12/29(金)

 

佐久インター南からの長距離バスに乗る。バスの中で山田太一「ふぞろいの林檎たちⅤ」を読了。仲手川の最終的に結ばれる相手には感無量。シナリオの中だけなら晴江(石原真理子)も健気に40代をサバイブしている素敵な女性のままだ。この感動を味わうためにも、「Ⅲ」「Ⅳ」もちゃんとシナリオ読んどいてよかった。もちろん、映像で観られるならそれに越したことはないのだが。

 

Ksシネマに行く。ロビーで千浦さんに遭う(チケット買えなかったそうだ)。会場で大橋さんに遭う。たぶん5年ぶりだ。佐藤寿保『狂った触覚』(「激愛!ロリータ密猟」)観る。バブル前の浮かれた時代の空気に切っ先が向けられた純粋な怒りの刃。やっと観られた…。感無量。

 

ロビーで寿保さんに質問。このタイトル、平野さんの「狂った触角」とは関係ないみたい。またカッチョイイ成人映画館用の題名も寿保さん自身の発案のようだ。

 

終わって、児玉くん、うつみさんと駅まで行く。僕は一人浦和に行く。

浦和の中華屋でチャーハンとハイボール。ルーレットおみくじをやろうかどうしようか迷う。

18:00、KUNI HAUSEとうというところで100円CDDJの大家デラさんの一人会に参加。楽しかったけど、疲れが出てきて二時間で脱落。帰る前にデラさん放出のCDをまとめてもらう。ありがとうございました。また来ます。

 

浦和から下高井戸に向かう。児玉くんたちが下高井戸シネマで映画を観るといっていたので、映画は観れなくても行けば会えると思って(淋しかったんだよー)。ロビーで梅本くんに会う。

ロビーで読書してたら、小川さんが来て、しばし話す。彼女に会うのも2年ぶりだ。『彼方のうた』観るの楽しみだと伝える。

 

映画終わって児玉くんたち出てくるが、これから仕事で飲めないという。中山くんにLINEを送って、新宿で会うことに。

 

紀伊国屋前で待ち合わせたが、体調が悪いというので、改札前でちょっと話してすぐ別れる。

 

池袋行って、新文芸坐近くの金太郎に宿泊。

 

12/30(土)

 

10:00に金太郎出る。

14:30にシネマカリテで『Polar Night』観るため、それまで時間つぶすため、急遽TOHOシネマズ新宿でイーライ・ロス『サンクス・ギビング』を観ることに。

異様なほどお客さんが入っていてびっくりしたが、まー、なんつーか普通のスラッシャーにグロシーンが無理くり盛られているような。特に問題だと思うのが、チアリーダーの女の子がトランポリンで飛び跳ねているところに股間に刃物が突き立てられるという、『グラインドハウス』の中のフェイク予告で一番面白かった場面が、おそらくはミソジニックだという批判を回避するためか微妙に変更されており、残虐さは増しているけど面白くは全然ない。

イーライ・ロスという人のことはいまだに何をしたいひとなのだかよくわからないのだけど、少なくとも『キャビン・フィーバー』『ホステル』の頃の、ジャンル映画に捻った現代性を盛り込むクレイバーさをほとんど失ってしまったのは残念ながら確かなようだ。

 

終わって、走ってシネマカリテまで行くが、時間を完璧に間違えており、一時間も早くついてしまう。仕方なく、ユニオンを周る。何も買わず。

 

磯谷渚『Polar Night』観る。磯谷さんは高橋洋『旧支配者のキャロル』の制作部で主要となる廃墟のロケ地が見つけられず、失踪するか腕の骨を故意に折って離脱しようと本気で追い詰められていた僕を救ってくれた恩人(『旧支配者のキャロル』に出てくる廃墟は、磯谷さんが実家の周囲をチャリで回っているときに見つけてくれた物件なのだ)。足を向けては寝られない。

だから、ということは全然なく、題材に求められる創意に満ちたプロフェッショナルな仕事だと感心した。少なくとも『天使の欲望』の時は、やっぱりまだ無意識でやっている感じがあったけど、これは本当にプロの仕事だと思う。

ただ、「人間バーベキュー描写」に一家言ある人間とすれば、無理は承知でやはりあのラストはCGではなく実際に人か人形を燃やしてほしかった。

『私の赤ちゃん』が傑出した出来だったのは、階段落ちを手作りの人形で撮影(しかも2010年代に)したからではなかったか。これでは、「納得」はするけど面白くはない。面白い「非」が乱れ飛ぶ無国籍な娯楽映画作家としての磯谷渚をこれからも応援したい。

 

終わって、池袋。往来座でのむみちさんに挨拶。「あの夏、いちばん静かな海。」が特集された「映画芸術 91年冬号」を1000円で買う。

 

帰りのバスの中で「映画芸術」熟読。たけしと若松孝二、根岸吉太郎、寺脇研、荒井晴彦の座談会や、スタッフの座談会、笠原和夫の激烈な批判がノーカットで収録されたこの特集の方が、後の『ソナチネ』特集号より資料とすれば充実していると思う。佐野和宏の評が載っているのも眼を引く。

 

家に帰ると、履歴書を出していたかつての職場から、再雇用を丁重に断る趣旨の手紙と履歴書が送り返されてきてて茫然自失。

 

12/31(日)

 

激烈に落ち込んで、ひたすら酒飲んでクソみたいな気分で眠る。考え出すと、涙が出るから、怖くて何も考えたくない。

自分がもう誰にも必要とされてないと自覚するのは辛いことである。

連載を書く気力も完全に失う。坂さんにお詫びを送る。

何から何まで、本当に最低だと思う。

年が明ける。