12/20(水)
上田映劇でギャスパー・ノエ『VORTEX ヴォルテックス』観る。ギャスパー・ノエの映画は食わず嫌いで観たことがなく、ダリオ・アルジェントが出てるし、まー観るかくらいのテンションだったのだが、紛うことなき非情な出来に打ちのめされ、ボロボロに泣いてしまう。人が死ぬまでのよるべなき精神状態のエクスペリメンタルフィルムとして卓越してるのみならず、人が物質的に完全にこの世界から「消える」までを厳粛に見つめる眼差しのクールさに痺れた。フランソワーズ・ルブランとアルジェントのカップルは、映画史における「いたたまれなさ」のレベルを更新させた…。図らずも、ダリオ・アルジェントという人の映画人生はこの究極的なホラー映画によってついに完成したんじゃないか、と。
絶対にこうなりたくない、しかし多かれ少なかれみんなこうなる!「なし崩し終活映画」の頂点をなす大傑作。まだ映画にこんな未開の領域があったとは!クレジットを一気に冒頭で済まし、フランソワーズ・アルディの曲のスコピトンを丸々引用するというオープニングもカッコいい!
僕の家にある大量の蔵書やレコード、CD、ビデオ。それらが僕の死後、処分された時、本当に僕は死ぬんだと思う。
家に帰って、ファンザで西村昭五郎『乳首にピアスをする女』観る。
12/21(木)
鬱々と原稿に向かう。全くかける気がしない。
12/22(金)
あてどなくパソコンを眺めるが、マス目は埋まってくれない。
午後、たまらなくなって上田へ。
上田映劇(トゥラム・ライゼ)のロビーで読書してたら、フラッと柄本明が来てビビる。「ロケでこっち来てて時間が空いたんだよね」とか言ってたが、東京の映画館で見かけたように新聞を片手にいつもの感じ。
『パトリシア・ハイスミスに恋して』観るが、集中できず。
柄本さんは次の映画も観るか迷ってたようだけど、僕は緊張して出ちゃう。
バリューブックスで小林信彦編集「テレビの黄金時代」、野沢尚「映画館に、日本映画があった頃」、佐野眞一「ニッポン発情狂時代 性の王国」を50円で買う。
家に帰ってU-NEXTで黒沢直輔『愛獣 襲る!』観る。『愛獣』シリーズはどれを観てて見てないのか定かではないが、とにかく泉じゅんが世界最高の女優であることだけを伝えてくれる尊いシリーズです。
夜、金曜ロードショーでクリス・コロンバス『ホーム・アローン』観る。90年代の「普通」のアメリカ映画は改めて偉大だった(しかし同時代ではわからなかった)と思う。これだけのシンプルな設定で、何十回見ても家族で楽しめるファミリー映画を、00年代以降作れてないよ。
僕はどう足掻いても90年代の洋画劇場から受けた影響を脱し得ないのです。