4/21(日)
10:00に新宿の宝島を「チェックアウト」して、高峰秀子展をみるために東京タワーへ向かう。約10年前に蝋人形館がなくなる寸前に行って以来だ(いまだにあの異常な空間が東京の観光の中心地に長年にわたって存在できたことが信じられない…。あれこそ世界七不思議のひとつとかじゃないかと思う)。
外国人観光客がごった返す中で、ぽっかりと全く場違いな感じの静かな空間。ちょろちょろとやってくるご高齢のおねえさんがたと一緒に鑑賞。1500円もした割にそれほど展示品はなかったけど、高峰秀子のサイン付きの大量の台本(「見つけたら私に返してください」とか書いてある)には興奮した。また「わたしの渡世日記」が読みたい。
一時間くらいで出て、としまえんへ向かう。ユーネクストのポイント1500プラス500円でIMAX環境でノーラン『オッペンハイマー』観る。
現行ハリウッド最大の実験映画でありノーラン特有のテンションが熱に浮かされて破滅へと突き進む人間たちの恐れとデーモニッシュな快楽を体感させる表現にまで昇華されてると思う。目を逸らそうとも引き寄せられてしまう麻薬のような映画。もしかしたら、これは21世紀に生まれた『地獄の黙示録』であり、正常も異常も、善も悪も、反戦も好戦も何もかも飲み込んでしまうアメリカ映画史に穿たれたブラックホールなのかもしれない…いや、それは妄想だとしても(いまだにノーランをそこまでの奴だと思いたくない)、少なくとも『シンドラーのリスト』以降、最も重要なアカデミー賞受賞作でしょう、これは。ただただ打ちのめされ、窒息寸前、クラクラ…。
アインシュタイン役をトム・コンティが演じたラストが史上かつてないほどの『戦場のメリークリスマス』オマージュになってることはもっと騒がれていいのに…。少なくとも俺は泣いた。今から処刑されにいくたけしの笑顔の代わりにオッペンハイマーの暗澹たる表情があることに。
終わって、フワフワしながら電車に乗り、池袋で長距離バスに乗って長野に帰る。バスの中で猫の本棚の青山真治文庫で購入した朴一「僕たちのヒーローはみんな在日だった」読む。デリケートな問題が(差別的な筆致ではなく)学べる、いい本でした。青山さん、ありがとう。