1級キャリアコンサルティング技能検定実技(面接)試験では、

受検者(事例指導者)が事例相談者から事例記録を預かり、それに基づいて面談を進めます。

 

事例指導を練習する上で、受検者(事例指導者)が事例相談者に相談したいことを聴きながら事実を確認して、相談者の見方、感じ方や考え方を整理する関りを持つことが必要です。

 

この整理する関りにカウンセリング技法が必要となります。

 

カウンセリング技法には、非指示的カウンセリング、指示的カウンセリング、その中間の折衷的カウンセリングがあります。

 

キャリアコンサルティングは、この中の折衷的カウンセリングを活用して行われるカウンセリングなのです。

 

相談者個人が自己理解を深める段階では、キャリアコンサルタントが的確な質問をして、相談者に自己探索と洞察を通して自己認識を深めるのです。

 

相談者が自分の問題を理解し「自分がどうしたいのか」とか、「自分がどうなりたいのか」など自己探索と洞察を通して、自己の責任で解決すべき問題を明確にする「気づき」を深めさせるのがキャリアコンサルタントの関りです。

 

キャリアコンサルタントは、相談者の問題を的確に「見立て」ていても、決して評価や批判をせず、相談者のありのままを、心からその話に耳を傾けることによって、相談者の気持ちや感情に共感しながら、相談者が話す内容をまとめて整理するサポートを行うのが役割です。

 

それで、キャリアコンサルタントは、相談者が自分について話す中で自分に気づき自己理解を深めることで、相談者の希望や期待にあった的確な助言や情報提供、提案などを行うことが必要なのです。

 

つまりキャリアコンサルティングにおいては、傾聴が基本であり相談者の話をじっくり共感的に聴くことにより、自己への気づきを与えることと適正な対応をできることが重要であり、この2つの関りを持つことが、相談者のキャリア選択における意思決定を促がすことが可能となるのです。

 

ここで、「事実」と「真実」について考えてみます。

 

「事実」とは「実際に起こったこと」という意味がある言葉であり、実際に起こった事柄を指す言葉です。

 

一方「真実」は「ありのまま」という意味がありますが、内容は相談者個人の解釈によって異なります。

 

つまり「事実」は誰が見ても同じなので「話す」ことそのものですが、「真実」は人の心の持ちようによって異なるため「明かす」ものという点が、「真実」と「事実」の大きな違いです。

 

この「事実」と「真実」の違いが、相談者の「見方」「感じ方」「考え方」なのです。

 

これが事例指導における相談者の「真実」を知るために、キャリアコンサルタントが事実を確認して、相談者の「見方・感じ方・考え方」を明確にしていく事例指導の進め方なのです。

 

「事実」を確認するのが事例指導の進め方だと認識している方は、それを「真実」だと誤解しているのかもしれません。

 

事実を確認しながら相談者の問題の根拠や意見を整理していくことで、事実確認ができ真実も明らかになるのです。

 

「事実」と「現象」のことを「事象」と言い、人間が認識できる世の中の出来事や状態のことを意味します。

 

事例指導の相談者とキャリアコンサルタントの関係においては、相談者がAの希望を叶えたいと訴えているのをキャリアコンサルタントが把握しているのは事実です。

 

また、それを叶えることができていないで悩んでいる状態もキャリアコンサルタントが把握しているのも事実です。

 

この2つのことを合わせたのがキャリアコンサルタントが理解している「事象」なのです。

 

でも相談者の「真実」を理解しているかどうかはわかりません。

 

また事例相談者と事例指導者との関係においては、キャリアコンサルタントが相談者の希望であるAを叶えるのは難しいので、Bを支援したのですということを、受検者(事例指導者)が理解することも事実としての認識です。

 

そして事例指導者は事例相談者の真実を理解するために、相談者とキャリアコンサルタントの間で起こった事象を確認しながら、事例相談者の真実を明確にしていくのです。

 

以上のことから、キャリアコンサルティングにおける相談者の真実と事例指導における事例相談者の真実との違いから、事例相談者にどちらの真実を優先すべきかということに気づかせる関りが事例指導には求められるのです。

 

そのためには、事例相談者に起こっている事実を確認しながら、その見方、感じ方や考え方を明確にし、働きかけて共有していくことで、相談者の真実との違いを明確にしていくことです。