2025年4月2日発表の高関税政策とその市場影響

発表内容: 2025年4月2日、ドナルド・トランプ米大統領は貿易相手国すべてからの輸入品に対し史上例のない高関税策を発表しました​jp.reuters.com。この政策は「相互関税」と呼ばれ、まず全輸入品に一律10%の基本関税を課し、その上で各国が米国製品に課している関税・非関税障壁の程度に応じて国別追加関税を上乗せするという内容です​jp.reuters.comjp.reuters.com。具体的な国・地域別の関税率例を挙げると:

  • 日本への関税率: 24%(=基本10% + 追加14%相当)​

  • 欧州連合(EU): 20%

  • 英国: 10%

  • 中国: 既存の対中関税20%に加えさらに**34%**を上乗せ(合計約54%相当)​

主要同盟国であるカナダ・メキシコについては既に多くの製品で25%の関税を課しているため今回の追加関税対象から除外するとされました​。ホワイトハウスによれば、一律10%関税は4月5日発効、国別追加分は4月9日から約60か国に適用される予定でした​。トランプ大統領は記者会見で「何十年もの間、米国は友敵を問わず略奪されてきた。これは米国の独立宣言だ」と述べ、「貿易赤字は国家緊急事態だ」とまで強調し、自国産業保護と「米国第一」を掲げています​。この関税発動により、米国の実効輸入関税率は2024年時点の2.5%から一気に22%に跳ね上がる見通しであり​、約100年ぶりの高水準とも報じられました​。

市場への影響: 発表直後から世界の金融市場は動揺しました。会見後、米株先物は急落し、2月中旬以降この日までに米国株式市場では約5兆ドル(約670兆円)の時価総額が消失する事態となりました​。市場参加者は米中を含む各国との全面的な貿易戦争への発展を懸念し、リスク資産を売り込む動きを強めました。実際、トランプ政権の高関税計画発表を受けてウォール街やエコノミスト、一部与党議員から強い批判も噴出し、「史上最大の逆進的増税だ。市場を暴落させ労働者家庭を痛めつけるだけだ」との指摘も上がりました​。主要貿易相手国も反発し、例えば中国政府は即座に報復措置を表明しています​。中国は4月10日以降、米国からの全輸入品に一律34%の追加関税を課すと発表し​、米国も対中関税率を発動直前に大幅引き上げ(34%→84%追加)で対抗するなど、エスカレーションが進みました​​。こうした報復合戦への懸念から欧米株も急落し、報道によれば中国の報復発表を受け米株価指数先物は2%以上下落、欧州株式市場も4%以上の急落に見舞われています​。

日本市場も例外ではなく、発表以降リスク回避の売り圧力が顕著になりました。日経平均株価は発表翌日から下落基調となり、関税発動直前の4月9日には前日比1298円安(約4%安)の31,714.03円と急落して取引を終えました​。この日は取引中に下げ幅が一時1,700円を超える場面もあり、全面安で東証プライム全33業種が下落する荒れた展開でした​。背景には「相互関税」の米時間9日発動(日本時間同日午後)という事実が伝わり警戒感がピークに達したことがあります​。特に輸出株や素材株を中心に売り込まれ、投資家の不安心理が顕著となりました。

 

 

 

2025年4月10日関税撤回(部分停止)発表とその影響

撤回発表の事実: 激震に見舞われた市場や各国の反応を受け、トランプ大統領は米東部時間4月9日(日本時間10日未明)、当初打ち出した相互関税政策の一部を急遽見直す方針を発表しました​。具体的には、全ての国・地域に対する追加関税(国別上乗せ分)の適用を90日間停止し、一律10%の基本関税のみ維持するというものです​。この90日停止措置は即時発効され、対象国とは個別に交渉を続けると表明されています​。ただし同時に、中国に対しては報復措置への対抗として追加関税率を一気に125%まで引き上げ、即時発動すると宣言しました​。対中関税は発動したばかりの104%からさらに引き上げられた形であり、中国の報復(34%の対米関税)に対抗する50%分上乗せした格好です​。つまりトランプ政権は「同盟国・友好国への関税は一時棚上げする一方、報復に出た中国は徹底的に圧迫する」という方針転換を示したことになります​​。ホワイトハウス報道官も「各国それぞれの状況に合わせて引き続き交渉する。報復しなかった国は報われる」と説明し、中国には高関税適用で臨む姿勢を明確にしました​​。

市場への影響: この発表は世界の株式市場に安堵感をもたらしました。翌10日朝の東京株式市場では、懸念後退から買い戻しが殺到し日経平均は前日比2639円高の34,353.17円と急反発しました​。下落前の心理的節目であった34,000円台を一気に回復し、一時上げ幅は2,800円を超える場面も見られたほどです​。各国への高関税適用見送り(少なくとも当面)は、過度に悲観的になっていた投資家心理を大きく改善させました。特に米関税率24%が適用されるはずだった日本にとって、この90日猶予は企業業績への直撃リスクが先送りされたことを意味し、自動車や電機など主力輸出株を中心に軒並み大幅高となりました​。

米国市場でも、貿易戦争全面化への恐怖がいくらか和らいだとみられます。報道時点で詳細な米株価指数の動きは不明ですが、相互関税一部停止の報により米株式市場も下げ止まりや反発の兆しを見せた可能性が高いです(実際、日本市場の大幅高はその先行指標といえます)。一方で対中強硬姿勢は維持されたため、ハイテク株など中国市場との関連が深いセクターには引き続き不透明感が残りました。また為替市場では安全資産とされた円の独歩高傾向が是正され、リスクオンに振れたことでドル円相場も持ち直す動きとなったと考えられます(円高進行が一服し、輸出企業にも追い風)。総じて、トランプ大統領の部分的な関税撤回表明は世界経済の最悪シナリオ回避と受け止められ、直近の市場には安心感と買い戻しによるリリーフラリーをもたらしました​。

 


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関税撤回の背景分析:計画されたシナリオか想定外の展開か

今回の高関税発表(4月2日)から一転して一部撤回(4月10日)に至るまでの経緯について、その背景にトランプ大統領の戦略的意図があったのか、それとも想定外の事情が介在したのかを考察します。

まず、トランプ政権内部からは**「初めから交渉のための計画通りのシナリオだった」**との声も上がっています。ベッセント財務長官は追加関税90日停止措置について「各国を交渉テーブルに着かせるための当初からの計画だった」と述べました​。実際トランプ大統領自身も、「報復しなかった国々とは関税の一部を90日停止する一方、報復に動いた中国には厳しく臨む」という方針転換を記者団に説明しています​。このことから読み取れるのは、当初の高関税カード自体が各国に譲歩を引き出すための交渉戦術(ブラフ)であり、一定のタイミングで緩和措置を取るシナリオが用意されていた可能性です。「まず最大限の圧力をかけ、その後に取引(ディール)を引き出す」のはトランプ氏の一貫した交渉スタイルともいえます。事実、同氏は2018~19年の貿易交渉でも高関税をちらつかせて相手に譲歩を迫り、土壇場で撤回・延期する対応を度々見せました。例えば2019年にはメキシコに対し不法移民対策が不十分なら全輸入品に段階的関税を課すと脅しましたが、メキシコ政府が譲歩(国境警備強化)すると直前になって関税発動を「無期限停止」とツイートし撤回しています​。このように、“恫喝して譲歩を勝ち取ったら引く”というパターンはトランプ氏の過去の言動から十分に想定できるものでした。

しかし一方で、想定外の副作用が今回の方針転換を後押ししたことも否めません。トランプ大統領は追加関税停止を発表する際、「2日の発表以来、市場がパニックに近い状態に陥ったことが自分の判断に影響した」と述べており、市場混乱が撤回決断の一因だったことを認めています​。実際、関税発表直後から株価急落・批判続出となった事態は政権内でも想像以上のリスクと受け止められたようです。ホワイトハウスは連日ウォール街や自国議員からの苦情対応に追われ​、4月8日にはトランプ氏自ら共和党資金集めパーティーで「金融市場の反応には注意を払っている」と述べ懸念払拭に努める一幕もありました​。与野党双方から関税撤回を求める声も強まり、野党民主党の上院議員は広範な関税措置の撤回を求める決議案まで提出する構えを見せています​。こうした内外からの予想外の圧力が急速に高まったことも、トランプ政権が一時的退却を余儀なくされた重要な背景でしょう。

総合すると、今回の関税撤回(90日停止)は**「計画された戦略的一時後退」と「市場・政治的プレッシャーへの緊急対応」の両面があったと推測できます。トランプ氏の性格や過去の交渉傾向から見て、当初より高関税を交渉カードとして使い、一定の譲歩や交渉入りを引き出した段階で緩和するシナリオ自体は彼の「想定内」だったと思われます​​。実際彼は「関税発表が各国からそれまで得られなかった譲歩を引き出すきっかけになった」と自賛しています​。しかし同時に、株式市場のパニック的反応や足元の経済への悪影響の深刻さは予想を超えた可能性が高く、政権内強硬派ですら軌道修正を認めざるを得ない状況に追い込まれたと言えます。トランプ氏周辺でも「関税はあくまで本気であり単なる交渉手段ではない」と強調する声(ナバロ大統領補佐官)​がある一方、蓋を開けてみれば短期間で方針変更を強いられた事実は重く、想定外の展開だった側面も否めません。つまり「計画していた道筋ではあったが、実行スピードと内容は市場の混乱によって修正を余儀なくされた」**というのが実情に近いでしょう。

今後の展望:短期・中期で予想される追加政策と市場への影響

トランプ大統領による一連の関税政策の混乱を踏まえ、今後短期的(~3ヶ月)および中期的(~1年半)に予想される同氏の追加政策や発言、それに伴う日経平均および米国株式市場への影響を推測します。

短期的展望(~3ヶ月)

  • 同盟国との交渉と関税再発動リスク: 今後90日間(7月初旬まで)は停止措置の猶予期間となり、その間に日本や欧州など主要貿易相手国との個別交渉が進展する見通しです。トランプ大統領自身、「日本や韓国など同盟国が関税措置緩和を求めて交渉に入っており、オーダーメード方式のディール協議は非常に順調だ」と述べており​、裏では各国が米国の要求(自国の関税・非関税障壁の削減など)受け入れに向けた調整を進めていると考えられます。短期的にはこれら二国間協議の進捗に関する発言が市場を大きく動かすでしょう。仮に日本やEUが譲歩し米国と部分的な合意に至れば、対象国への高関税恒久回避が見込まれ安心感から日経平均や欧州株は一段と上昇する可能性があります。一方、交渉が難航し90日後に再び関税発動猶予が切迫すれば、マーケットは再度緊張感を強めかねません。特に日本市場は輸出依存度が高いため、7月頃に再度関税が課されるリスクが高まれば自動車・電子部品など中心に株価下落圧力がかかるでしょう。

  • 新たな関税カードの投入: トランプ大統領は今回の措置停止と同時に「以前から計画していた医薬品の輸入関税を近く発表する」と表明しており​、短期的に追加の関税措置発表が続く可能性があります。報道によれば、医薬品以外にも木材や半導体への関税賦課方針が示唆されています​。したがって今後数週間から数ヶ月で、これら特定分野に対する新関税政策が打ち出されることが考えられます。例えば医薬品関税が現実となれば、米国が多くを輸入に頼る医薬品価格の上昇を招きかねず、ヘルスケア産業や輸出国(欧州など)に影響が及ぶでしょう。市場面では製薬セクターの株価下落や、インフレ加速懸念による米国債利回り上昇など局所的な波乱要因となり得ます​。半導体関税に関しては、米国のハイテク産業や日本・韓国・台湾などサプライチェーン上の企業に打撃となる可能性があり、関連銘柄の株価ボラティリティが高まるでしょう。もっとも、これら追加関税措置は当初の広範な相互関税ほど経済全体に与える衝撃は大きくないと見られ、マーケット全体への波及は限定的との見方もあります(実際、特定セクターへの関税は影響範囲が絞られるため)。

  • 米中対立の行方(短期): 短期的には米中貿易戦争の膠着状態が続くと予想されます。中国は強硬姿勢を崩しておらず、「最後まで戦う意思と手段がある。米国は自ら蒔いた種の報いを受けることになる」との公式声明を出して対抗する構えです​。トランプ政権も中国に対しては追加関税125%を即時発動するなど強硬策を取ったばかりであり、当面歩み寄りは期待しにくい状況です。従って今後3ヶ月の間に米中が貿易協議再開や妥協に動く可能性は低く、高関税が継続したままの緊張状態が続くでしょう​。これにより、米中双方の経済指標の悪化や企業業績下ブレが顕在化すれば、それがまた株式相場の重石となる可能性があります。特に米国株では、中国市場への売上比率が高いハイテク・産業株に業績懸念がくすぶり、慎重な値動きが続くかもしれません。一方でトランプ大統領は株価動向に敏感なため、仮に米中対立が原因で株式市場が再び急落するような局面では、ツイッターや記者会見で突如融和的な発言(例えば「中国はディールを望んでいる。いずれ理解するだろう」​といった発言の具体化)を行い市場を支える可能性もあります。要するに、短期では米中対立による下押し要因と、それに対抗するトランプ氏の**リップサービス(口先介入)**による上昇要因がせめぎ合う不安定な相場展開が予想されます。

  • その他の短期要因: 上記以外にも、トランプ大統領の突発的な発言・行動リスクは短期的に常に存在します。例えば為替に関し「各国の通貨安誘導は容認しない」と発言したり、FRBの金融政策に公然と介入するようなコメントを出したりすれば(過去にも利下げ圧力をかけた前例があります)、為替相場や金利動向を通じて日米株に影響を与えかねません。また、安全保障や地政学リスクに絡めて経済措置を講じる可能性もあります(例:特定国への経済制裁や輸出規制の強化など)。ただしこうした要素は予測が難しく、本質問の主題である関税政策の延長線からは一歩外れるため、ここでは深追いしません。総じて短期的には、関税交渉の行方と追加関税の内容が焦点となり、それらに応じて日経平均も米国株式市場も神経質な値動きを続けると考えられます。

中期的展望(~1年半)

  • 貿易交渉の決着と新たな貿易協定: 1年~1年半のスパンでは、米国と主要国との貿易関係に新たな枠組みや妥協点が見出される可能性が高いです。トランプ政権内の一部には「関税圧力によって相手国が対米貿易障壁の削減に応じ、その見返りに米側も関税率引き下げを容認することになるだろう」という見通しが示されています​。実際、90日間の間に日本や欧州とはある程度の譲歩を引き出し、二国間の貿易合意(ミニ合意や追加協定)が成立する可能性があります。その場合、米国は当初予定した相互関税を正式に撤回し、代替として相手国からの市場開放策や輸入拡大(例えば農産品の関税削減、日本からの防衛装備品の追加購入など)を得る形となるでしょう。こうした**「ディールの成果」をトランプ大統領は国内向けに誇示し、自身の政策の成功としてアピールするはずです​。日本にとっては高関税リスクが恒久的に消滅し貿易環境が安定化するため、中期的に企業業績見通しが改善し株価にもプラスです。日経平均は貿易摩擦という重荷が外れることで、本来の企業実力や経済状況を素直に反映しやすくなり、上昇基調に戻る可能性があります。もっとも、これら合意を引き出すまでの道のりで駆け引きが続けば、その過程で一時的な摩擦再燃や市場変動**も起こり得ます。合意成立の報道が出れば株高要因、逆に交渉決裂や再関税示唆が出れば株安要因となり、中期的にも交渉の節目節目で相場は揺さぶられるでしょう。

  • 米中貿易戦争の趨勢: 最大の不確定要素は米中間の貿易対立が中期的にどう推移するかです。現時点では強硬姿勢を貫く両国ですが、長期化すれば双方の経済に深刻な打撃となるのは避けられません​。フィッチの試算にもある通り、関税率が長期間高止まりすれば多くの国で景気後退に陥る可能性が高い​ため、米国自身も無傷ではいられないでしょう。トランプ大統領は2026年の中間選挙や自身の再選(2028年)を見据えて経済を好調に維持したいはずであり、株式市場の低迷や景気悪化が長引くことは政治的に避けたいシナリオです。従って、中期的には中国との間で部分的な妥協が図られる可能性があります。例えば2025年末から2026年にかけて、双方が歩み寄り「第二段階の合意」や休戦協定のようなものを模索する展開です。トランプ氏は「中国はディールを望んでいるはずだ」と繰り返し発言しており​、中国側も経済減速を前に米国からの一部関税撤回を引き出すため裏交渉を進めるかもしれません。その結果、輸入数量目標の設定や知的財産保護の約束など限定的な内容でも合意が成立すれば、米国は対中関税の一部引き下げ・撤回に踏み切る可能性があります。これはちょうど第1次政権末期の「米中第1段階合意」(2020年1月)に類似した展開です。そのシナリオでは、世界経済にとって最大の不安要因だった米中対立が和らぐため、株式市場に大きな追い風となります。日経平均や米国株式のみならず、新興国市場も巻き込んだグローバルな株価上昇局面が訪れる可能性があるでしょう。

もっとも、米中があくまで妥協せず対立を深化させるリスクも残ります。中国は「自給自足と内需拡大で対抗できる」と強がり、米国も「中国こそ国際貿易秩序への最大の攻撃者だ」(ベッセント財務長官)​として一歩も引かない場合、関税合戦は恒常化します。その場合、両国間の貿易は激減しサプライチェーンの分断が進み、世界経済は低成長の泥沼に陥る恐れがあります。企業は生産拠点の移転や調達先多元化を余儀なくされコスト増大、生産性低下に苦しむでしょう。株式市場も慢性的な低迷が続き、特に輸出依存度の高い日本株や多国籍企業の多い米株は中期停滞ないし弱気相場に陥るシナリオも否定できません。ただし、このような状況になればさすがに米国内でも政権批判が高まり、トランプ大統領が軟化せざるを得なくなる可能性が高いため、完全に決裂したまま1年半も経過する展開は現実的ではないでしょう。むしろ現実的には「中国を除く各国とは小康状態、中国とは対立を抱えつつも局所的に取引」という形に落ち着くのではないかと考えられます。

  • 内政要因と経済政策の組み合わせ: 中期的には、トランプ政権が貿易以外の経済政策でも市場に影響を与える可能性があります。関税収入自体は「米政府の資金源になる」とトランプ氏は主張していますが​、関税で痛手を負う産業や消費者への配慮も求められるでしょう。第1次政権時には農家への補助金支給や企業減税などの手を打ったように、今回も減税策第二弾インフラ投資法案など景気刺激策を打ち出す可能性があります。仮に2025~2026年に景気が減速すれば、共和党主導で大規模減税が提案されるかもしれません(資本減税や中間所得層減税など)。減税が実現すれば企業収益増加が見込め株式市場にはプラス材料です。また、FRB(米連邦準備制度)への介入圧力も引き続き強まるでしょう。インフレ動向次第ではありますが、トランプ大統領は低金利を好む傾向があり、必要とあれば公然と利下げ要求をする可能性もあります。仮にFRBが景気下支えのため利下げに転じれば、これも株式には追い風となります。逆に関税の物価押し上げ効果でインフレが加速しFRBが利上げを余儀なくされれば、金利上昇で株価バリュエーションが抑制されるリスクもあります。

政治日程的には、2026年秋の中間選挙が大きな節目です。トランプ氏は「中間選挙で圧倒的勝利を収めるつもりだ。本気でそう信じている」と述べており​、それまでに経済面で成果を示したいと考えているはずです。したがって2026年前半までには貿易紛争をある程度収束させるか、あるいは国内向けに勝利と映る形に転換している可能性が高いです。仮に株式市場が低迷したままでは選挙戦略上不利なため、政権としても株価維持策を講じる圧力が強まるでしょう。極端な場合、トランプ氏がFRB議長の交代や為替介入示唆といった荒療治に言及する可能性もゼロではありません。これらは市場心理を揺さぶる要因となり得ますが、実行となれば法的・制度的ハードルも高いため、あくまで発言レベルで市場を動かすカードとして使われる可能性が高いです。

総じて、中期的にはトランプ大統領の追加政策・発言は**「交渉の妥結による緊張緩和」と「選挙を見据えた景気テコ入れ策」がキーワードとなりそうです。日経平均も米国株式市場も、このシナリオに沿って乱高下を経ながらも徐々に安定**を取り戻す展開が期待されます。もっとも、トランプ氏は常に予測不能な一面を持つため、今後も我々は彼の言動に注意深く目を配りつつ、市場リスクと機会を判断していく必要があるでしょう。


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参考文献・情報源: jp.reuters.comjp.reuters.comjp.reuters.comjp.reuters.comjp.reuters.comjetro.go.jpjetro.go.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpbloomberg.co.jpjp.reuters.comjp.reuters.compolitico.com