2025年8月9日時点、仮想通貨市場は制度面・資金面の両方で大きな変化を迎えています。
米国では8月7日に401(k)年金への暗号資産組み入れを可能にする大統領令が発表され、Ripple訴訟の終結によって長年の不確実性が一部解消しました。
ETF市場では、ビットコインは資金流出入の振れが大きい一方、イーサリアムはETF資金流入とPectraアップグレードによる利用性向上が重なり回復基調です。
EUではMiCA規制が本格運用段階に入り、香港や日本でも制度整備が進展しています。
今後6〜12か月は、ETF資金フローと米欧の規制実装スピードが最大の市場ドライバーとなり、好材料が重なればBTCの高値更新やETHの相対優位も視野に入りますが、インフレ再燃や長期金利上昇などマクロ逆風時には急落リスクも残ります。
全体俯瞰(2025年夏)
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政策の追い風:8月7日に米国で「401(k)に暗号資産やPE等の代替資産を組み入れ可能にする」大統領令が出て、制度面の可能性が一段広がりました(詳細設計は今後の省庁ルールで詰め)。これが“年金マネー”と暗号資産の距離を縮めたのは大きいです。
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規制の不確実性低下:SECとRippleの係争が最終的に終結。XRPの「取引所でのセカンダリー販売は有価証券でない」が再確認され、機関投資家向け販売には制限という整理で一段落しました。業界にとって長年の不確実性が1つ解消。
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ETFマネーのダイナミクス:米スポットBTC ETFは7月に記録的流入→8月序盤は景気・インフレ不安で流出が続いた後、再び小幅流入に転じるなど“出入りが激しい”状態。対してETHのスポットETFには資金流入が続き、ETHは$4,000回復と復調色。
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EUはMiCA本格施行フェーズ:2025年はレベル2/3規則が順次確定・適用へ。EU内の事業者規制・記録義務・苦情処理など実務要件が整い、安定運用モードに移行しています。
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企業バランスシートと暗号資産:世界で上場企業が自社の時価総額テコ入れ目的でBTC等を保有する動きが加速。短期的には株価押上げ効果がある一方、調達レバレッジ+価格下落時の財務リスクへの警鐘も。
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伝統資産とのせめぎ合い:年初来は金(ゴールド)の方が“安全資産”として選好されやすい局面が目立ち、BTCはリスク資産的に振舞う場面が多いのも事実。
チェーン別・テーマ別の最近の論点
Bitcoin(BTC)
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ドライバー:米スポットETFのフロー(出入り激しい)、企業のバランスシート組入れ、マクロ金利・インフレ観測。7月は史上最高の月次クローズを記録したが、8月入りでETF資金が逆回転→直近は再流入に転じる“綱引き”。
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プロトコルまわり:2024年の半減期後に話題化したRunes/BRC系は熱狂→冷却の揺り戻しを経験。手数料・需給には短期的影響を与えるが、長期の本質価値はやはり「検閲耐性のあるデジタル価値保存資産」+L2/サイドの発展に依拠。
Ethereum(ETH)
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Pectra(2025年)でUX前進:EIP-7702等によりアカウント抽象化が進み、ガススポンサーやバッチ送信など“スマート口座的”体験が現実解に。これがETFマネーの流入と相まって、$4,000台を回復。
EIP-7702は、イーサリアムのアカウント抽象化(Account Abstraction)を一歩進める提案で、従来の外部アカウント(EOA)を一時的にスマートコントラクトアカウントのように振る舞わせることを可能にします。これにより、ユーザーは従来のように固定された秘密鍵で直接トランザクションを発行するのではなく、より柔軟でアプリ的な挙動をウォレットに持たせることができます。具体的には、ガス代を第三者が肩代わりする「ガススポンサー」や、複数の取引を1回の操作でまとめて実行する「バッチ送信」といった機能が、標準的な仕組みとして利用可能になります。これによって、たとえばNFTやDeFiアプリの利用時に、ユーザーが都度ガス代を用意したり複数回の承認操作を行ったりする必要がなくなり、従来のWeb2アプリに近いスムーズで直感的な操作体験が実現します。さらに、鍵の入れ替えや権限復旧など高度なセキュリティ管理も可能になり、利便性と安全性が両立する「スマート口座的」な使い勝手が現実のものとなります。
規制・制度(地域別)
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米国:401(k)の代替資産解禁EOで“器”が広がった一方、導入は運用会社の方針と後続ルール作り次第。SECとRipple終了も象徴的で、「全面敵対からルール形成へ」のムードに傾斜。
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EU:MiCAが運用段階へ。ステーブルコインの監督と発行体要件が実務的に詰まり、域内ビジネスの透明性が上がる一方、ECBと欧州委の安定幣リスク評価めぐる綱引きも。
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香港:2024年にスポットBTC/ETH ETF上場でアジアのパスが開通。規模は米国に比べ小さいが、域内の制度整備は前進。
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日本:暗号資産税制の**大幅見直し(20%分離課税化、損益通算・繰越控除等)**に向けた議論が加速し、2025年税制改正で企業課税周りも段階的に整備。個人課税は引き続き政治・与党税調の最終判断待ちという段階。
足元の市場ドライバー(8月の“今”)
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ETFフローの方向:BTCは8月入りに流出続き→直近で+$91.5Mの小幅流入に転換。ETHは連日の流入がニュースを賑わし、需給面の後押し。
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マクロ(米インフレ&金利):スタグフレーション懸念がリスク資産全般の重石になりやすいが、良好な物価データが出れば再度リスクオンも。
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政策のサプライズ:米大統領令・SEC方針転換の“象徴イベント”がセンチメント改善に寄与。
6〜12ヶ月の見通し(シナリオ)
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ベース(確率中):米・EUでルール形成が進み、ETF経由の資金フローが断続的に続く。BTCはレンジ拡大のボラ相場(例:$95k〜$140k帯の往来)、ETHはETF+Pectra後のエコシステム需要で相対強含み。リスクは米景気減速・実質金利上昇。
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強気(確率中低):米リセッション回避+利下げ開始、401(k)運用会社の実装が進展し新規需要の窓が開く。BTCは史上高値更新再開、ETHはオンチェーンUX改善からのアプリ回帰でビットコイン比でアウトパフォーム。
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弱気(確率中):インフレ再燃→長期金利上振れ、ETFからの継続的流出、または大規模ハッキング等の事故。BTCは$90k割れをテスト、アルトは下落β大。安全資産シフトで金が相対優位。
投資・事業視点のアクションヒント
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フロー監視を最優先:The BlockやFarside等の日次ETFフローは短期の最重要指標。流入再加速は追い風、連続流出は“短期は逃げ”の合図になりやすい。
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ETHは「制度×技術」の両輪で評価:ETF資金にPectraのUX改善が重なるため、L2やアカウント抽象化関連の周辺銘柄/ツール群にも波及余地。
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リージョン分散:EUのMiCAで域内ビジネスの透明度は上がる一方、米国の制度実装スピードが最速。香港はゲートウェイ的役割。規制差に応じた事業・流動性の置き場見直しを。
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財務健全性チェック:BTCを大量保有する上場企業は上げ相場で妙味が出る反面、下げ相場でレバレッジリスクが増す。財務注記のBTC保有・調達手段(社債・増資)を精査。
直近の“要ウォッチ”イベント/指標
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米CPI/PPI・雇用(インフレ観測の更新 → ETFフローに即反映)。
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ETFフロー(The Block/Farside/各社データ)。
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ETHエコシステムの採用指標(取引手数料、L2活動、ウォレットの7702対応状況)。
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EU MiCAの追加実装(ESMA/EBAの最終テクニカル基準の確定と発効)。
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