今回は、実技(面接)試験のロールプレイについて考えてみたいと思います。

 

ロールプレイとは、役割演技と言われ、現実に起こる場面を想定して、複数の人がそれぞれ役を演じ、疑似体験を通じて、ある事柄が実際に起こった時に対応できるようにする学習方法の一つです。

 

ロール・プレイング(role playing)を、日本ではロープレと呼ぶこともあります。

 

ネットで検索すると、上記のような説明がされています。

 

そして、1級実技(面接)試験実施概要には、

1 実施方法 ロールプレイ…30分

       口頭試問・・・10分

3 受験者は、民間の相談機関等において、キャリアコンサルティングの実践を行いながら、キャリアコンサルタントに対して事例指導の役割を担っていると仮定してロールプレイを行います。

4 事例相談者(キャリアコンサルタントの役割)は試験係員が担当します。

と記載されています。

 

実施概要からわかるとおり、

ロールプレイ(役割演技)

事例指導の役割

キャリアコンサルタントの役割

この実技指導の検定試験は、仮想現実の下に行われる演技の検定なのです。

 

私は、第1回2級キャリアコンサルティング技能士に一発で合格してから、2級を目指す方の指導をしてきたのですが、その時から受験者にはキャリアコンサルタント役を演じなさいと言い続けています。

 

それは、1級キャリアコンサルティング技能検定試験でも、同じことがいえると思います。

 

事例指導者(受験者)は、事例指導者役を完璧に演じることが合格の入口なのです。

 

「実務ではスキルが低いのに合格している。」

「私の方が、仕事の上でははるかにできるのに」

のように、実務の実力と検定の実力は別なものなのです。

 

いかにして、事例指導者役のオーディションで監督やプロデューサーから事例指導者の役をもらえるかです。

 

すなわち、4つの評価区分である

①基本的態度

②関係構築力

③問題把握力

④具体的展開力

で60点以上の演技をすれば、事例指導者役をもらえるのです。

 

実務と検定とは別なものと言いましたが、私の経験の中では、キャリアコンサルティングのロールプレイで、事例相談者役の人が感極まって感情が表出し、泣いたり、嬉しがったり、怒ったりする人を見たことはありません。

 

でも、実際の相談場面では、泣く人もあれば、笑う人、怒る人、拘り続ける人など、相談者の態度や表情は刻々と変わります。

 

キャリアコンサルタントは、実務を行う上では緊張感を持って相談者を観察し、助言をしなければなりません。

 

話は変わりますが、産業カウンセラー養成講座で学んだのは、ピア・カウンセリングです。

 

ピア・カウンセリングとは、同じような悩みや立場の人が集まって、同じ仲間(ピア)「対等な立場の人」としておこなうカウンセリングのことです。

 

そこでは、同じテーマ(家族のこと、嬉しかったこと、腹がたったことなど)で、クライエント役とカウンセラー役をお互いに交替しながらカウンセリングの基本を学んでいきます。

 

クライエント役は、自分の実際の体験から、出来事や気持ち(喜怒哀楽)を自己開示していきますので、カウンセラー役も真剣に受け止めなければなりません。

 

ピア(仲間)という意味では、キャリアコンサルティングのロールプレイもキャリアコンサルタントの仲間同士で行うものですから、一緒のように捉えることもできます。

 

しかし、ピア・カウンセリングでは、クライエント役は自分の経験したことを思い出しながら、自己洞察することで直面化が起こり、気づきが生まれます。

 

ですから、クライエントの感情は生きているし、生のものです。

 

それでは、キャリアコンサルティングのロールプレイを比較してみます。

 

試験実施概要には、1級実技(面接)ロールプレイ内容が併記されており、

「事例相談者の相談歴」

「相談者のプロフィール」

「相談者が相談したこと」

「キャリアコンサルタントが相談したいこと」

のように相談者と事例相談者のイメージと役割、相談内容があらかじめ決めてあり、仮想現実の中の検定試験なのです。

 

キャリアコンサルティングの枠が決められた中で行われるので、事例相談者役は、枠をはみ出さない程度で役作りをして、演技を行います。

 

演技ですから、はみ出せる部分もあり、事例相談者は、当然として事例指導者が展開に困っていれば助け舟を出したりしますし、難しいイメージの事例相談者を演じたりします。

 

したがって、キャリアコンサルティングのロールプレイは、事例相談者役と事例指導者役が作り上げるものと考えます。

 

そして、事例指導者役も、4つの評価区分を意識して面談を進めることが求められていると思います。

 

事例指導者は、関係構築を重視して傾聴に徹するだけでは問題解決に繋がりません。

 

事例相談者役の人の中には、ただ聴くだけの事例指導者には失望している場合もあります。

 

事例指導者が誘導することは、マイナスのイメージを抱いている人がいると思いますが、事例相談者が同じことを繰り返し話し、堂々巡りになるときには、事例指導者は面談の方向性を演出する必要もあるのではないかと思います。

 

事例相談者役は役作りをしてロールプレイで演じるのですから、事例指導者も勇気をもって事例指導者役を演じてください。

 

見せるキャリアコンサルティングを意識することが必要だと考えます。

 

ただ、事例指導者役を演じるうえで注意しなければならないことがあります。

 

それは、事例相談者役の役とは別に、事例相談者のパーソナリティが出ることがあります。

 

そのようなときには、事例相談者は事例相談者役を演じないようになり、抵抗を示すことがあります。

 

リレーションの再構築が必要となります。

 

4つの評価区分が可視化できるキャリアコンサルティングを工夫してください。

 

以上は、私の考え方であり、無数にある考えの一つとしてお読みください。