第13回実技(論述)試験問1を読み解いていきます。

 

タンタンが解答したものから、各問の質問の意味を紐解いていきます。

 

問1 相談者Aが訴えた「問題」は何か、記述せよ。(10点)

 

この問1の設問は、相談者Aが訴えた「問題」は何か、と問われています。

 

事例から、訴えた問題が記録されているところに焦点をあててみます。

 

①Aは「昔から予算管理に対して強い苦手意識がある」とのこと。顧客とのやりとりや、メンバーへの指示や指導は嫌いではないし、自ら率先してプレイヤーの作業も行うが、とりわけお金の話になるとプレッシャーを感じて思うように仕事ができなくなると訴えた。

 

②もし管理職になったらずっと予算に関わることになるため不安が大きい。ただ、2人の娘がまだ中学生で、妻は専業主婦。「自分の給料だけで生活しているので、管理職にならないと収入が増えないから悩ましい」と、Aは力のない声で訴えた。

 

③Aは「ずっとプレイヤーとして働いて、スペシャリストでやっていければと思います。でも、給料はあまり増えないので、どこかで転職を考えないといけなくなるかもしれません」と答えた。

 

事例相談者が記録した事例によると、以上の3点が訴えたことと答えたことになります。

 

では、①の問題である、相談者Aの苦手な予算管理の問題について、このキャリアコンサルタントは、どのように対応したのでしょうか。

 

Bは「予算管理に苦手意識があるのですね。

 

実は同様の相談って結構多いんですよ。

 

管理職にとって避けられない業務ですもんね」と笑顔で応え、さらに詳しく話を聴いた。

 

Aは過去にも何回か予算未達のプロジェクトを経験しているが、顧客に対してより良いものを作ることに意識を向けていたので、予算管理に関してはあまり気にしていなかったようである。

 

当然、予算を達成し、利益を上げなければ事業が成り立たないことは分かっているが、その責任を自分が担うのは非常に荷が重いとのこと。

 

このキャリアコンサルタントは、

相談者Aが予算管理が苦手なことを理解し、(能力不足)

キャリアコンサルタントとしての意見を

(同様の相談って結構多い)(経験値)

(管理職にとって避けられない業務)(価値観)

と言っています。

 

そして、さらに詳しく話を聴いたことで、

(Aは過去にも何回か予算未達のプロジェクトを経験している)(成功体験がない、経験不足)

(顧客に対してより良いものを作ることに意識を向けていた)(別のことに関心を示す)

(予算管理に関してはあまり気にしていなかった)(予算管理に興味がない)

 

次に、②の問題である、管理職になるとずっと予算に関わることになり不安、管理職にならないと収入が増えない。という2つの不安や悩みを抱えています。

 

これに対して、事例相談者は以下の通り応答しています。

 

Bは穏やかな口調で「でも、今いる管理職たちは全員通ってきている道ですよね」と伝え、「その思いを課長に相談したことはあるのですか」と尋ねた。

 

Aは「はい、課長に話したら『大丈夫だよ、私も苦手だったけど、なんとかなるものだよ』と言っていました」とのこと。

 

Bは「そうですか、実は私も予算管理は苦手でした」と優しい口調で答えた。

 

このことから、管理職を目指すことに対して、管理職全員、課長、自分自身の経験値を話すことで、安心感を得られるように関わっています。

 

一方、相談者Aが家庭生活の収入のことで悩ましいということについては、全く関わっていません。

 

③の問題である

「ずっとプレイヤーとして働いて、スペシャリストでやっていければと思います。でも、給料はあまり増えないので、どこかで転職を考えないといけなくなるかもしれません」

 

に対して事例相談者は次のように答えています。

 

「なるほど、そうなると家庭でも予算管理が重要になりますね」

 

と笑顔で伝えると、Aは苦笑いの表情を浮かべた。

 

このように、仕事のことを家庭の予算に比喩して応答するキャリアコンサルタントは、これまで登場したことはありません。

 

問題作成者が、これまでの方から変わっている可能性が高いですね。

 

冗談が得意なキャリアコンサルタントを描いています。

 

また、「穏やかな口調で」、「優しい口調で」、「笑顔で応え」、「力のない声」、「笑顔で伝える」、「苦笑いの表情」など、事例相談者と相談者の非言語の状態を捉えた表現の仕方が独特です。

 

表情描写が豊かな問題作成者です。

 

上記のことから、相談者Aの問題は

①予算管理

②収入の確保

③プレイヤーとしてスペシャリストのキャリアパス、転職のこと

この3つの問題です。

 

この中で、相談者Aが抱えているキャリア形成の問題は、③の問題のことです。

 

これを、2級レベルで答えると、

 

Aは課長から管理職になることを見据えて、予算管理を担当してほしいと指示されたが、予算管理が苦手なので、管理職になることに不安を抱いており仕事理解不足である。また、2人の子どもが中学生で妻が専業主婦のため、収入の問題から経済面に悩みマネープラン不足である。

 

こんな解答になるのでしょうか。

 

また、事例相談者視点で答えると、

 

Aはこれまでも予算未達のプロジェクトを経験しており、予算管理が苦手でその責任を負うのは負担が大きい。しかし、管理職にならないとすると、収入が増えないので生活を支えることに不安を抱えているにも関わらず、プロフェショナルを選択することや転職することを考えている。

 

このような解答もできます。

 

上記2つの解答は、事例記録にある事実を引用して、簡潔にまとめているものの、何が問題なのか本質を体系的にまとめてていないので理論化することができていません。

 

主観的な見方で表面的なとらえ方なので、相談者Aに何が欠けているのかが明確にできていません。

 

例えば、予算管理ができることや、家族関係との調整を図るために、相談者Aに不足していることを伝えないと、相談者Aがそのことに気づくことができませんし、自分の問題に向き合うことができません。

 

管理職になるためには、その管理職の職務内容や役割を理解して、それができるようにならなければ、そのプロジェクトの目的を達成できません。

 

つまり、その苦手な予算管理ができるようになるために、今後に向けてのプランニングが必要とされるのです。

 

また、家族関係の上でも、不安がっているだけでは家族を養うことはできません。

 

今後の子どもの成長や妻が専業主婦であることを考慮して、家族関係での立場や役割を考え、ライフやマネープランを描くことから、どのようなキャリア選択をしたらいいのか、必要なのかを吟味することが大切です。

 

そして、問題を全体的に捉え、相談者Aが何の問題で悩んでいるのかを理解しないと、本質的な問題を解決することになりません。

 

このような視点から、相談者Aの問題を概念化して理論化することで、第三者が同じ視点で相談者Aの問題を客観的に理解できるようになるのです。

 

それで、前回の次の解答ができるのです。

 

Aは管理職の職務として予算管理の克服と家族関係から収入の面を不安視し、将来の転職も考え、キャリア・サバイバルの問題を抱えている。職務と役割のプランニングが不足しているため、管理職かスペシャリストか、外的キャリアと内的キャリアの選択で意思決定できずにいる。

 

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