社会に出ると、知識よりも「現場でどう動くか」が問われます。
会議の準備、上司への報告、チームの連携、突発的なトラブル対応……。
こうした“リアルな状況判断力”を身につけるには、座学やマニュアルだけでは限界があります。
そのギャップを埋める学習法として、近年注目を集めているのが 「インバスケット方式」 です。
■ インバスケット方式とは?
インバスケット(In-Basket)とは、もともとアメリカの企業研修や公務員選考などで使われてきた評価・育成手法です。
日本語では「未処理箱法」とも呼ばれ、あるポジションに就いた想定のもとで、短時間のうちに複数の案件(メール・メモ・報告書など)に対応していくシミュレーション演習です。
たとえば、次のような設定が用意されます。
「あなたは商品企画部の新入社員です。上司が出張中の間、10件の案件があなたのデスクに届きました。限られた時間の中で、どの案件からどう対応するかを判断してください。」
このように、実際の業務に近い状況を“模擬体験”しながら、判断力・優先順位づけ・報連相などを訓練できるのがインバスケットの最大の特徴です。
■ なぜ「インバスケット方式」が新入社員に効果的なのか
① 頭でなく、体で「考える力」が身につく
教科書や講義では「報連相が大事」と言われても、実際にどのタイミングで報告するか、どの程度の情報を共有するかは状況によって変わります。
インバスケットでは、複数の案件を同時に扱うため、自然と「状況判断」「優先度の見極め」「報告のタイミング」を実践的に鍛えることができます。
② 安全な環境で“失敗の経験”ができる
実際の仕事では、ミスを恐れて挑戦を避けてしまう人も少なくありません。
しかし、インバスケットではあくまで「演習」です。失敗しても評価される場ではなく、学びに変えられる安全な環境です。
「報告を後回しにした結果どうなるか」「先輩への確認を怠ったら何が起きるか」を疑似体験することで、リスク感覚が磨かれます。
③ 複合スキルを同時に養える
実務では、単一のスキルだけで成果は出せません。
優先順位を考えながらタスクを処理し、報連相を行い、上司やチームと協働して動く——。
インバスケット演習では、このように「複数のスキルを同時に使う訓練」が可能です。
まさに、実務に近い“複合スキル・トレーニング”と言えるでしょう。
■ 就活生にもおすすめ! 面接・入社前の準備になる
実は、インバスケット方式はすでに多くの企業の採用試験や管理職研修で導入されています。
そのため、就活生がこの手法を体験しておくことは、面接で「即戦力型人材」として印象を高める大きな武器になります。
例えば、面接でこう話せます。
「限られた時間で複数の課題に優先順位をつけて対応するトレーニングをしています。
状況を整理し、上司に報告するタイミングを意識するようになりました。」
このような発言ができるだけで、「実践的に動ける人」という信頼感を与えられます。
■ 具体的にどんな力が身につくのか?
スキル分類 | 内容 |
---|---|
優先順位判断力 | 「重要度」と「緊急度」を見極め、最適な行動順を決める力 |
報連相力 | 状況に応じた報告・連絡・相談の判断力 |
協働力 | 上司・先輩・同僚との連携でチーム成果を高める力 |
主体性 | 指示待ちではなく、自ら考え行動する力 |
リスクマネジメント力 | 問題の芽を早期に察知し、適切に対処する力 |
これらのスキルは、どの業界・職種でも通用する「社会人基礎力」です。
インバスケットを通じて、1年目のうちにこれらを体系的に鍛えることで、仕事の吸収スピードが格段に上がります。
■ まとめ:インバスケットで“考えて動く人材”へ
インバスケット方式は、単なるビジネスゲームではありません。
現場で求められる“思考と行動の再現訓練”です。
座学では得られない「判断」「優先」「報告」「協働」を一度に体験できるため、
社会人1年目の成長を一気に加速させるツールといえるでしょう。
就活生にとっては、社会に出る前の実践準備として。
新入社員にとっては、失敗を恐れずに学べる安全な実践場として。
ぜひ、インバスケット方式を通して「考えて動けるビジネスパーソン」への第一歩を踏み出してください。
▶ おすすめの一冊
📘 『就活生・新入社員向け インバスケットで身につける!社会人1年目の仕事の実践スキル』
現場に出る前に“できる人”になるための実践演習と解説をセットで学べる構成です。
「読むだけでなく、手を動かして学ぶ」ことで、本当の力が身につきます。
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これから係長を目指す方や係長として更なる成長を志す方々のための実践的な教材です。現場で直面するリアルな課題やリーダーとしての迷いに真正面から向き合えるよう、理論とケーススタディ、独自のインバスケット演習(基礎編、応用編)を盛り込み、“現実に役立つ係長としてのスキル”の習得を目指します。