この記事は22年4月に投稿したものです。

 

1級キャリアコンサルティング技能士の勉強に役に立つ理論がありました。

 

それがプロセス・コンサルテーションです、

 

相談者とキャリアコンサルタントの信頼関係が良好でなくなると、そのような問題状況における自身の援助方法について、誰か信頼できる人に相談したい気持ちになることがあります。

 

そのような相談に応じる場合、どうしたらいいかと悩んでいる相談者(事例相談者)が、自分自身で考えて、その人らしい解決をするまでの思考過程に、意味のある支援を間接的にすることがプロセス・コンサルテーションの基本的な態度です。

 

つまり、相談内容への特定の指示や命令を勧告するのではなく、本人が答えを見つける過程で、効果的に試行錯誤するように手を貸して、問題解決のために本人が正しいと思う選択や意思決定をするまでの思考経路を見出すような助言を心がけることです。

 

このような相談や助言をするには、キャリアコンサルタント(事例指導者)が、相談者(事例相談者)の心理や感情に敏感であることと、相談者ができるだけ自由に何でも語れるような雰囲気づくりをして、話を傾聴するような姿勢が大切です。

 

ときには、相談者が自身の問題をよく把握できていないこともあるでしょう。

 

そのようなときでも、じっくりと相手の話に耳を傾け、穏やかに必要最小限度の問いかけをするうちに、問題の全体像が浮かび上がってきて、解決に向け取り組む意欲を本人からうまく引き出すことができます。

 

このようなプロセス・コンサルテーションは、シャインの理論の個人、集団、組織及び地域社会を援助するプロセスに関する組織開発手法の哲学および態度です。

 

「人にできるのは、人間システムが自らを助けようとするのを支援することだけ」という、シャインの支援学の考えがあります。

 

「このようにやれ」と指示する指導では自分の代わりに他人に考えてもらう依存的なキャリアコンサルタントを育ててしまうことになります。

 

シャインは、そのようなやり方ではなく、事例相談者を自分で考えることができるキャリアコンサルタントを育てるプロセスに事例指導者が随伴するやり方を重視しています。

 

まさに、1級キャリアコンサルティング技能士に求められる事例指導者像ではないでしょうか。

 

内容に直接介入するキャリアコンサルタントを「内容の専門家」、プロセスに揺さぶりをかけるキャリアコンサルタントを「プロセス促進者」と呼ぶことで、両者を区別しています。

 

内容に介入するキャリアコンサルティングを否定しているわけではないのですが、内容の専門家であるためにはその領域について完璧に近い水準で知っておくことが必要です。

 

相手(事例相談者)が何を望んでいるかを知らないまま、内容面の指示を出しても、本当の援助にはならないことになります。

 

事例指導が上手くいかなかったときには、「正しい助言や提案をしたのに、事例相談者が納得できなかった」と逃げ場をつくるかもしれません。

 

以上の説明は、相談者とキャリアコンサルタントの関係を、事例相談者と事例指導者の立場に置き換えたものです。

 

いわゆるパラレルプロセスが、事例指導者と事例相談者との関係にも同じように行われることを言っていることと重なってきます。

 

プロセス・コンサルテーションは、

事例相談者自身が学び方を学ぶように支援すること。

そして、そのような関係を築いていくこと。

事例指導者は、機敏さと柔軟さを兼ね備えていなくてはならないこと。

 

なぜならば、どのような支援が必要になるかは、前もってわからないからであるし、事例相談者の感情は、事例指導者のかかわりによって新しい感情が湧き上がってくるからである。

 

シャインは、人の援助をする人には、3つのモードがあることを示しています。

 

①専門家モデル

事例相談者が自分で実施できない方法や得られない情報を事例指導者から、キャリアコンサルティング契約関係で手に入れるという支援。

②医師と患者モデル

事例相談者の現状を点検してもらい、見立てて処方箋を出してもらうという支援。

③プロセス・コンサルテーション・モデル

事例相談者が現状で起こっているプロセスに自ら気づき、どのように変えていくかを自ら計画して実行していく、その過程の支援。

 

以上は、クライエントを事例相談者に、援助者を事例指導者と読み替えて解説しています。

 

たとえば、介護と仕事の両立で悩んでいる定年前の相談者が、母の介護のことで定年後の働き方を考えられないといって、面談が進まず行き詰っている事例相談者に介護の話から、仕事の話に切り替えさせるために、介護の話だけを聴いても両立の問題は解決できませんよということを直面化しても、事例相談者は相談者が介護の話に固執しているので、キャリアの話に移行することが出来なかったことが悩みになっているわけですから、効果的な助言にはならないのです。

 

介護の話を聴くことで、介護の問題が解決できないことを、どのようなプロセスで理解させるかが大切なのです。

 

キャリアコンサルタントの倫理綱領には、

 

(任務の範囲) 第8条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、自己の専門性の範 囲を自覚し、専門性の範囲を超える業務の依頼を引き受けてはならない。 2 キャリアコンサルタントは、明らかに自己の能力を超える業務の依頼を引き受けてはならない。 3 キャリアコンサルタントは、必要に応じて他の分野・領域の専門家の協力を求めるなど、相談 者の利益のために、最大の努力をしなければならない。

 

とあり、自分の専門を超える業務の依頼を引き受けてはならないと規定されています。

 

キャリアコンサルタントの任務の範囲の規定から、この相談者の介護の問題にどのように対応していくべきかを事例相談者に考えさせることです。

 

またキャリアコンサルタントとして、介護の問題をどこまでの範囲で取り扱うことが必要なのかを考えてもらうことです。

 

このようなプロセスで介護の支援でできることを理解させながら、介護の問題から仕事と介護の両立の問題に切り替えさせる関りが必要とされるのです。

 

事例指導者が端的な言葉を投げかけることで、事例相談者の考えを焦点化したり直面化するのではなく、そのプロセスを話すことで考えさせ、事例相談者自らが自分自身の問題で苦悩している問題に焦点をあて、その問題に対決することが直面化技法なのです。

 

焦点化と直面化が目的で、プロセスが手段ということができるのではないでしょうか。

 

事例相談者の焦点化や直面化には、それに対する事例指導者のプロセスが関わっているのです。

 

従って、プロセスと焦点化や直面化を別々の支援として考えることではないと考えます。

 

プロセスのかかわり方が、結果的に焦点化や直面化ができるのです。

 

プロセス・コンサルテーションは、事例指導には有効な理論ではないでしょうか。