5/28(火)

 

早朝K‐plusで借りていたVHSで久世光彦「恋子の毎日」(86)観る。つまらない。ビックリするほどにビートたけしも小林薫も全然よくない。せっかくのやくざ役なのに、たけしも演技のアプローチに迷っている節がある。あの鬼気迫る『コミック雑誌なんかいらない』と同年のたけしとはとても思えないふやけ方である。

 

仕事後、ユーネクストで森田芳光脚本のオムニバス『バカヤロー! 私、怒ってます』観る。贔屓目ではなく、安田成美さん主演第二話目(監督は、なんとこれがデビュー作の中島哲也だ)が一番良かった。主人公が現実離れした特異なキャラクターたちに抑圧されて最終的にブちぎれるというパターンが多い中で、この話では都内の勤務先と郊外の家との距離によって生じる不公平感というのが題材となっており、共感しやすい。やけ酒あおってホテルの廊下で暴れる安田さんの等身大の女性像がチャーミングだった。

しかし、この話だけでなくセックスネタがとにかく多くて辟易した。この時代、本当に日本人はこんなにぎらぎらとセックスのことばかり考えていたのか。なんだか嫌な味が残る。こんな人間ばかり生み出していたなら、バブルなんて弾けて結構だ。

 

続いて、ヤフオクで落としたVHSでサイトウマコト『マコトノハナシ』観る。このビデオ、よくわからないまま買ったのだけど、91年にNHKのお正月に放映された番組らしい。コントともドラマともいえない、オフビートな人々のやりとりが、透明感あふれる16㎜撮影で描かれており、全体で50分ほどだが非常に充実したアートな連作だと感じた。撮影があのボウイのポートレイトなどで著名な写真家鋤田正義なのも驚いたけど、脚本の君津道幸は、森田芳光の変名だと判明。『おいしい結婚』に出ていた唐沢寿明や爆笑問題、『そろばんずく』『バカヤロー!』に出ていた安田さんなどが出ているのは当時の森田人脈なのだろうし、森田芳光らしい独特の人間たちの距離感や空気感のオフビートなおかしさがしっかり出ているのは、『バカヤロー!』よりはるかにこちらだと思う。

特に、当時人気絶頂だった頃の安田さんと、世間的には「干されていた」頃の爆笑問題太田さんが丁々発止の二人芝居を繰り広げる第五話が二人のファン的には悶絶もの。

年賀状の配達バイト中の太田さんに、私の部屋に上がって年賀状を読ませろと脅してくる安田さん。「バカな女だ。話にならない」「え…あんた私の部屋に上がらないでいられるわけ?」何故か終始ハードボイルドな口調の太田さん、不条理な要求を当然のように口にする安田さんの噛み合わない会話のおかしさ。干されていた頃の爆笑問題に森田監督が積極的に仕事を与えていた美談は有名だけど、これはその中でも相当にいいと思う。