め、学ぶとともに実行していること。」

については、次の質問が当てはまります。

 

③自分に足りなかった指導におけるスキルについて、今後どのように研鑽しますか。(あなたは、これからキャリアコンサルタントとしてどのように研鑽をしていきますか。)

 

まず、①の質問で挙げた改善点について気づいていなければなりません。

 

それで、行動原則と活動の中から、足りなかったスキルと今後の研鑽方針を繋げて答えることができます。

 

次は「関係構築力」について述べてみます。

 

「関係構築力:相談者との人間関係(職業専門家に向けた育成効果の高い関係)を構築し、事例相談者に気づきや成長を促す関係を作ることができること。 キャリアコンサルティ ングの進め方を体系的に理解したうえで、キャリアコンサルタントとして、事例相談者 に対する受容的・共感的な態度や誠実な態度を維持しつつ、事例相談者が面接の課題に気づき成長できるよう、様々な理論とスキルを用いることができること。 」

 

関係構築力は、オープニングからクロージングまで維持することが大切です。

 

自己紹介に始まり、事例指導の終了を宣言するまで、関係構築は継続しています。

 

したがって、面接の途中で中断させられるのではなく、面接途中でも時間がきたら事例指導の終了を告げたほうがいいでしょう。

 

時計のタイムアップのベルが鳴る前に、しっかりと時間管理することが必要です。

 

それで、口頭試問との関係ですが、

 

前回取り上げた口頭試問の①に関連付けることもできます。

 

①今回のロールプレイを振り返って、ご自分の良かった点、改善したい点は何ですか。

 

相談者との人間関係(職業専門家に向けた育成効果の高い関係)を構築し、事例相談者に気づきや成長を促す関係を作ることができること。

 

①の良かった点は、良かった点を根拠を示して具体化する必要があります。

 

たとえば、関係構築力に繋がる答えかたとして、注意点は事例相談者が職業専門家ということです。

 

すなわち、2級の相談者とキャリアコンサルタントの関係ではなく、1級は、キャリアコンサルタントとキャリアコンサルタントの関係なのです。

 

もちろん、カウンセリング関係は変わりありません。

 

育成効果の高い関係が、1級の関係構築力なのです。

 

それには、

「1 級キャリアコンサルティング技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」

の「相談場面の設定」にある下記の①②③の3つが使えます。

 

①相談を行うにふさわしい物理的な環境、事例相談者が安心して積極的に事例相談ができるような環境を設定することができること 。 

 

② 相談を行うに当たり、受容的な態度(挨拶、笑顔、アイコンタクト等)で接するこ とにより、心理的な親和関係を事例相談者との間で確立することができること。

 

 ③ 主体的なキャリア形成の必要性や、キャリアコンサルティングでの支援の範囲、最 終的な意思決定は相談者自身が行うことであること等、キャリアコンサルティングの 目的や前提を明確にすることの重要性について、事例相談者の理解を促すことができ ること。

 

 ④ 事例相談者の相談内容、抱える問題、置かれた状況を傾聴や積極的関わり技法等に より把握・整理し、当該事例相談の到達目標、事例相談を行う範囲、事例相談の緊要 度等について、事例相談者との間に具体的な合意を得ることができること。

 

例えば、

「事例相談者が安心して積極的に事例相談ができるように環境を整備するために、自己紹介でキャリアコンサルティングの経歴を話し、事例相談者に受容的な態度で接することで親和関係を確立して、キャリアコンサルティングの目的や前提を説明して明確にできました。そのことについて、事例相談者の理解を得ることができたので、信頼関係が構築され、自己開示が促進されたことにより、ご自身で意思決定される効果を得ることができました。」

と答えることもできます。

 

また、他にも似たような質問で、

 

④今回のロールプレイで上手くできたところと上手くいかなかったところをそれぞれ挙げてください。

 

⑤今回のロールプレイで(やろうと思って)できたこと、(やろうと思ったけど)できなかったことはなんですか。

 

があります。

 

この2つの質問は、①とは違ったことを質問されています。

 

①は良かった点ということで面接の評価が入っていますが、④と⑤ではアプローチの仕方、すなわち具体的展開力のことを質問されているのではないかと考えます。

 

次の、

「キャリアコンサルティ ングの進め方を体系的に理解したうえで、キャリアコンサルタントとして、事例相談者 に対する受容的・共感的な態度や誠実な態度を維持しつつ、事例相談者が面接の課題に気づき成長できるよう、様々な理論とスキルを用いることができること。 」

には関係構築力として、次のことが求められています。

 

1)「キャリアコンサルティングの進め方を体系的に理解している」

2)「事例相談者が面接の課題に気づき成長できるよう、様々な理論とスキルを用いることができる」

 

ちょっと違和感がある関係構築力ですが、1)の「体系的に」とはシステマティックアプローチのことですから、「関係構築」「問題把握」「目標設定」「方策の実行」のどこをやっているのか、どこまで進んだのかを理解しながら進められているかを問われています。

 

これも①の質問で使えそうです。

 

①今回のロールプレイを振り返って、ご自分の良かった点、改善したい点は何ですか。

 

例えば、

「システマティックアプローチを使って面接を進めることができ、関係構築、問題把握まで進めることができましたので、事例相談者の課題が明確にできたことが良かったことです。改善点は、関係構築のために事例検討に時間をかけすぎて、事例指導に十分な時間を取れなかったことです。これからは、積極的なかかわり方で事例相談者の気づきを促進して、課題が解決できるとこまで進めるよう技法のスキルアップを図りたいと考えています。」

と答えることもできます。

 

2)の「様々な理論とスキルを用いることができる」では、

⑥事例相談者に足りない知識とスキルは何ですか。

に使えそうです。

 

例えば、

「相談者が2者択一の問題で悩んでいることに対して、事例相談者は傾聴技法を使って気持ちを受け止めようとしていましたが、意思決定の問題であることは把握できていたので、ジェラットの意思決定理論を使ってアプローチしたら、相談者の自主的な意思決定を支援できたのではないかと考えます。」

などの答え方もできます。

 

関係構築の定義からは、ただ傾聴だけでは育成効果の高い関係は築けないことが理解できます。

 

1級キャリアコンサルティング技能士の関係構築には、基本的な受容的・共感的な態度や誠実な態度を維持しつつ、体系的な進め方や理論とスキルを活用することが求められています。

 

それだけ、キャリアコンサルタントの専門家同士での高い信頼関係が必要とされていますし、成長につながるような人間関係が重要なのです。

 

次は、「問題把握力」について述べてみます。

 

「 問題把握力:事例相談者が担当している相談者や事例そのものの状況を客観的に把握し、事例の本質を掴むことができること。事例相談者の能力やスキルを客観的に把握し、育成的な視点で事例相談者が取り組むべき問題を特定することができること。事例相談者の問題を明確化し、状況や環境に適した問題を共有化することができること。」

 

「問題把握力」は、相談者と事例相談者の2つの問題を把握していなければなりません。

 

なぜなら、

1級実技(面接)試験実施概要の3.には、事例指導について定義してあります。

 

「事例指導とは、相談者へのよりよい支援と、事例相談者のキャリアコンサルタントとしての成長を目的に、事例相談者の担当する事例を通して指導を行うものです。具体的には、相談者に対する面接過程、事例の見立てや対応の方針、組織への働きかけ、リファーやコンサルテーション、事例相談者に不足する態度、役割意識、知識やスキル等について、気づきを促し情報提供や助言を行うことです。」

 

事例指導の目的は、

「相談者へのよりよい支援」

「事例相談者のキャリアコンサルタントとしての成長」

の2つです。

 

そして、事例指導とは、具体的には、次の2つのことについて、気づきを促し情報提供や助言を行うことです。

 

「相談者に対する面接課程、事例の見立てや対応の方針、組織への働きかけ、リファーやコンサルテーション」

「事例相談者に不足する態度、役割意識、知識やスキル等」

 

これからも、事例指導のトリプルでダブル(二重)関係が理解できます。

 

登場人物は、相談者、事例相談者、事例指導者の3人です。

 

そして、2人で2組の組み合わせは、

A:相談者とキャリアコンサルタント(事例相談者)

B:事例相談者(キャリアコンサルタント)と事例指導者(キャリアコンサルタント)

です。

 

つまり、相談者が2人いるわけですから、課題も2つあるわけです。

 

では、前半の

「事例相談者が担当している相談者や事例そのものの状況を客観的に把握し、事例の本質を掴むことができること。」

に関係する口頭試問を挙げてみます。

 

⑦この事例相談者の事例の進め方の問題は何でしょうか。

 

例えば、この質問には、

「事例相談者は、相談者の問題や事例そのものを主観的に捉えて、自分の価値観を押し付けるような助言や提案をしたことにより、事例の本質を掴むことができなかったことが問題です。」

と答えることが出来ます。

 

⑧事例相談者が訴えた問題は何ですか。事例指導者の視点で捉えた問題は何ですか。

 

また、この質問には、

「事例相談者は自分の経験から助言や提案をしたことにより、相談者と問題の共有ができなくなり、次回の面接をキャンセルされた原因になっているのではないかと悩んでいることが、事例相談者の問題です。事例指導者視点では、事例相談者は相談者や事例そのものを客観的に捉えるのではなく、自分の経験から主観的に助言や提案をしており、相談者の本質的な問題を把握できなかったことが問題です。」

と答えてみました。

 

次の、

「事例相談者の能力やスキルを客観的に把握し、育成的な視点で事例相談者が取り組むべき問題を特定することができること。」

には、次の質問が挙げられます。

 

⑨この事例相談者の今後の育成目標は何ですか。

 

「この事例相談者は、自分の経験による価値観で支援をする傾向があり、相談者の問題を把握する能力や傾聴スキルが十分でないことが推測できるので、事例相談者が成長するためには、問題の焦点化、明確化、直面化ができるようになるため傾聴技法を身につけ、相談者の本質的な問題を把握することが必要である。 」

と答えることができます。

 

最後の、

「事例相談者の問題を明確化し、状況や環境に適した問題を共有化することができること。 」

については、次の質問が挙げられます。

 

⑩事例相談者の問題を事例相談者と共有するためにどのような働きかけをしましたか。

 

の質問には、次の通り、

「事例相談者の問題を明確化するために、事例相談者の状況や環境について自己開示できるよう傾聴を心がけました。 そ れから、事例相談者が主体的に問題に取り組めるよう積極技法である質問をすることにより問題を抽出して確認することができ、特定することで共有することが出来ました。 」

と答えることが出来ます。

 

このように、1級キャリコン検定に関する文章を活用することで、まとまった答えが作れるようになるし、練習することで上手に答えることもできるようになります。

 

次は「具体的展開力」です。

 

 「具体的展開力:事例相談者の問題を解決するために、適切な目標を設定し、効果的な指導 を企画することができること。事例相談者に対して、適切でわかりやすく、理論的・具体的な説明を行うことができること。指導プロセスにおける個々のセッションの中で、 事例指導者が企画した指導方法を効果的に遂行するために、専門的な介入を行うことができること。 」

 

「具体的展開力」

に関係する口頭試問に挙げられるのは、

 

⑪解決のための目標設定をどこに置きましたか。

が当てはまります。

 

事例相談者の問題の解決ですから、事例を通して概念化(一般化)された問題を解決するための目標設定です。


たとえば、「事例相談者の問題を解決するための目標としては、相談者の意思決定の支援に関するキャリア理論を習得することを提案しました。」

と答えることが出来ます。

 

⑫目標設定についてどのように共有しましたか。

 

については、

その目標設定を達成するために、効果的な指導としてジェラットの意思決定理論を理解して活用できるように適切でわかりやすく説明して、共有しました。」

の答えを考えてみました

 

⑬どのような指導方策を立てましたか。実施できなかった指導方策は何ですか。

 

「セッションの中で意思決定のアプローチができるようにするための効果的な指導方法として、専門的なキャリア理論を使って介入することを試みました。しかし、認知のゆがみを支援する方法としてエリスの論理療法の活用を考えていましたが、問題を提起するところまでは進めませんでした。」

という答えを考えてみました。

 

上記の答えのように、評価区分の文言を使って口頭試問の答え方のひな型を考えてみました。

 

このひな形をセッションに合わせて個別的な問題を盛り込んだ答え方を工夫してみてください。

 

色々な変化が楽しめると思います。