GC Universalの「GC(God Current)」に関する調査・分析

1. GC(God Current)の概要

GC(God Current)は、GCユニバーサル社が提唱する全く新しい電流技術です。公式には「直流(DC)でも交流(AC)でもない新しい電気の形」と説明されており、既存のACやDCの性能をはるかに上回る画期的な技術だとされています。GCはACとDC双方の長所(送電効率や安全性、蓄電の容易さなど)を兼ね備え、従来の電気の常識では考えられない超高速充電超高効率送電を同時に実現できると謳われています。例えば、「GC」を用いれば電流をACよりも効率的かつ安全に送電でき、DCよりもはるかに高速に安全に蓄電できる(充電できる)とされています。GCユニバーサル社はこのGC技術によって「フリーエネルギーな世界」を実現するとまで主張しており、将来的にはエネルギー制約のない社会の実現を目指すビジョンを掲げています。

同社の発表によれば、GC技術は既に米国・韓国などで特許を取得済みの新技術であり、EV(電気自動車)用超急速充電器「GVOLTA」をはじめ様々な応用製品の開発が進められています。公式サイトや資料では、GCによってEV充電時間の大幅短縮や送電時のエネルギーロス90%以上削減、バッテリー発熱の抑制による寿命延長など、従来にない性能向上が可能になるとされています。要するにGC(God Current)とは、**「電気の常識を覆し世界を変える可能性を持つ」**とされるほどの革新的電流であり、直流・交流に次ぐ第三の電流の形態として位置づけられているものです。

 

2. GCを実現するGCユニバーサル社の主張する技術的原理

GCの技術的原理について、GCユニバーサル社は自然界で観察されるエネルギーの流れに着想を得たと説明しています。彼らの主張するポイントをまとめると以下のようになります。

  • 自然界のエネルギー流の模倣: 大規模なエネルギー移動が起こる自然現象では、従来我々が知る直流や交流とは異なる特殊な流れ方が見られるといいます。その代表例としてブラックホール、台風、雷(ブルージェット現象)などを挙げ、いずれも反時計回りの渦巻き(トルネード状)で巨大なエネルギーを運んでいると説明しています。GCはまさにこの自然界の渦状エネルギー流を電気の流れとして再現したもので、大量のエネルギーを超高効率で一気に送ることを可能にする新手法だとされています。

  • 「電気本来の在り方」の発見: 発明者である金氏(Dr. Kim)らは、「人為的なDCやACだけでなく、電気には本来あるべき自然な在り方が存在する」と仮定し約20年にわたり模索した結果、自然現象の中にそのヒントを見出したとされています。すなわち電気エネルギーの遺伝子(DNA)ともいえる本質的な流れ方を自然界から発見し、それを「GC」という形で再現したと主張しています。この“電気本来の流れ方”とは前述のように導体周囲を反時計方向に渦を巻くように電気を流す原理であり、同社はこの原理が電気伝達時の余分なロスを極限まで低減する鍵だと述べています。

  • GCジェネレータと両利点の両立: 上記原理を実現するため、GCジェネレータと呼ばれる新規デバイス(電源装置)が開発されたとされています。GCジェネレータによって自然界と同じ渦状の電流を発生させることで、変圧(電圧変換)と蓄電の両方を可能にする電気の新しい運び方が実現できたといいます。すなわちGCは**「変圧できて、なおかつ電気を貯められる」**電流であり、交流のように高い送電効率と直流のような蓄電適性を両立した“いいとこ取り”の技術だと説明されています。

  • 抵抗の劇的低減と高速充電: 同社の資料によれば、GC技術の中核は充電時の電気抵抗をほぼゼロまで減少させることにあります。電池内部で電気が移動する際の自然な状態(イオンの動きなど電気の在り方)と同じ流れ方の電流(GC)を外部から流すことで内部と“ハーモナイゼーション”(同調)を起こし、抵抗や発熱を抑制できると主張されています。その結果、充電時の熱発生が大幅に減り、発火や爆発等のリスクも低減、さらに電池劣化も抑えられるとしています。GCユニバーサル社のテストでは、例えば鉛蓄電池を通常の直流充電より20倍速く(10時間→約30分)充電でき、温度上昇はわずか3℃程度に留まったと報告されています。リチウムイオン電池でも通常より4倍速く充電可能だったとされ、いずれも従来比桁違いの充電速度と低発熱を実証したとしています。これらの成果が実現できた理由について、同社は「電池内部と外部の電流の在り方を一致させ抵抗を最小化したため」と説明しており、反時計回り渦状のGC電流が抵抗によるエネルギー浪費を劇的に減らすと主張しています。

以上のように、GCの技術的原理は自然界の渦エネルギー現象を模倣した電流波形にあり、それによって送電ロスの大幅低減と蓄電・変圧の両立を図るというものです。科学的根拠としては、電流を特殊な形で流すことで電池内部との同調現象を起こし電気抵抗が限りなくゼロに近づくといった仮説に基づいており、同社はこれを裏付けるものとして独自の実験結果や特許取得を挙げています。

 

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3. 主張原理の科学的妥当性(量子物理学の観点からの検証)

GCの原理に科学的妥当性はあるのかを、最新の量子物理学(量子力学・量子場理論)の知見も踏まえて検証します。結論から言えば、現時点で公表されている範囲のGCの主張には科学的に疑わしい点が多く、実証も不十分であると考えられます。

まず、GCが「電気抵抗をほぼゼロにする」「発熱を極小化する」といった点について、現代物理学では電気抵抗による発熱(ジュール熱)は基本的に不可避です。オームの法則やジュールの法則によれば、抵抗$R$を持つ導体に電流$I$が流れれば、発生する熱量$P$は$P = I^2 R$に比例します。抵抗がゼロでない限り電流によるエネルギー損失(熱)は生じることになり、この原理は物質の量子力学的な電子散乱現象としても理解されています。常温常圧で抵抗ゼロを実現するには超伝導状態にする以外に知られた方法はなく、仮にそれが可能な新原理が発見されれば物理学上の大発見です。GCが主張通り「ほぼ抵抗ゼロ」による大電流高速充電を常温の普通の導体で可能にしているなら、それは室温超伝導の発見にも匹敵する革命的成果ですが、2025年現在そのような成果は学術的に報告されていません。特許取得だけではその実現性は担保されず、一般に特許は技術内容の真偽を精査するものではないため、GC技術の実効性には依然として疑問が残ります。

次に、自然現象のアナロジーに関する妥当性です。GCユニバーサル社はブラックホールや台風など大きなエネルギーは反時計回りの渦で動くと述べていますが、これは科学的事実とは言い難い主張です。例えば台風の渦の向きは北半球では反時計回りでも、南半球では時計回りに回転します。エネルギー現象の回転方向は観測する慣性系や条件によって異なるもので、「全て反時計回りだから電気もその向きに流せば効率的になる」といった因果関係は物理的に根拠がありません。またブラックホールは重力による時空の渦であり電流ではありませんし、雷放電(ブルージェット)はプラズマ現象であって電線内を流れる定常電流とは本質的に異なります。量子力学・量子電磁気学の観点から見ても、電子や電流の振る舞いは既にマクスウェル方程式と量子電磁力学(QED)で極めて正確に記述されています。そこに「電気のDNA」ともいうべき未知の流れ方が存在する、という主張は現在の科学では支持されていません。確かにパルス波形や高周波を用いた特殊な充電手法によって、電池の一時的な内部抵抗低下や効率向上が得られるケースは知られています。しかしそれらも既知の電気化学的原理の延長で説明可能な範囲に留まります。GCが主張するような**「交流と直流を両立した全く新しい電流」**という概念は、理論的には「特定の周波数成分を持った時変電流(時間的に変化する電流)」に過ぎず、決して物理法則を超越する魔法の電流形態ではありません。要するに、GCの原理説明は科学というより比喩的・印象的な表現に依存しており、定量的な理論裏付けが欠如していると言えます。

総合的に評価すると, GC(God Current)の主張内容には現在の量子物理学の知見から見て多くの疑問が投げかけられます。抵抗ゼロに伴う超高速エネルギー伝達が本当に可能であれば画期的ですが、それを実証する公開データや査読付き論文は見当たりません。また自然界のエネルギー流を模倣したという説明も科学的検証を経ておらず、現状では未証明の仮説または疑似科学の域を出ていない印象です。もっとも、GCユニバーサル社は引き続き製品開発や検証を進めているようですので、今後独立した第三者による再現実験や学術界での検討が行われれば、その真偽が明らかになるでしょう。それまでは、GCは興味深いアイデアではあるものの量子物理学の常識を覆す証拠が十分示されたとは言えないというのが現時点での分析結果です。
 

参考文献・情報源: GCユニバーサル社公式サイトおよびCHAdeMO技術資料chademo.comchademo.comchademo.com、日本エレクトロヒートセンター資料jeh-center.org、他。