現状の分析(FACTベース)

トランプ氏の関税発表内容と直接の影響: 2025年4月2日(米国時間)、トランプ米大統領(※現職)が貿易相手国に対する大規模な「相互関税」政策の詳細を発表しました​。
米墨加協定(USMCA)加盟国を除く全ての輸入品に一律10%の基本関税を課し、米国に対する貿易黒字が大きい約60の国・地域には追加関税を上乗せするとする内容です​。具体的には、中国からの輸入品に34%、欧州連合(EU)に20%、日本に24%の関税率が示されました​

(日本については「非関税障壁を含め米国製品に46%の関税相当の負担がある」との独自試算を根拠に、その約半分にあたる24%を課すとしています​)。

 

また全輸入自動車に25%の関税も別途発表されており、これが相互関税に上乗せされると日本のGDPをさらに0.1~0.2ポイント押し下げる試算です​。トランプ政権の狙いは米国の貿易赤字是正と産業保護とされていますが、この急進的な関税措置は各国から「事実上の貿易戦争」と受け止められ、世界経済の先行き不安を一気に高めました​。

 

株式・暗号資産市場の急落: 発表直後から世界の金融市場はリスク回避の動きが急速に強まりました。米国株式市場では4月3日の取引で主要株価指数が急落し、S&P500種指数は前日比4.84%安(2020年6月以来の大幅安)、ダウ平均は1,679ドル安(-3.98%)、ナスダック総合指数は1,050ポイント安(-5.97%)と2020年のコロナショック以来の下落率を記録しました​。このわずか一日で、S&P500構成銘柄の時価総額約2兆ドル(約290兆円)が吹き飛んだ計算になります。トレーダーの間では「誰も逃れられない」全面安との声も上がり​、恐怖指数と呼ばれるVIXは一時40%近く急騰して30台に乗せるなど投資家心理は急激に悪化しました​。

米国時間4月4日には、中国政府が対抗措置として**「全ての米国製品に一律34%の追加関税」(4月10日発動)を発表し​、報復の連鎖への警戒から米株の急落は続いています。例えば半導体大手のエヌビディアやAMD、ブロードコムはいずれも4~6%**の下落となり(4日寄り付き時点)​、米市場全体で下げ止まりの気配はまだ見えていません。

 

日本株も米国株急落の翌4月4日に大きく崩れました。東京市場の日経平均株価は前日比955円安(-2.75%)33,780.58円となり、昨年8月以来約8か月ぶりに心理的な節目だった34,000円を割り込みました​。寄り付き直後から売りが先行し、一時は1,476円安(33,259円)まで下落する場面もありました​。取引終盤にかけてやや下げ渋ったものの、「中途半端な下げにとどまり下値不安は拭えない」との声が市場関係者から聞かれ​、投資家心理の冷え込みがうかがえます。東証プライム市場全体の9割近い銘柄(約1,489銘柄)が下落し、売買代金も6兆8,400億円超と今年最大級の商いとなりました​。急激な株安に伴い債券や円に資金が逃避し、為替市場では円相場が対ドルで1ドル=145円台へと約半年ぶり高値水準まで急騰する局面もありました​。

急激な円高進行も日本企業の輸出採算への懸念材料となり、株価下落に拍車をかけています​。主要指数・銘柄の下落率とセクター動向: 下落は特定の業種に留まらず広範に及びましたが、なかでも貿易戦争の直接影響が大きいセクターや銘柄に売りが集中しました。米国では海外サプライチェーン依存度の高いハイテク・消費関連株が急落し、例えばアップルは9.3%安(中国生産品への関税合計54%に達する見通しが嫌気​

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)、アマゾンは6.6%安、メタ(旧Facebook)は7%安といずれも昨年下期以来の安値水準となりました​

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。PC大手のデル・テクノロジーズは19%もの暴落に見舞われ​

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、「今回の関税で利益率が大きく圧迫される」との観測が広がっています​

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。また中国市場依存の高いスポーツ用品株ナイキやヨガウェアのルルレモンも約10%安となりました​

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。景気敏感株も売り込まれ、フィラデルフィア半導体指数(SOX)は約10%急落

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。エヌビディアやマイクロンなど半導体株の下げが目立ち、ゼネラル・モーターズ(GM)フォードといった自動車株も軒並み下落しています​

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。金融株も例外ではなく、銀行株指数(KBW)は1日で9.9%安と2023年の米地方銀危機以来の急落となり、シティグループやバンク・オブ・アメリカは10%以上の下げを記録しました​

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。このように「少なくとも今日のところは、誰一人逃れられない(全面的なリスク回避だ)」との市場コメントが報じられるほど、売りは市場全体に波及しています​

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日本株も輸出・ハイテク株を中心に大きく値を崩しました。業種別では東証33業種中、値上がりは陸運(鉄道など)・食料品・不動産の3業種のみ銀行、非鉄金属、石油・石炭製品など30業種が下落というほぼ全面安の展開です​

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。特に米ハイテク株安を受けた半導体関連の落ち込みが大きく、レーザーテックやアドバンテストなど主要銘柄が軒並み年初来安値水準に沈みました(アドバンテストは大幅安

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)。銀行株も長期金利低下や景気先行き不安から売られ、東証銀行株指数先物には取引一時中断(サーキットブレーカー)措置が発動される事態となっています​

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。素材系では住友金属鉱山など非鉄金属株、エネルギー価格の先安観から石油株も売られました。一方、内需・ディフェンシブ銘柄には相対的に買いが入り、通信のKDDIや鉄道の小田急電鉄が大幅高、家具小売のニトリHDも堅調といった具合で​

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、景気変動の影響を受けにくい銘柄が物色されています。またトヨタ自動車など主力輸出株も軟調でしたが​

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、「米関税発動までに米日交渉の余地がある」との見方からか下落率は他の景気敏感株ほど大きくはなく、押し目買いも散見されました。

投資家心理と市場の声: この急落局面で投資家心理は一気に悲観に傾いています。各種報道やSNS上でも「リセッション(景気後退)不可避か」「リーマン級の衝撃」といった悲観的なコメントが急増し、実際市場の恐怖・楽観指数は「恐怖(Fear)」ゾーンに突入したと報じられています​

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。安全資産とされる米国債や金、円への資金シフトが顕著で、米10年債利回りは一時4.0%を割り込むまで急低下しました​

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(債券価格は上昇)。仮想通貨などリスク資産にも連鎖的に売り圧力が波及しています。ビットコイン価格は4月2日夕方の発表以降に5%以上下落し、一時1BTC=8万ドル前後まで値を下げました​

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。3月に一時1BTC=9万ドル近くまで上昇していたことを考えると急激な調整ですが、それでも年初来安値の7万5千ドルは上回っており「依然として高値圏のレンジ内に踏みとどまっている」(LMAX社ストラテジスト)との指摘もあります​

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。しかし、ビットコインが「デジタル黄金」として株式と無関係に動く安全資産であるとの期待は今回も裏切られ、株式市場と同様に下落したことで強気派を失望させました​

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。主要なアルトコイン(イーサリアム、ソラナ、XRPなど)は週間で10%前後の急落となっており​

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、リスク資産全般に投げ売りが出たことを示しています。

総じて、トランプ氏の関税発表は**「関税ショック」**とも言うべき衝撃を市場にもたらしました​

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。株式・暗号資産ともに大幅安、ボラティリティ急騰という混乱状態にあり、投資家心理も慎重姿勢へ一変しています。この状況下、マーケット関係者は「当面は不安定な値動きが続く」との見方を強めており、後述のように今後の展開や投資戦略について議論が活発化しています。

今後の展望:急落は一時的か、それとも長期化か?

短期的な見通し(数週間~1ヶ月): 直近の市場の急落は関税発表という政策ショックに端を発したものだけに、今後数週間の動向は「政策次第」の面が大きいと言えます。まず注目されるのは米国と各国との交渉進展です。今回の関税措置には、4月5日からの一律10%関税適用と4月9日からの追加関税適用というタイムラグが設けられており、この猶予期間中に交渉の余地を残していると指摘されています​

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。実際、日本やEUなど同盟国を中心に米政権へ強い抗議と交渉要請が行われており、この**「圧力と対話の期間」に部分的な妥協や適用除外が得られるかが短期相場のカギとなるでしょう。仮に追加関税率の引き下げや適用延期といった市場予想より柔軟な措置**が示されれば、行き過ぎた悲観が和らぎ急反発につながる可能性があります。実際、2019年の米中貿易戦争でも制裁関税第4弾の一部が発動前に見送られ、これが好感されて株価が切り返した例があります​

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一方で追加の悪材料にも注意が必要です。現在のところ中国は対米報復関税を即座に発表しましたが​

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、今後EUや日本も報復措置やWTO提訴などを検討する可能性があります。貿易摩擦が報復の連鎖に発展すれば「全面的な貿易戦争」への懸念がさらに強まり、市場の動揺が長引くリスクがあります。また米政権内部や議会与党から強硬な姿勢が続くと示唆する発言が出れば、投資家心理の改善は遅れるでしょう。短期的には、株式市場は高ボラティリティ状態が続き、上下に振れながらも安値圏を探る不安定な値動きが続く公算が大きいと考えられます​

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。テクニカル的には今回の急落で主要指数が年初来安値を更新したため、目先は自律反発(いわゆる「テクニカルリバウンド」)があってもおかしくありません。しかし戻り売り圧力も強く、交渉の進捗や追加材料が見えるまでは下落リスクと隣り合わせの神経質な相場が予想されます。

中期的な見通し(3ヶ月~半年程度): 3ヶ月から半年先の中期レンジでは、今回の下落が一時的な調整に留まるのか、それとも景気後退を伴う長期低迷につながるのか、いくつかのシナリオを想定する必要があります。

  • (1)交渉進展による早期収束シナリオ: 最も楽観的なシナリオは、春から初夏にかけて米国と主要貿易相手国との間で何らかの妥協策がまとまり、関税措置が一部撤回・緩和されるケースです。この場合、市場は「最悪期を脱した」として夏場までに急速に持ち直す可能性があります。過去の類似ケースとしては、2018年の米中関税合戦があります。当時は追加関税の応酬で秋に株価が20%以上下落しましたが、その後双方が歩み寄りを見せ部分合意に至ると、株式市場は約2~3ヶ月で急回復し過去最高値を更新しました​

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    。実際、2018年の米市場は年間では調整局面があったにも関わらず、翌2019年にS&P500が**+31.5%のリターンを上げるなど急反発を遂げています​

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    。今回も仮に関税率の引き下げ交渉や通貨協調**など何らかの譲歩が引き出せれば、年後半に向けて株価が持ち直し、失地を大きく取り戻すシナリオは十分考えられます。
  • (2)部分的長期化シナリオ: 次に考えられるのは、一定の緩和措置はあっても貿易摩擦そのものは長期化するケースです。トランプ大統領は選挙公約や支持基盤への配慮から強硬姿勢を崩しにくく、仮に市場混乱で多少の軌道修正を迫られても関税政策の基本路線は維持する可能性があります。この場合、関税引き上げの影響が徐々に企業業績や経済指標に表れ、景気減速感が夏場以降鮮明化する懸念があります。例えば日本では、試算通り関税によって実質GDPが0.7~0.8%押し下げられれば景気後退入りのリスクが高まります​

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    。米国でも企業収益悪化や物価上昇(関税は「輸入品にかかる税金」であり最終的に消費者負担増につながるため​

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    )によって個人消費が冷え込む可能性があります。ただし一方で、中央銀行や政府の下支え策も期待されます。すでに市場では「急速な景気悪化が進めばFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げどころか年内に利下げに転じる」との観測も浮上し始めました。また日本でも、日銀の追加利上げ観測が後退しつつあります​

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    。金融緩和スタンスへの転換は株式にプラスに作用しうるため、関税ショックによる下押しと政策支援の綱引きの結果、株価はボトム圏での持ち合いから徐々に下値切り上げに転じていく展開が考えられます。時間軸としては、関税ショック後3~6ヶ月程度で相場の底入れが確認され、その後は緩やかな回復基調に移るシナリオです。「貿易戦争が長引いても市場は次第に織り込んで安定を取り戻す」との見方もあり、実際2018年の貿易戦争時も米国株は約78日で下落前の水準を回復した例があります​

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  • (3)悲観的シナリオ(長期低迷・景気後退): 最悪のケースは、関税引き上げ合戦がエスカレートし世界的な景気後退(リセッション)に陥るシナリオです。1930年代の世界大恐慌時に米国がスムート・ホーリー関税法で高関税政策をとった際、各国の報復によって貿易が激減し、景気低迷が深刻化した歴史があります。今回の関税率は平均20%超と「100年ぶり」の高水準との指摘もあり​

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    、各国が報復措置を連発すれば最悪その再来もゼロではありません。具体的には、米国の関税が恒久化・拡大して企業が生産拠点の抜本見直しを迫られる、サプライチェーン寸断でコスト高と生産減が長期化する、といった事態です。この場合、企業収益の悪化と雇用環境の悪化が重なって本格的な景気後退に至り、株式市場も弱気相場(ベアマーケット)が長期化する懸念があります。例えば中小株指数のラッセル2000は今回の下落で過去最高値比20%以上の下落(弱気相場入り)となりました​

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    が、景気後退局面ではさらに下げ余地があります。ただ、現時点では各国ともリーマン危機後の経験から金融システム不安は小さく、政府・中央銀行も機動的な景気対策を繰り出す余地があります。従って「急落→政策対応→持ち直し」という大枠の流れは期待でき、リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)に比べて長期停滞のリスクは小さいとの見解も多いようです。実際、今回のような関税ショックではまず市場混乱が政策見直しを促す要因になるだろう、とする指摘があります​

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    。野村総研の分析では「関税による物価高や景気悪化に対し、米国内世論や企業が強く見直しを求めれば関税策に歯止めがかかる可能性が高い。ただし実際に見直しに至るまで半年以上は要するのではないか」​

    nri.com

    とのことで、ややタイムラグを伴って政策修正→市場回復という筋書きも考えておく必要があります。

以上を踏まえると、現時点では短期的な混乱は避けられずとも、中期的には徐々に落ち着きを取り戻す公算が大きいと見る向きが多いようです​

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。過去の例を振り返っても、関税ショックや地政学ショックによる急落は**「一定期間の調整の後に反発」というパターンが多く見られます。たとえばBrexit(英国のEU離脱)国民投票直後の世界株急落も数日~数週間で底打ちし、その後回復しました。また米国では政府の政策転換がマーケットの転機となった例もあります(2018年末の急落は翌年の金融緩和転換で反発、2020年春の暴落は大規模財政出動で急回復など)。今回も関税発動による景気悪化が現実味を増せば、政治的圧力からトランプ政権が現実路線に回帰する可能性が指摘されています​

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。そのタイミングがいつになるかは不透明ですが、少なくとも「株価の悲鳴には勝てない」**とも言われるように​

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、政権としても株式市場を無視できない以上、いずれ市場が織り込み始めた頃に妥協策が出る可能性が高いでしょう。

要約すれば、短期的には不安定な下落トレンドが続くものの、半年スパンで見れば政策修正や適応によって持ち直す可能性が高いという展望が現時点でのコンセンサスと言えます。ただし、楽観・悲観いずれのシナリオも頭に入れつつ、柔軟に状況を注視する必要があります。

 

 

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『トランプ関税ショック』 市場を揺るがす通貨戦争と投資家の分析:株式・暗号資産の急落から読み解く、保護主義の代償と資産防衛戦略