1. 2025年3月末までの投資状況

静岡県浜松市郊外に住む山本健太郎(63歳)は、定年退職後にパートタイムとして地域センターで働いている。公務員生活を終え、退職金(約2,500万円)の一部をNISAを活用して投資することを決めたのは、銀行主催のセミナーに参加したのがきっかけだ。

長期・分散・低コスト」をモットーに、国内外の株式インデックスファンドや配当重視型ETFに投資を行ってきた。初期には個別株で失敗し、一時的に10%ほどの損失を出したこともあったが、それを機に堅実なインデックス投資に切り替える。結果として、投資額750万円は約1.5倍の1,125万円まで増えた。

2025年3月末、いつものように週1回のポートフォリオチェックを終えた山本は、ほくほく顔でパソコンの画面を見つめていた。 「退職金のうち投資に回した分がここまで増えるとは。まさか自分がこんなに資産運用で成果を出せるなんて、人生わからんもんだなぁ。」
そうつぶやく横で、妻が「いくら増えてもあんまり無茶はしないでよ」と声をかける。山本は笑顔で応じた。
「もちろんさ。元本を割らないように、守りながら増やすがモットーだから。」


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2. 2025年4月2日の米国関税ショックによる影響

ところが、4月2日の朝刊には、見出しで**「米国が突如として大幅な追加関税を発表」**と大きく取り上げられていた。その日の午後、山本は地域センターの事務室で働いている最中も、心のどこかで嫌な予感がして落ち着かない。休憩時間にスマホで株価を確認すると、すでに国内外で株式相場が急落していることを知る。

「え……下落幅、こんなに大きいのか?」
山本はこれまで幾度か市場の下落は経験してきたものの、今回のスピードと規模は予想を超えていた。特に新興国株式の比率も高めにしていたオールカントリー系ファンドが大きく下落し、配当重視型ETFも一気に値を下げる。

帰宅後、PCを開いてさらに詳しく状況をチェックすると、自分のポートフォリオがすでに10%以上目減りしていることがわかった。金額にして100万円を超える含み益の減少だ。今まで1.5倍に膨らんでいた資産も、一夜にして大幅に縮んでしまったことになる。妻も「こんな急落、珍しいわねぇ」と驚きを隠せない。


 

3. 一時的に精神的にもかなり落ち込み、健康面にも影響が出ている状況

翌週にかけて株価の乱高下は続いた。山本の資産は数日で200万円近く落ち込んだ時期もあり、一気に元に戻る見込みもないまま、ニュースでは連日「関税ショック」や「貿易摩擦拡大」の文字が踊る。

山本は以前から高血圧気味で定期的に通院していたが、この急落によるストレスで血圧が更に上昇してしまい、主治医から「ここ最近、血圧の数値が悪いようですね。何かストレスはありませんか?」と心配されるほどになった。

夜も株価のことが頭を離れず、寝つきが悪い。早朝に目が覚めてしまい、朝から倦怠感がひどい。囲碁サークルに顔を出しても集中力が続かず、挨拶程度で切り上げて帰ることが増えた。挙句の果てに、楽しみにしていた家庭菜園すら「どうせ何をやっても上手くいかん……」と投げやりになりがち。妻にも冴えない顔ばかり見せてしまい、家の中もどんよりとした空気が漂っていた。


 

4. ショックから回復するきっかけ(投資・生活・家族関係・趣味・健康面での変化)

そんなある日、山本は昔の職場の仲間から「久々に投資勉強会をやろう」と連絡を受けた。正直、気乗りはしなかったが、気分転換にと参加を決めることに。

勉強会の場で、元同僚たちは言葉をそろえて**「今回の相場下落は確かにキツイけど、長期で考えれば乗り越えられるはずだよ」**と励ましてくれた。定年後に投資で成果を上げてきた仲間の一人が、リーマンショックやコロナショックなど過去の急落時のチャートを示しながら語る。
「そのときは絶望的に見えても、数年後には立ち直ってるんだ。確かに今回は関税が絡むから時間はかかるかもしれないけど、投資は大局を見ないとね。」

山本はハッとした。
「そういえば、俺は守りながら増やすって方針だったよな。焦って今、全部手放すなんて最悪の判断かもしれない。老後資金を守らなきゃと思いすぎて、冷静さを失っていた気がする。」

勉強会後の懇親会でさらに仲間と語り合い、久しぶりに大きな声で笑う時間を過ごした。翌朝、目覚めたときに気づく。
「なんだか、身体の調子が少し楽になったような……」

それから山本は、**“自分がコントロールできることだけに注力する”**という姿勢を取り戻していく。たとえば、毎朝少し早起きして軽いストレッチと散歩を始め、血圧の改善を意識。家庭菜園も「土いじりはリフレッシュになるはず」と思い直し、苗の植え替えや土の改良などコツコツ進めるようになった。

妻にも改めて気持ちを伝える。
「実は、相場が下がったことばかり考えて、一人で悶々としてた。ごめん。これからはもう少し長い目で見て、無理はしないよ。」
妻は苦笑しながら「もう、しっかりしてよね」と返してくれた。徐々に夫婦の会話も増え、家の中に明るい空気が戻ってくる。


 

5. そして・・・

そんな頃、米国の関税政策に対する各国の協調姿勢がニュースで報じられ始めた。世界各地で対話の機運が高まるなか、株価も徐々に不安定な状態から持ち直しに向かう兆しを見せる。

もちろん、投資資産が数週間でいきなり元に戻るわけではない。しかし、山本は週1回のポートフォリオチェックを続けながらも、むしろ**「配当重視型ETFを少し買い増してみるか」**と、余剰資金を活用し始めた。下落局面で評価額が減ったのを「バーゲンセール」と捉え、慎重ながらもチャンスに変えようと考えたのだ。

そのかいもあって、関税ショックの影響が落ち着いてきた夏頃には、山本のポートフォリオは以前の1.5倍に届かないまでも、ほぼ回復といえるレベルまで持ち直してきた。さらに配当金も堅調に入り続け、月3万円の再投資を淡々とこなす日常に戻りつつある。

家庭菜園は、土壌改良が功を奏して、今年はトマトもナスも豊作。囲碁サークルも毎週気持ちよく打ち込めるようになり、久々に孫を連れて温泉旅行に行く計画も立てている。心身の調子も上向きで、主治医からも「この頃いい数値が出てますね。何かストレス解消法を見つけましたか?」と笑顔で言われ、山本もほっと胸を撫でおろす。

「ショックはあったけど、結果的に投資仲間や家族とのつながりを再確認できたし、健康管理の大切さも改めて痛感できた。長期分散を信じてよかったな。」
そう呟く山本の顔には、先月まで見られなかった晴れやかな表情が浮かんでいる。

最終的に、山本健太郎は投資も健康も家族関係も安定させ、ハッピーなセカンドライフを取り戻した。 これからも焦らず、無理せず、守りながら増やす投資を続けていくつもりだ。下落局面が訪れても、それも一つの学びやチャンスだと、彼は今なら胸を張って言える。


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エンディング

4月2日の関税ショックで大きく資産を減らし、精神的にも健康面にもダメージを受けた山本健太郎だったが、投資仲間の助言や自身の投資方針を思い出し、長期分散投資の哲学を再確認することで一歩ずつ回復。家庭菜園や囲碁サークルなどの趣味を再び楽しみ、妻との会話を取り戻し、配当金の再投資を継続して最終的にはハッピーな日常を取り戻すことができたのである。