6/4(火)

 

早朝起きて、6:50佐久インター南の長距離バスに乗る。道中、眠りながら「お前はただの現在に過ぎない」読む。

 

練馬で降りて、豪徳寺へ。かつてしまおまほさん一家が住んでいた旧テオドラ邸へ。しまおさんの幼少期の写真、絵、おもちゃから零れ落ちる静かな幸福感に浸る。

そこから一時間以上かけて横浜の放送ライブラリーへ。山田太一脚本、安田成美、奥田瑛二主演「奈良へ行くまで」観る。題名から想像できないがテーマはゼネコンである。空虚な形式主義に支えられたゼネコンの体質に風穴を開けるために奔走する奥田瑛二。その虚飾に満ちた世界と対比する形で、奥田の旧友で、奥田の妻の成美さんへの愛の告白を押しとどめられない男(村上弘明)の姿が描かれる。「小さい頃から、バカなことはしなかった。学校でも仕事でも、自分をなんとかコントロール出来ました。奥さんへの気持ちだけが、消すことが出来ない。え?人間て、こんなこともあるのかと、この齢になって驚いています。嘘だろっていわれるかもしれないけど、いま、電話してるのは私の人生の、はじめての無茶苦茶です。常識もモラルも、計算の節度も、なにもかも、ほうり出した無茶苦茶です…」。ここでは嘘で塗り固められた世界の中で、例え旧友の妻であっても好意や愛情や美しいと思う気持ちを正直に伝えることの尊さが、ある種の苦笑と共に優しく肯定される。今の私には刺さりまくる作品。いまこのタイミングで観られて本当によかったというのもあるけど、どちらかといえば後期の言及されることの少ない2時間ドラマでも無茶苦茶山田太一してて、その作家性の強靭さには驚きを禁じ得ない。本シナリオが収録された当時の「月刊ドラマ」の山田先生のインタビューでは特に成美さんには言及されていないけど、明らかにこの役は成美さんのために書かれているのが伝わってくるから嬉しかった。彼女の出演した山田太一ドラマがこれだけなのが惜しまれる。




続いて、野沢尚脚本『ドラマシティー’92 性的黙示録』観る。田舎の布団屋の経理担当の真田広之が会社の金を横領している事実を社長の津川雅彦に掴まれ、言われるがままに真田の妻の樋口可南子と津川の妻の樹木希林とのスワッピングを持ちかけられる。ここまでは良いのだが、このスワッピングは有耶無耶なまま双方未遂で終わる。その後もこれが特に話に絡まないままいつのまにか真田は津川を殺害し、死体を車のトランクに入れたまま毎日何食わぬ顔で出勤する。ヤンキーの椎名桔平と浮気してカーセックスしまくる樋口可南子に向き合えない弱気な真田広之は、もの答えぬ津川雅彦にだけ心を開いて語り続ける…。地味ではあるが、80年代前半くらいのATG味があり(原作は「遠雷」の続編だともいうし)、見せられてしまう。こんな小さなドラマでもちゃんと脱いでる樋口可南子のきっぷの良さには惚れ惚れするし、椎名桔平の中上健次的なキャラクター造形も的確だ。しかしこれ一本では、野沢さんが終生感謝を伝えていた鶴橋康夫演出の真髄はよくわからず。

終わって、みなとみらいに行ってJINSで眼鏡作る。

渋谷のbonoboへ。去年は参加できなかった中原昌也さんの誕生日会へ。倒れられてから初めて中原さんに挨拶するので、正直緊張したが、たまに見せる柔和な笑顔と言葉のウィットは今までの中原さんと変わらない。演奏見れたし、満足して帰る。

新宿の歌舞伎町の金太郎に泊まる。