トランプ関税発表によるビットコイン価格変動(FACT調査とメカニズム分析)

2025年4月2日(米国時間)にドナルド・トランプ大統領が「相互関税」を含む大規模な関税政策を発表しました​。発表内容は、全ての対米輸入品に一律10%の関税を課し、特に外国製自動車に25%の関税、中国に34%、EUに20%など国別の追加関税を即時導入するというものでした。このニュースを受けて**世界の金融市場はリスクオフ(安全資産志向)**に転じ、株式市場が急落する一方で安全資産の金価格が急騰しました​。

ビットコイン(BTC)の価格もこの関税発表直後に大きく変動しました。発表当初、式典の序盤では一時的にビットコイン価格は上昇しましたが、詳細な関税率が明らかになるにつれて下落に転じ、記事執筆時点(4月2日深夜)で価格は約8万6000ドルまで後退し、発表前から約1%安となりました​。これは発表前後の短時間で見れば小幅な下落に留まったものの、ビットコインが安全資産として買われる動きは限定的で、短期的にはリスク資産として株式市場と同様に売られる圧力を受けたことを意味します。実際、同じタイミングで米国株のナスダック100指数は-2.3%、S&P500指数は-1.7%と急落し、伝統的な安全資産である金は1オンス当たり3200ドル弱という史上最高値を更新していました​。この対照的な動きから、ビットコインは短期的ショックでは依然として「リスク資産」とみなされていることが読み取れます​。

特に3月初旬時点で金は年初来+10%上昇していたのに対し、ビットコインは-10%下落しており、短期的な混乱下ではビットコインより金が選好されたことが分かります。

 

関税発表直後のマーケットでは、暗号資産トレーダーも敏感に反応しました。発表を控えた3月末時点から既にビットコインの大口投資家はオプション取引で下落へのヘッジを強めており、4月初旬満期のプットオプション(売る権利)の建玉が大きく増加していました​。例えば、権利行使価格8万ドルのプットオプション建玉が最多となり、4月4日満期のプット・コール比率が1.4に達するなど、マーケットは関税発表によるBTC価格下落リスクに備えていた状況です​。実際、3月28日にはビットコイン価格が一時4.2%安の8万3,637ドルまで下落し、同日にイーサリアム(ETH)やリップル(XRP)など主要アルトコインも約7%の急落を見せました​。このように、関税発表前から警戒感が高まり投資家心理は弱気となっていたため、発表後もビットコインは株価と共にリスクオフ売りにさらされたと考えられます​。

 

しかし、ビットコインの下落幅は比較的限定的でもありました。4月2日の発表後、ビットコインは一時的に急落したものの約1日で反発し、一時1200万円(約8万5千ドル前後)を割り込んだ後に持ち直す展開となっています​。実際、発表翌日の4月3日朝にはビットコインは心理的節目の10万ドル(約1,557万円)を割り込み、一時9万1,200ドル(約1,420万円)まで急落しましたが、その後買い戻しが入り下げ渋りました​。ビットコインが比較的下げ止まった背景には、米国債利回りの低下や将来的な金融緩和期待、そしてドルからの資金逃避といったマクロ要因がビットコインを下支えしたためと分析されています​。つまり、関税ショックによる景気後退懸念から米長期金利が低下し、将来的なFRBの利下げ・量的緩和への期待が高まったことで、法定通貨(ドル)よりもビットコインなど代替資産に資金を移す動きが一部で起きたということです​。このように、ビットコインは短期的にはリスク資産的な売りを浴びつつも、同時に「デジタルゴールド」としての資金流入も受けて下値を支えられるという二面的な動きを見せました。

 

一方、アルトコイン市場への影響はビットコイン以上に大きく、リスクオフ時の脆弱性が浮き彫りとなりました。4月3日時点で主要アルトコインは軒並み20%前後の急落となり、例えばイーサリアム(ETH)は前日比-18%の約2,500ドル、XRPも-22%の約2.2ドルまで急落しています​。アルトコイン市場はビットコインに連れ安する形で大幅下落しており、投資家が相対的に安全とみなされるビットコインや現金・金などへ資金を移動させ、リスクの高いアルト資産から資金を引き揚げたことが原因です​。このように、関税発表は暗号資産市場全体に急激な調整を引き起こしましたが、下落率はビットコイン < イーサリアム < XRP他アルトコインの順で大きく、ビットコインの相対的な底堅さが確認できる結果となりました。

以上のFACT調査から、関税発表によるビットコイン価格変動のメカニズムとして以下が整理できます。

  • リスクオフによる売り圧力: 巨額関税導入=世界経済の不確実性増大というニュースにより、株式と同様にビットコインも短期的には売り込まれた。特にアルゴリズム取引や機関投資家はリスク資産全般をカットする動きを見せ、BTCも例外ではなかったと考えられます。

  • 安全資産との比較: 金価格が急騰したのに対しBTCは下落したことから、現状ではビットコインは真の「安全資産(避難先)」とはみなされていない側面があります​。投資家の多くは依然として金や債券など伝統的資産をリスク回避先と考えており、ビットコインは「デジタルゴールド」と呼ばれつつも短期的ボラティリティの高さから安全資産としては半信半疑な位置付けであると言えます​

  • 長期価値への期待と下支え: 同時に、関税戦争によるインフレ懸念(関税は物価上昇圧力となる)やドル安リスクも意識され、長期的な価値保存手段としてのビットコインに資金を移す動きも見られました​。特に将来的な金融緩和やドル減価へのヘッジとして、機関投資家の一部や富裕層がビットコインを買い増すことで下落幅が限定的になった可能性があります​

  • 市場参加者のポジション調整: 発表前からデリバティブ市場でプットオプションの建玉増加が観測されていた通り​、多くの投資家がイベントリスクに備えていたため、いざ急落してもある程度織り込み済みでパニック売りが抑えられた側面もあります。実際下落後は比較的早期に買い戻しが入り反発しており​、ヘッジが功を奏した参加者が押し目買いに動いたと考えられます。

以上が、トランプ大統領の関税発表が引き金となったビットコイン価格変化の事実関係とその背後にあるメカニズムの分析です。

 

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『トランプ関税ショック』 市場を揺るがす通貨戦争と投資家の分析:株式・暗号資産の急落から読み解く、保護主義の代償と資産防衛戦略

仮想通貨市場の現状:BTC・ETH・XRPを中心に見る市場環境・投資家心理・需給

次に、現在(2025年4月時点)の暗号資産市場全体の状況を整理します。上記関税ショック以降、市場環境や投資家心理、需給動向には以下のような特徴が見られます。

  • マクロ経済環境と政策: トランプ政権下での関税強化により世界経済の先行き不透明感が強まっています。貿易戦争の激化は景気減速リスクを高める一方、関税による物価上昇圧力からインフレ懸念も浮上しています​。米連邦準備制度理事会(FRB)は「関税は一時的にインフレを押し上げる可能性が高い」としつつ、景気悪化が深刻化すれば利下げなど金融緩和に転じる可能性も示唆しています​。このような金融政策の転換期待は、安全資産とされる金だけでなくビットコインにとっても追い風となり得るため、市場は景気悪化によるリスクオフと緩和期待によるリスクオンという相反する力に挟まれた状態です。

  • 投資家心理: 投資家心理はやや神経質で、高ボラティリティへの警戒感が高まっています。実際、先述の通り関税発表前にはBTCのプットオプションが積み上がるなど、下落ヘッジを進める動きが顕著でした​。一方で、下落局面では押し目買いも入るなど、ディップを狙う強気派も存在しています。市場のセンチメントを示す指標では、恐怖と強欲指数が中立〜やや恐怖寄り、水準としては強気相場の熱狂から冷めつつある状態と推察されます。加えて、暗号資産市場と株式市場の相関性も引き続き高く、ビットコインはハイテク株(ナスダック100指数)と高い正の相関を保っており、金融市場の混乱時には連動しやすい傾向があります​

  • 資金流入・需給動向: ビットコインへの機関投資家資金流入はここ1年で飛躍的に増加しました。特に2024年には米国で複数の現物ビットコインETF(上場投資信託)の承認・上場が相次ぎ、メインストリームの投資マネーがビットコイン市場に流入しています。事実、BlackRock社の「iShares Bitcoin Trust (IBIT)」は2024年にローンチして以来11ヶ月で500億ドル超の資金を集め、史上最速で成長したETFとなりました​。このIBITの成功はビットコイン価格の年初来118%上昇(2024年)に大きく寄与したとされています​。こうしたETF経由の資金流入により、ビットコインの需給はタイト化し価格は2024年に大きく上昇しました。現在のビットコイン価格は関税ショック後も8万〜9万ドル台に維持されており、依然として強気相場の範疇と見る声もあります。

一方、イーサリアム(ETH)や他のアルトコインにも機関投資家の関心が広がりつつあります。2024年末〜2025年初にはイーサリアムの現物ETFも一部導入され、初月で10億ドル以上の資金流入が見られるなど、ETHへの投資枠組みも整ってきました。もっとも、ビットコインに比べると規模は小さく、アルトコイン市場全体は個人投資家主導の資金が多いため、需給はビットコイン以上にセンチメントの影響を受けやすい状況です。

  • 供給面(マイニング・トークン供給): ビットコインは2024年に予定通り半減期(ブロック報酬半減)を迎え、新規供給量が約1.8%/年から0.9%/年程度に減少しました。これにより中長期的な希少性が一段と高まっており、「インフレヘッジ資産」としての魅力が強化されています。もっとも、今回のトランプ関税にはマイニング業界も注目しており、中国など主要機器生産国からの輸入に10%の関税が上乗せされることで、米国内外のマイナーのコストが上昇する懸念もあります​マイニング収益性(ハッシュプライス)は過去最低水準に低下している中​、機器コスト増は中小マイナーには打撃となり得ます。しかし現在ビットコインネットワーク全体のハッシュレートは高水準を維持しており、供給面でのネットワーク不安は見られません。

イーサリアムは2022年の大型アップグレード「マージ(Merge)」によりPoS移行し、新規発行が劇的に減少しました。さらにEIP-1559による手数料燃焼(バーン)メカニズムの定着で、ネットワーク利用が活発な時期にはETHの**供給が純減(デフレ)**となることもあります。2025年現在までのETH総供給は概ね1.2億枚強で横ばい推移しており、需要が伸びれば供給逼迫が価格を押し上げやすい構造です。一方で、価格下落時にはステーキングされたETHの一部アンロック売却リスクなども指摘されており、需給バランスはネットワーク活用度合いと市場心理に左右されています。

リップル(XRP)は他の2資産と異なり発行上限1000億枚を一括発行済みという形で供給が存在し、その大半をリップル社が保有・管理しています。2017年以降、毎月定量(10億XRP)をエスクロー解除して市場に供給する戦略が採られており、市場への流通量は計画的に増えています。使われなかった分は再度エスクローに戻す運用で透明性を確保しつつ、市場流動性を高める狙いです​。2025年現在までに約500億枚超が市場流通済みと推定されますが、XRPの流通増加ペースは安定的なため、需給面では突発的な希薄化は生じにくくなっています。最近ではリップル社が月初に予定通りエスクロー解除を行っても、市場価格への影響は限定的で、実際2025年4月1日に5億XRPが解除された際もXRP価格(約2.16ドル)は安定推移しました​。これはリップル社の供給管理に対する市場の信頼感がある程度醸成されていることを示唆します。一方で、長期的にはリップル社保有分が市場に完全放出されるにつれ、需給バランスは純粋に実需に委ねられることになるため、XRPの実需(送金需要)の拡大が価格維持の鍵となります。

  • 規制・法制度の状況: トランプ政権への交代に伴い、米国における暗号資産規制はやや緩和ムードとなっています。証券取引委員会(SEC)は2023年以降強硬路線を取っていましたが、トランプ政権下では2025年に入り主要な暗号資産関連訴訟が和解・終結に向かっています。例えば、Ripple社とSECの訴訟は2025年3月に和解が成立し、Ripple社が5000万ドルの罰金を支払う代わりにXRPの証券性に関する争いが終結しました​。裁判所の判断(2023年7月)で**「二次市場でのXRPは証券に該当しない」と示されたことが事実上確定し、XRPの法的地位が明確化したのです​。また、SECは同時期に大手暗号資産取引所(CoinbaseやKraken)に対する訴訟も取り下げ・和解しており、規制当局が産業育成寄りの姿勢に転じつつあるとの見方があります。このような規制リスク低減**は市場に安心感をもたらし、特にXRPなど当事者だった通貨の価格にプラスに作用しました。実際、XRPは和解報道を受けて大きく上昇し、一時は時価総額で暗号資産全体の第4位に位置付けられるまで評価が回復しています。一方で、他国では引き続き規制整備が進行中であり、欧州のMiCA規則や日本の改正資金決済法など、各国の動向が市場環境に影響を及ぼす可能性もあります。

以上の現状整理から、主要通貨ごとの性格の違いをまとめると次のようになります。

  • ビットコイン(BTC): 発行上限があり希少性が高いため「デジタルゴールド」と称され、長期的な価値保存手段として期待される。一方で短期的価格は株式などと連動しやすく、安全資産とリスク資産の二面性を持つ。

  • イーサリアム(ETH): スマートコントラクトの基盤としてDeFiやNFTなどユースケースに裏付けられた需要がある。ネットワーク利用状況が価値に直結し、供給はバーン機能で調整されるため、利用が増えれば供給減による価格押上げ効果も期待できる。反面、株式市場同様に成長期待による投機的資金が多く流入し、BTC以上にリスクオン/オフで振れやすい。

  • リップル(XRP): 国際送金のブリッジ通貨という実需に基づくユースケースを持つ。取引手数料の安さ・速さから一部金融機関での利用が進みつつあり、既存金融との親和性が特徴。供給はリップル社の管理下で安定放出されており、価格は主にネットワーク採用度(送金需要)と投機資金で決定される。法規制リスクの払拭により今後は実需による安定成長が期待される。

以上を踏まえ、次章では今後の価格推移シナリオを短期・中期・長期の3つの期間に分けて考察します。それぞれの期間で、上記の市場環境と各通貨の特性を考慮しつつ、BTC・ETH・XRPがどのように推移し得るかをシナリオ形式で整理します。

今後の価格推移シナリオ

ここでは短期(~半年)、中期(1~2年後)、長期(3~5年後)の3期間に分けて、仮想通貨市場の価格推移シナリオを推定します。それぞれの期間について、市場全体の見通し主要通貨(BTC, ETH, XRP)の動きの違いに焦点を当てます。

短期シナリオ(~半年)

今後半年程度の短期では、世界的な金融環境の不透明感が続く中で、暗号資産市場は高いボラティリティを伴いながらも徐々に落ち着きを取り戻すシナリオが考えられます。

  • 市場全体の展望(短期): 直近の関税ショックの影響が一巡した後は、マーケットはFRBの金融政策や経済指標に神経質に反応するでしょう。貿易戦争の行方によっては株式市場の変動も大きく、暗号資産もそれに連動する場面がありそうです。ただし、利下げ期待やインフレヘッジ需要が下支えとなり、総崩れのリスクは限定的と見られます。短期的な価格レンジとしては、ビットコインで**$80,000~$100,000(約1,200~1,500万円)のレンジ内で乱高下しつつも、徐々に安定性を取り戻す動きが予想されます。投資家心理は依然敏感ながら、「関税ショックで最悪期は織り込んだ」との見方が広がればリスク許容度は回復**し、押し目買い意欲が勝る展開も期待できます。

短期シナリオにおける主要通貨の動きは次のように想定されます。

  • ビットコイン (BTC): 直近の乱高下を経て値動きは徐々に安定するとみられます。安全資産としての注目度が増し、一部では「有事のデジタルゴールド」として買いが入る可能性があります。ただし完全に金の代替とはみなされていないため、株式市場の反発局面では利益確定売りも出やすく、上下双方向に振れやすいでしょう​。とはいえ半減期後で新規供給が少ないため、売りが一巡すれば需給タイト化により価格は下支えされやすい状況です。短期的な投資家は$90k付近の攻防を注視しつつ、安値では機関投資家や長期ホルダーが買い増す動きが見られるかもしれません。

  • イーサリアム (ETH): ビットコインと比べボラティリティが高めに推移しそうです。これはETHがよりリスク許容度に敏感な個人投資家やアルゴリズム資金の影響を受けやすいためです。短期ではDeFiのTVL減少が示すようにネットワーク利用も低調で、価格面でもBTCに対してアンダーパフォームする可能性があります。しかし、もし相場が安定すればスマートコントラクト関連の材料(大型アップグレードや企業のブロックチェーン活用ニュースなど)が支援材料となり得ます。具体的には、直近では大規模なトークンリリースやハッキング事件などネガティブ要因が出ない限り、ETH価格はBTCの値動きを追随しつつ、上昇局面ではBTC以上に反発力を見せる展開が予想されます。目先は$2,000台後半~$3,000台前半のレンジを推移し、リスクオン時にはBTC以上の上昇率で$3,500超えを試す場面も考えられます。

  • リップル (XRP): 短期的には他のアルトコインと同様にリスクオフの波を受けやすいでしょう。実際、関税発表時にはXRPは他よりも大きく下落しました​。しかしSEC訴訟和解により長年の不透明感が解消されたことで、悪材料出尽くし感からの買い支えが入る可能性があります。短期では$2前後の水準で底堅さを確認しつつ、良好なニュース(例えば新たな銀行との提携や送金ネットワーク拡大)があれば急騰しやすい性質も持ちます。もっとも、大相場に発展するには市場全体の強い追い風が必要で、半年程度では緩やかな回復基調に留まるシナリオが現実的です。具体的には、$2を割り込めば長期支持層の買いが入りやすく、上値は直近高値圏の$3前後で利益確定売りが出やすい展開が見込まれます。

中期シナリオ(1~2年後)

1~2年後(2026~2027年頃)を見据えると、現在懸念される貿易戦争や景気後退リスクの結果が具体化し、市場サイクルが一巡していると考えられます。中期シナリオでは、一度経済が減速局面に入った後、金融緩和や景気刺激策によって再び成長軌道に戻り、それに伴い暗号資産市場にも新たな強気相場が訪れるというストーリーを描きます。

  • 市場全体の展望(中期): 2025年後半から2026年にかけて米国経済は調整局面に入り、場合によっては軽度の景気後退(リセッション)が発生したかもしれません。しかし2026年前後にはインフレ率も落ち着き、FRBは明確に利下げサイクルに転じている可能性があります。その結果、市場には再び潤沢な流動性が供給され、「緩和マネー」によるリスク資産上昇が起こりやすくなります。ちょうどこのタイミングはビットコインにとって次の半減期(2028年予定)前の蓄勢期にもあたり、機関マネーだけでなく個人投資家のマインドも強気に傾斜し始めるでしょう。したがって、2026~2027年は暗号資産市場が新たな強気相場へ移行する過渡期と位置付けられます。一時的な景気悪化で2025~26年に価格調整があった場合でも、2027年頃には主要通貨の価格は再び過去最高値に迫るか更新するシナリオが十分考えられます。

中期シナリオでの主要通貨の動きと差異は以下の通りです。

  • ビットコイン (BTC): 仮に2025年内~2026年にかけて調整局面があった場合、その後のリカバリーの先導役になるでしょう。過去の周期を踏まえると、半減期後1~2年で訪れる強気相場により、ビットコイン価格は新たな高値圏へ挑戦する可能性が高いです。2027年頃には前回高値(10万ドル付近)を明確に超え、例えば15万~20万ドルといった水準が議論されているかもしれません(強気派の予想では2025年までに25万ドルとの声もありました​)。ビットコインはデジタルゴールド的性格から中長期では最も安定した成長が見込まれ、機関投資家や一部国家ファンドのポートフォリオに正式組み入れが進む可能性もあります。その結果、ボラティリティは徐々に低下しつつ、緩やかな右肩上がりのトレンドを形成するシナリオです。中期では市場支配率(ドミナンス)も再び上昇傾向となり、ビットコインが暗号資産全体を牽引する展開が期待されます。

  • イーサリアム (ETH): 中期ではビットコイン以上に高成長が期待できます。2026~2027年にかけて、Ethereum 2.0ロードマップ上のさらなるスケーラビリティ改善(シャーディングの本格導入など)が達成され、ネットワーク処理能力が飛躍的に高まっているでしょう。それに伴い、DeFiの再興やWeb3アプリケーションの普及など、Ethereumエコシステム全体が拡大する可能性があります。もし次の強気相場で新たな技術トレンド(例えば分散型ソーシャルメディア、オンチェーントレードFi、トークン化証券市場の拡大など)が台頭すれば、その多くはEthereum上で展開されると想定されます。その結果、ETHへの需要が増大し、価格上昇率はBTCを上回る公算が大きいです。例えば、ETH価格は直近高値(おそらく数千ドル台後半)から倍増・数倍も十分あり得ます。中期的な目安として1 ETHあたり1万ドル前後が議論されても不思議ではありません。もっとも、ETHは供給無制限とはいえバーンで実質的な発行縮小も起こり得るため、需要増に対して価格弾性が高い(価格が上がりやすい)点に留意が必要です。他方で競合のL1チェーン(例:Solanaや新興のブロックチェーン)が台頭した場合、市場シェアを奪われるリスクもありますが、おそらく中期ではEthereumが依然としてスマートコントラクト領域の覇権を維持しているでしょう。

  • リップル (XRP): 中期的には実需の伸びが鍵となります。SEC問題が解決したことで、米国市場でもXRPの取り扱いが正常化し、PayPalなど主要プラットフォームでの売買再開や、米系企業による国際送金への試験導入が進む可能性があります。さらに、世界的にもSWIFTの代替や補完手段としてRippleNetの採用が拡大し、国際送金インフラの一部としてXRPが定着すれば、それ自体が価格の安定成長要因となります。中期では他の仮想通貨ほど劇的な価格上昇は見込めないとの見方もありますが、逆に言えば暴落リスクも相対的に低減するでしょう。XRPは大量の流通供給量があるため、一気に希少化して高騰するシナリオは考えにくいですが、送金需要増に合わせて徐々に価値が上がる緩やかな上昇曲線が描かれる可能性があります。例えば2027年頃までに$5(約600円)前後の水準まで成長し、時価総額でも上位を維持するといった展開が予測されます。また中期には各国中銀デジタル通貨(CBDC)が普及期に入り始める可能性がありますが、Ripple社は各国中銀との協業も模索しており、XRPが異なるCBDC間のブリッジ通貨として活用されるような展開になれば、新たな需要創出となり得ます。ただしこれはまだ不確定要素が多く、中期シナリオではXRPは安定成長・市場平均並みの上昇を遂げるという保守的な見通しとしておきます。

長期シナリオ(3~5年後)

3~5年後(2028~2030年頃)になると、暗号資産市場は現在とは比較にならないほど成熟した段階に入っている可能性があります。長期シナリオでは、暗号資産が世界経済に広く組み込まれ、多くの人々や機関にとって当たり前の資産クラス・技術基盤となる未来を想定します。その中で、ビットコイン・イーサリアム・XRPそれぞれが果たす役割と価格動向を展望します。

  • 市場全体の展望(長期): 2030年前後には、ブロックチェーン・仮想通貨が社会に浸透し、インターネットの次の基盤技術として位置付けられているでしょう。金融インフラにおいても、伝統金融機関がブロックチェーンを活用し、各国のデジタル通貨や証券のトークン化が一般化している可能性があります。そのような環境下で、ビットコインや主要アルトコインは確固とした地位を築いていると期待できます。マクロ的には、2028年頃にはビットコインの次の半減期が訪れ、供給増加率はさらに低下(約0.5%/年以下)します。また2028年は米国大統領選(トランプ政権の次)も重なり、規制方針に変化があるかもしれません。しかし一度根付いた資産クラスを完全に排除するのは現実的でなく、各国とも規制と保護のバランスを取りつつ暗号資産を容認しているでしょう。長期では、新興国を中心にビットコインを法定通貨として採用する国が増えたり、株式や不動産の価値をブロックチェーン上で表すトークンエコノミーが本格化したりと、暗号資産の需要母地は飛躍的に拡大していると予想されます。その結果、暗号資産市場全体の時価総額は現在の数倍規模となり、主要銘柄の価格もそれに応じた成長を遂げているでしょう。

長期シナリオでの各通貨の展望は以下の通りです。

  • ビットコイン (BTC): 5年後、ビットコインはデジタルゴールドとしての地位を確固たるものにしている可能性が高いです。2100万枚という供給上限に近づきつつあり、新規マイニング供給はごくわずかになります。世界の富裕層や機関投資家の間ではポートフォリオの一部にビットコインを組み入れることが標準化し、下手をすれば一部の中央銀行や国家ファンドも準備資産として保有を検討するかもしれません。そうした需要の裾野拡大により、価格は長期的な上昇トレンドを継続すると見込まれます。具体的な価格水準の予想は困難ですが、例えば数十万ドル(数千万円)のオーダーに達している可能性も十分あります。もっとも、市場規模が大きくなるにつれてボラティリティは今より低下し、年率変動も株式並みに収まっているかもしれません。ビットコインはデジタル時代の価値の保存庫として、急騰急落よりも安定推移しつつ緩やかに価値を増していく資産となっているシナリオです。一方で懸念点としては、量子コンピュータの進展による暗号技術への挑戦がありますが、コミュニティは既に量子耐性へのソフトフォーク検討など対策を進めており​、長期的にもビットコインネットワークの安全性は維持されると期待します。

  • イーサリアム (ETH): 長期的にはEthereumが世界の分散型アプリケーション基盤として不動のものになっている可能性があります。5年後にはEthereum 2.0の全工程(シャーディング実装など)が完了し、現在とは比較にならないスループットで大量のトランザクションやスマートコントラクト処理が可能となっているでしょう。これにより、金融(DeFi)からゲーム、メタバース、サプライチェーン管理、電子政府に至るまでEthereum上で動くアプリケーションが社会基盤の一部となっているかもしれません。そうなればETHトークンの需要は飛躍的に増大し、ETHの価値も爆発的に向上します。供給面でも、ネットワーク利用が高水準で続けばEIP-1559による恒常的なETHバーン=供給減少が起こり、希少性が増すことでさらに価値を押し上げます。価格面では、長期的に見てETHは時価総額でBTCに次ぐ地位を固め、場合によっては一時的にBTCを凌駕するほどの存在感を示すシナリオも考えられます(いわゆる「フリップペニング」の可能性)。金額としては例えば1 ETH=数万ドル~5桁ドル後半といったレンジも視野に入ります。ただし、このシナリオが実現するにはEthereumが現在の地位を守り抜き、技術的課題を克服し続けることが前提です。競合プラットフォーム(Solanaや将来の新規プロジェクト)との覇権争いに敗れるリスクもゼロではありませんが、長期ではネットワーク効果と開発者コミュニティの大きさでEthereumが優位に立つと予測します。

  • リップル (XRP): 5年後のXRPは、国際送金・決済ネットワークの中核として機能しているか否かで運命が大きく分かれます。ポジティブなシナリオでは、Ripple社の提唱するODL(オンデマンド流動性)ソリューションが世界中の銀行・送金事業者に受け入れられ、XRPが法定通貨間ブリッジとして大量に利用されています。その場合、XRPの流通量当たりの送金需要が高まり、流動性を確保するために価格水準も上昇しているでしょう。例えば、より大きな国際送金(数億ドル規模)でもXRPの価格が高ければ少ない数量で事足りるため、送金需要そのものが価格上昇を正当化する形です。こうした実需主導の相場ではボラティリティは相対的に低下し、法定通貨に近い安定性を帯びるかもしれません。しかし投資家にとっては急騰の妙味が薄れるため、価格は緩やかな上昇曲線を描くと考えられます。一方でネガティブなシナリオでは、各国のCBDCや銀行間ネットワークが直接相互接続され、XRPのような中立ブリッジ通貨の役割が縮小してしまう可能性があります。その場合、XRPの需要は伸び悩み、価格も市場全体の平均成長に留まるでしょう。ただ、Ripple社はCBDCとの連携模索など戦略を練っているため、中間的なシナリオとしては現在より普及は進むが、爆発的な需要には至らず、緩やかな成長という線が現実的です。価格的には、2030年前後で一桁ドル台後半(例えば5~10ドル程度)に達していれば成功と言え、仮に10ドルを超えるようなら非常にポジティブな結果でしょう。XRPは他2つに比べ長期予測のブレ幅が大きいものの、安定志向の通貨として中リスク・中リターン的なポジションを確立していると考えます。

以上、短期・中期・長期のシナリオをまとめると以下の表のようになります。

※上記シナリオはあくまで仮説であり、不確実性を伴います。実際の市場は予測を超える要因によって変動し得る点に留意が必要です。

個人投資家が取るべき戦略:高リスク高リターン vs 中リスク中リターン

最後に、上述のような市場状況をチャンスに変えるために個人投資家が取り得る具体的な戦略を2種類提案します。リスク許容度に応じて、「高リスク・高リターン」を狙う積極的戦略と、「中リスク・中リターン」を志向するバランス戦略の2つを検討します。

  • 高リスク・高リターン戦略: 変動の大きい市場環境を逆手に取り、短期的な値動きから最大限の利益を狙う戦略です。具体的には、ボラティリティが高い局面で積極的なトレード(短期売買)を行ったり、将来有望だがリスクも高いアルトコインや新興プロジェクトに分散投資する方法が挙げられます。例えば、関税ショックのような急落局面で恐怖が広がっているときにあえてビットコインや主要アルトを買い増す逆張りをして、数日~数週間のリバウンドで利益確定する短期売買です。これにより急落と急騰の波を捉えて高いリターンを狙えます。また、将来性のある分野(例:レイヤー2ソリューション、分散型ソーシャルメディア、ゲームFiなど)の小型トークンにポートフォリオの一部を投じることで、次の強気相場で数倍以上の成長を掴む可能性もあります。ただしこの戦略は損失リスクも大きいため、損切りラインの徹底レバレッジ管理などリスクコントロールが極めて重要です。一例として、高リスク許容の投資家はポートフォリオの一部(例:全体の10~20%)を原資に、ビットコイン先物やオプション取引でレバレッジをかけたトレードを行い、市場の上下動を利用して大きな利益を狙うことも考えられます(※専門的手法につき上級者向け)。総じて、高リスク・高リターン戦略では大胆なポジションと迅速な判断が求められます。

  • 中リスク・中リターン戦略: 安定志向ながらも市場成長の恩恵を確実に取り込むバランス型の戦略です。具体的には、ビットコインやイーサリアムなどの主要通貨を中心に据えつつ定期的な積立(ドルコスト平均法)を行ったり、ステーキング・レンディングによるパッシブ収入を得る方法が考えられます。例えば、毎月一定額をBTCとETHに投資することで、一時的な価格変動に左右されず長期の平均取得単価を平準化できます。こうした積立投資は、短期のタイミングを計る必要がなく心理的負担も小さいため、価格が下落局面でも淡々と買い増しを継続し、次の上昇相場で大きな果実を得る狙いです。また、既に保有しているコインは取引所やウォレットでステーキング(例:ETHのバリデータ参加や各種DeFiでの運用)することで、年率数%程度の利息収入を得られます。これにより、価格上昇益に加えて追加のリターンを得つつ、長期保有を継続できます。ただし中リスクとはいえ価格変動は避けられないため、ポートフォリオの一部には現金や安定した資産(例:米ドル建てのステーブルコイン)を保持しておき、急落時に買い増しの原資とするのも有効です。具体例として、ポートフォリオの70%をBTC/ETHの長期現物保有+ステーキング、15%をXRPや有望アルトコインの中長期保有、残り15%をステーブルコインや現金で待機という配分が考えられます。これにより、市場全体の成長を享受しつつ、急騰急落にもある程度耐えられるバランスを確保できます。

以上のように、投資家自身のリスク許容度と相場観に応じて戦略を選択することが重要です。高リスク戦略では迅速な対応と相場の洞察力が求められ、中リスク戦略では長期視点と規律ある投資継続が鍵となります。現在のような不透明な市場状況でも、適切な戦略を持って臨めばリスクをチャンスに転化できるでしょう。最後に強調したいのは、いずれの戦略においても自分なりのルールを決め、感情に流されず一貫性を保つことです。仮想通貨市場は急変動が避けられませんが、長期的な成長トレンドを信じて計画的に行動することで、大きな利益機会を掴める可能性があります。​

 

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『トランプ関税ショック』 市場を揺るがす通貨戦争と投資家の分析:株式・暗号資産の急落から読み解く、保護主義の代償と資産防衛戦略


参考文献・出典:

  • 【1】CoinDesk Japan「トランプ大統領、『相互関税』発動へ──ビットコインは1%安」(2025年4月3日)​

    coindeskjapan.com

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  • 【4】CoinPost「週刊仮想通貨ニュース|トランプ大統領の関税発表後の市況分析(bitbankアナリスト寄稿)」(2025年4月4日)​

    coinpost.jp

  • 【5】Iolite「ビットコイン、『トランプ関税』で急落 アルトコインは20%前後下落」(2025年4月3日)​

    iolite.net

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  • 【6】Iolite(続報)「…株式市場の心情悪化などから、利益確定及びリスクオフの売りが強まった」(2025年4月3日)​

    iolite.net

  • 【7】Cointelegraph Japan「ビットコインマイニング、トランプ関税が新たな打撃に──業界幹部が懸念表明」(2025年4月4日)​

    jp.cointelegraph.com

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  • 【15】Bloomberg「ビットコインの下落に備える取引活発に-米相互関税の発表控え警戒感」(2025年3月29日)​

    bloomberg.co.jp

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  • 【17】Nasdaq.com「BlackRockのビットコインETF、史上最速で成長-11ヶ月で資産500億ドル・2024年118%の価格上昇に寄与」(2024年12月30日)​

    nasdaq.com

  • 【20】Reuters「Ripple社、米SECと和解し罰金5000万ドルに減額」(2025年3月25日)​

    reuters.com

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  • 【23】Cointelegraph「貿易戦争で揺らぐビットコインの安全資産説 – 金との比較」(2025年3月15日)​

    cointelegraph.com

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  • 【26】Binance Square(Moon5labs)「Ripple、エスクローから5億XRP解除:市場への影響」(2025年4月1日)​

    binance.com

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