米国による関税引き上げは多くの輸出企業に逆風となり得ますが、一方で対米依存が小さく、むしろ国内需要の増加や自給率向上、新規市場開拓、防衛需要拡大といった追い風を受ける分野もあります。以下では、そうした中期的成長が期待できる6つの領域ごとに、条件(関税増がプラス、業績良好、高配当利回り≒4.5%以上、株主還元積極的、関税ショックで割安)に合致する上場企業を整理します。
1. 食料・農業(国産需要増・自給率向上)
米国の関税引き上げで輸入食品が割高になると、日本国内では国産農産品や食品の需要増が期待されます。自給率向上に向けた政策も追い風で、国内で原料調達・生産を行う企業や農業関連メーカーに成長機会があります。例えば製粉や食用油脂の企業は原料コスト上昇を価格転嫁しつつ国内需要を確保しやすく、農業機械も国内投資拡大が見込めます。
2. エネルギー(再生可能エネルギー・自国資源活用)
エネルギー分野では、国内資源や再生可能エネルギーの活用が戦略課題です。米中対立などでエネルギー調達が不安定化する中、日本企業は自前の資源開発や国内インフラ投資を拡大しています。とくに石油・ガスの開発企業や再生エネ関連はエネルギー安全保障の観点から追い風です。米国関税引き上げの影響も小さく、世界的な資源価格上昇を享受できる企業が注目されます。
3. 防衛・セキュリティ(防衛装備・自衛隊関連・防衛電子機器など)
地政学リスクの高まりを受け、日本でも防衛費増額と装備強化が進む見通しです。防衛産業そのものは契約特殊で高配当株は限られますが、防衛需要の裾野が広い素材・インフラ企業や、一時的な株価調整で割安となった関連銘柄に注目できます。米国関税の影響は小さく(主に国内需要依存)、防衛予算拡大による受注増や安全保障政策の追い風を享受できる点がポイントです。
4. デジタルインフラ(国内通信、半導体、ソフトウェア)
デジタル分野では、国内の通信ネットワークや半導体供給網の強化が課題となっています。米中対立による調達リスクに備え、国内通信事業者や日本メーカーによる半導体・ITインフラの開発投資が増える傾向です。国内通信キャリアは景気や関税の影響を受けにくく安定配当を継続しており、一部の半導体メーカーも自動車・産業分野向けで米国依存が小さく堅調です。
5. 物流・国産製造業(リショアリング、自動化機械・ロボティクス)
サプライチェーン再構築の流れで、製造拠点の国内回帰(リショアリング)や国内生産の自動化投資が加速しています。またEC拡大や輸出代替で物流需要も底堅いです。米国関税ショックで一時的に株価調整したものの、国内での生産・物流体制強化の恩恵を受ける企業には中期的な成長機会があります。具体的には、産業機械メーカーや陸運企業で高配当・好財務のものが注目されます。
6. 医薬・医療機器(国内供給強化、バイオ・再生医療)
コロナ禍を経て、医薬品や医療機器でも国内供給網の強靭化が重視されています。海外サプライチェーンに依存しないための国産化や備蓄強化が追い風となり、ワクチン・治療薬を開発・生産できる製薬企業や、医療機器の国内メーカーが恩恵を受けます。加えて高齢化による医療需要増もあり、業績が底堅い企業が多い分野です。