第13回実技(論述)試験問5を読み解いていきます。

 

問1、問2、問3、問4について下記の通り解答しました。

 

問1 相談者Aが訴えた「問題」は何か、記述せよ。(10点)

 

Aは管理職の職務として予算管理の克服と家族関係から収入の面を不安視し、将来の転職も考え、キャリア・サバイバルの問題を抱えている。職務と役割のプランニングが不足しているため、管理職かスペシャリストか、外的キャリアと内的キャリアの選択で意思決定できずにいる。

 

問2 あなたが考える見立てに基づき、相談者Aが「問題」を解決するために取り組むべきことは何か、記述せよ。(20点)

 

管理職としてのマネージメントかスペシャリストとしての専門性か、どちらに関心があるのか明確にする。仕事と家庭の両立の点で何をやっている自分に価値観を感じるのか向き合わせる。キャリアの棚卸しを行い、自分の経験と能力から何が得意なのか整理することで自己概念を点検する。さらに、管理職とスペシャリストのそれぞれについて、それを選択した場合の予測を自己概念に照らし合わせて評価し、選択を決定することに、主体的な意思決定を支援する。

 

問3 相談者Aを支援するために必要なネットワークは何か。

相談者Aの置かれた環境への働きかけについて関係機関や関係者との連携も考慮し、記述せよ。(20点)

 

Bは管理職を目指す社員のための能力開発を人事部担当者と協働して実施する。Aは予算管理能力が不足していることから自信を喪失し、キャリアパスをスペシャリストでのキャリア形成を考えている。Bや課長、管理職を目指す社員の多くが、予算管理の職務能力を経験値で乗り超えており、非能率的だと考えられるので、経営に関する知識やスキルを身につけさせるためのセミナーやトレーニングを行い、外的キャリアに関するキャリア形成を支援するために必要。

 

問4 事例相談者Bの相談者Aへの対応について「問題」だと思うことは何か。事例に基づいて記述せよ。(25点)

 

Bは予算管理について、誰でも通る道だと自身の価値観で共有し、自分の経験から苦手だと自己開示して、家庭の予算に興味を示すことで、Aの負担や不安を受け止めようとしている。しかし、Aのキャリア形成に伴う管理職かスペシャリストかのキャリア選択において、苦悩や悩みを引き起こしている問題を受け入れていない。そのため、Bはキャリアコンサルタントしての傾聴の態度が不足しているので、予約がキャンセルとなり、Aとの信頼関係が築けていない。また、Aの「ずっとプレイヤーとして働いて、スペシャリストでやっていければと思います。」というキャリアプランを吟味していないため、主体的な意思決定の支援ができていない。

 

問5の設問は、次の通りです。。

 

問5 問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ、具体的な指導方法を記述せよ。(25点)

 

これは、第12回までの選択問題の問2とどこが違うのでしょうか。

 

選択問題、問2の設問はこれです。

 

問2 この事例相談者が抱えている問題に対して優先して取り組むべき目標は何か。また、その 目標を達成するために、効果的な支援を行う方法や内容について具体的に記述せよ。(20点)

 

「抱えている問題に対して優先して取り組むべき目標は何か」

『「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ』

 

に変わっています。

 

この2つを比べると、目標を設定することが無くなっていますから、目標設定は必要ないと考えられますが、そのかわりに、問題になっていることから一つ選択することが必要になってきます。

 

つまり、問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思ったものから、重要と考えられる「問題」について特定することが必要になってきます。

 

そして、その「問題」について、具体的な指導方法を記述しなければなりません。

 

具体的な指導方法と問われていますから、このことについては、実践的な指導方法を問われているのです。

 

だから、事例指導者が面接の中では、どのように事例相談者に指導するのかということを記述することが必要なのです。

 

そのためには、問4で記述した問題の中で何を取り上げたらいいのでしょうか。

 

それは、問1で挙げた相談者Aの問題の中で、何を解決することがキャリア形成のために大切なのかを考えることです。

 

それは、以下の相談者Aのキャリア形成のためのキャリア選択の問題です。

 

「外的キャリアと内的キャリアの選択で意思決定できずにいる。」

 

この問題が、相談者Aのキャリア形成において一番優先すべき問題です。

 

そして、この相談者Aの問題について、事例相談者Bの対応の不足していることを問題として挙げることが重要です。

 

それは、以下の事例相談者Bの問題です。

 

①Bは予算管理について、誰でも通る道だと自身の価値観で共有し、自分の経験から苦手だと自己開示して、家庭の予算に興味を示すことで、Aの負担や不安を受け止めようとしている。

 

②しかし、Aのキャリア形成に伴う管理職かスペシャリストかのキャリア選択において、苦悩や悩みを引き起こしている問題を受け入れていない。

 

①のことから、事例相談者Bは自身の価値観や経験から支援する傾向がうかがえます。

 

②については、相談者Aの本質的な問題であるキャリア選択における内面の感情や欲求を理解していないことが問題なのです。

 

次には、この事例相談者Bの問題を修正させるためには、どのような指導をしていくかということです。

 

先ずは、この面談の結果を事例相談者Bに意識させ、次回、面談がキャンセルになったことから相談者Aとの関係性がどのようになったのかを自覚させます。

 

それから、以下の事例相談者Bの所感から、相談者Aのどの問題に焦点をあて、どのようなことの明確化を図ったのか、さらに何を自分の問題として直面化しようとしたのかを明らかにしていきます。

 

【事例相談者Bの所感】

Aは責任感が強く仕事ぶりもきっちりしているが、考え方に余裕がないと感じた。自分自身の経験からも、予算管理についてAは難しく考えすぎの印象があったため、面談ではまずAとの関係構築に努め、予算管理について受け入れやすいように、そしてもう少し気楽に考えられるように、家計管理に喩えて話を持って行った。ただ、翌月の予約はキャンセルとなったことから、自分の対応に何か問題があったのではと気になっている。

 

そして、事例相談者Bのその面談の見立てと方針が相談者Aの相談の目的に合っていたかどうかを検証して、ギャップに気づかせるのです。

 

また、そのギャップが生じた原因は、どこにあるのかを確認します。

 

それは、上記の①の中の誰でも通る道だと自身の価値観で共有」したことにあります。

 

そのため、相談者Aの、

 

「予算を達成し、利益を上げなければ事業が成り立たないことは分かっているが、その責任を自分が担うのは非常に荷が重いとのこと。もし管理職になったらずっと予算に関わることになるため不安が大きい。」

 

から、管理職になることに負担が重いことや予算に関わる不安を受け止めていませんし、

 

「ずっとプレイヤーとして働いて、スペシャリストでやっていければと思います。でも、給料はあまり増えないので、どこかで転職を考えないといけなくなるかもしれません」

 

から、管理職にならないのなら、スペシャリストでやっていければと思っていますので、相談者Aの希望を理解できていません。

 

この上記の点に事例相談者Bの本質的な問題があるのです。

 

つまり、キャリアコンサルタントの基本的な姿勢や態度である「受容・共感」が不足していることが明確になるのです。

 

では、問5の解答をまとめてみます。

 

問5 問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ、具体的な指導方法を記述せよ。(25点)

 

Bは自身の準拠枠を外し、Aに寄り添い内面の感情や欲求を理解できるようになることが必要である。事例を振り返り、予約がキャンセルになったことで、Aとの関係性は築けていたか確認する。Aのことを考え方に余裕がないとか、難しく考えすぎているという印象を持ったことから、何に焦点をあて、何を明確化して、何を意識させようとしたのか聴き、それがAの来談目的に適合し共有できていたのか検証することで、見立ての違いに気づかせる。その原因が、Bの価値観で面談を進めたことにあり、Aの管理職を目指すことの負担や不安、スペシャリストへの希望を理解できるように、ロールプレイを行って受容・共感の態度を学ばせ指導する。