今回は、1級キャリアコンサルティング技能検定実技(面接)試験の評価区分【具体的展開力】について考えてみたいと思います。
[具体的展開力」の定義は、
「事例相談者の問題を解決するために、適切な目標を設定し、効果的な指導を企画できること。事例相談者に対して、適切でわかりやすく、理論的・具体的な説明を行うことができること。指導プロセスにおける個々のセッションの中で、事例指導者が企画した指導方法を効果的に遂行するために、専門的な介入を行うことができること。」
です。
最初の、「事例相談者の問題を解決するために、適切な目標を設定し、効果的な指導を企画できること。」を考えます。
具体的展開力とは、相談者と事例相談者の問題の解決が目標です。
事例指導者が事例に拘りすぎて、事例相談者の問題に向き合えていないことが言われています。
でも、実技である論述でも必須問題で相談者の問題を解決することが求められています。
事例相談者の問題というと、相談者の問題を解決することと(事例相談者⇒相談者)、事例相談者の相談者への対応の問題(事例指導者⇒事例相談者)の2つがあると思います。
具体的展開力というと、面談の後半部分である事例指導の展開力と思いがちだと思います。
しかしながら、面談の前半で事例検討を行い、後半で事例指導へ移ることも具体的展開力だと考えます。
事例は必要ないと、いきなり事例指導に向かったとすれば、事例相談者のクセや偏りなどの特徴を捉えられないまま、所感にあるコメントだけで表層的に問題を取り扱っても問題解決には至りません。
事例を通した事例相談者の考え方・感じ方・行動を検証しながら、事例相談者のありたい姿の実現を援助することのプロセスを表現して実行することが、1級キャリアコンサルティング技能検定試験の評価のポイントだと思います.
「適切な目標を設定し、効果的な指導を企画できること。」については、「試験科目及びその範囲の細目」には、[当該相談の到達目標、事例相談を行う範囲、事例相談の緊要度等について、事例相談者との間に具体的な合意を得ること。」あります。
[適切な目標を設定し」とは、事例指導者と事例相談者の共同作業による到達目標の設定です。
目標設定には、①具体的、②技量の限界、③相談者の意思確認、④行動契約の4つのステップが含まれます。
また、「事例相談を行う範囲」については曖昧でわかりづらい表現ですが、「キャリアコンサルティングを担う者の活動範囲と義務」と理解すると、①活動範囲・限界の理解、②守秘義務の遵守、③倫理規定の遵守の3点が考えられます。
「事例相談の緊要度」については、論述問題【選択問題】の問2にある優先して取り組む目標に繋がるのではないかと考えます。
というのは、「試験科目及びその範囲の細目」には、学科試験の「相談過程において必要な技能」の「相談者」を、実技試験の「相談過程において必要な技能」では、「事例相談者」と表現を変えただけで、内容はカウンセラーとクライエントとの間で行われる「キャリアコンサルティングを行うために必要な技能」と全く同じであり、「事例相談の緊要度」とは違和感があります。
そして、「効果的な指導を企画する」とは、方向付け、到達可能、測定・評価、合理的の4つの有効性を伴わなければならないものです。
続いて、「事例相談者に対して、適切でわかりやすく、理論的・具体的な説明を行うことができること。」とあります。
「理論的・具体的」とについては、、「試験科目及びその範囲の細目」の学科試験、「キャリアコンサルティングを行うために必要な知識」の中には、「キャリアに関する理論」と「カウンセリングに関する理論」があります。
キャリアについては、キャリア発達理論、職業指導理論、職業選択理論等のキャリア開発の代表的な理論として、
●パーソナリティー・特性因子理論アプローチ
●発達論・トランジッション理論アプローチ
●社会学習理論アプローチ
●意思決定理論アプローチ
●精神分析的理論
●動機づけ(職務満足・職業適応)理論
等が挙げられています。
また、カウンセリング理論については、代表的なものとして、
〇来談者中心アプローチ
〇精神分析的カウンセリング
〇論理療法
〇行動療法
〇ゲシュタルト療法
〇交流分析
〇包括的・折衷的アプローチ
〇アサーション
等が挙げられています。
私も、本番の検定では、
●パーソナリティー・特性因子理論アプローチ
●発達論・トランジッション理論アプローチ
●意思決定理論アプローチ
〇来談者中心アプローチ
〇論理療法
〇アサーション
等を必ず使いました。
日頃の練習で使い慣れていることが大切です、理論について十分に理解して、失敗を恐れず活用してみてください。
そして、「指導プロセスにおける個々のセッション」については、「指導プロセス」とはシステマティックアプローチのことだと思いますが、関係構築、問題把握、目標設定、方策の実行という流れで面談は進められます。
「事例指導者が企画した指導方法を効果的に遂行するために、専門的な介入を行うことができること。」の中では、「専門的な介入」とはどのようなことを言っているのでしょうか。
事例相談者を問題に直面化(対決)させるためには、上記のキャリア理論やカウンセリング理論を使うことで有効な根拠となりますし効果的でもあります。
また、内的な問題については理論を使うことで問題解決に向かうこともありますが、外的な問題が作用していて相談者や事例相談者の問題の解決を難しくしている場合もあります。
最後の最後に、「専門的な介入」が出てくることに違和感がありますが、これまでの評価区分の流れから考えると、論述【選択問題」問3にあるように、ネットワークや環境への働きかけのことが想定できます。
これまで、4回にわたり評価区分の基本的態度、関係構築力、問題把握力、具体的展開力について考えてきました。
第12回を受験される方は、受検の前には、
「1級キャリアコンサルティング技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」
「1級キャリアコンサルティング技能検定実技(面接)試験の評価区分」
「キャリアコンサルタント行動憲章」
の3点の内容を十分に理解しておくことが大切だと思います 。