日本国内だけでなく世界的にも、テレビ・オーディオ・PC・スマートフォンといった弱電(低電圧・低電力)エレクトロニクス分野は技術の成熟化とグローバル競争、そしてコモディティ化(差別化の消失・価格競争激化)が急速に進んでいます。「作れること」が競争力の源泉だった時代は終わり、従来型の仕様設計・回路設計スキルだけではキャリアに限界を感じる技術者も増えています。
このような環境下、弱電系エンジニアが今後も社会に価値を発揮し続けるために、どのような方向へキャリアを切り拓くべきなのでしょうか?ここでは実践的な提言を具体的にまとめます。
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1. コモディティ分野は“深化”より“越境”が重要に
弱電系のコア技術(例:アナログ回路、無線通信LSI、エンベデッドソフト)の多くはグローバルに標準化され、開発工程もアウトソースや自動化が進んでいます。そのため、一本道で“深化”を目指すより、強みを活かして「隣接分野に越境する」意識が不可欠です。
2. 「パワー系(強電)」の技術習得を視野に入れる
注目すべきは、社会インフラや産業機械、再生可能エネルギー、EV・充電スタンドなど、**“パワーエレクトロニクス”や“高圧・高容量電源制御”**といった電力系(強電)分野の台頭です。
特に次のような領域は今後長期的な成長が見込まれています。
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EVシフトに伴う高出力インバータ・充電インフラ設計
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スマートグリッド、分散電源、再生可能エネルギーに関するパワエレ・制御システム
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産業ロボットや自動化設備の高効率電動力制御
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5G/データセンターなど大容量電源・電力最適化技術
弱電で培った「回路設計」「信号処理」「組込制御」などの素養は、パワーエレや高電圧制御でも十分活かせます。今、若手~中堅エンジニアがパワー系資格(電験三種/一種、エネルギー管理士、パワエレ専門通信教育)や実務プロジェクトでの経験蓄積に取り組めば、他の“コモディティ化人材”との差別化に繋がります。
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3. “現場✕デジタル・IoT”領域へのシフト
現実の現場(工場・物流・エネルギー現場)で、DX(デジタルトランスフォーメーション)やIoT化、センシングシステムが加速しています。弱電の“デバイス知見”+現場の“制御・インフラ知見”を掛け合わせ、フィジカル-デジタルをつなぐ「橋渡し役」に進化するのも巨大なチャンスです。
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4. “顧客課題解決・システム発想”重視へ
これからは「モノを作る」から「価値を創る」へと軸足を移すべき時代です。自分の技術が
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どんな社会課題を解決できるか
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どう顧客のビジネスを伸ばすか
を常に意識し、新規システム提案/上流設計/サービス設計スキルも伸ばしましょう。
製造業2040 -変化の渦中で進むべき日本の針路-
まとめ:キャリアアップの指針
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コモディティ分野での現状維持は極めてリスキー
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パワーエレクトロニクス分野への越境・学び直しは大きな差別化ポイント
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DX・スマート化領域の“現場力”と“IT力”を融合せよ
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顧客課題/社会課題起点のシステム発想にシフト
弱電技術者が「安価で代替される労働力」から“社会インフラの進化を担うエンジニア”へと進化することが、コモディティ時代を乗り切る最大の武器です。
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