1. 第7次エネルギー基本計画の概要(想定ベース)

第6次エネルギー基本計画(2021年策定)を踏まえつつ、2050年カーボンニュートラルの実現やエネルギー安全保障の強化をより一層推進するため、以下のような方向性が盛り込まれていると考えられます。

  1. 再生可能エネルギーの更なる拡大

    • 2030年以降における再生可能エネルギー比率の高い目標設定。
    • 洋上風力発電の重点拡大(沿岸部での大規模洋上風力案件の加速)。
    • 太陽光発電の導入拡大と、屋根置き太陽光や農地との両立(ソーラーシェアリング)推進。
    • 地熱・水力など地域特性を活かした再生可能エネルギーの導入支援策。
  2. 蓄電池・次世代ネットワークの強化

    • 大規模蓄電池・家庭用蓄電池の導入促進(電力需給の平準化、系統安定化)。
    • スマートグリッドやVPP(バーチャルパワープラント)の推進による需給調整の高度化。
  3. 水素・アンモニアなど新エネルギーキャリアの活用

    • 水素製造・輸送・貯蔵インフラの整備拡大。
    • 火力発電所におけるアンモニア混焼、水素専焼実証プロジェクトの本格化。
  4. 原子力発電の位置づけ

    • 安全性確保を前提とした原子力発電所の再稼働推進。
    • 次世代型原子炉(小型モジュール炉:SMRなど)の研究開発支援。
    • 高レベル放射性廃棄物処理に関する政策強化。
  5. CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)への注力

    • 大規模実証プロジェクトの推進。
    • 産業界と連携したCO₂の回収・利活用技術の開発。
  6. 省エネルギーとDXの融合

    • 産業部門での省エネ技術・設備投資への補助強化。
    • 家庭部門でも、HEMS(Home Energy Management System)等を活用し消費電力の見える化を推進。
    • デジタル技術(AI、IoT)を活かした最適エネルギーマネジメントの普及。
  7. エネルギー安全保障の強靭化

    • LNG・石油等化石燃料の安定調達ルートの多様化と確保。
    • 国際協調(アジア諸国への技術協力や水素バリューチェーン構築協力)強化。

総じて、第7次エネルギー基本計画(仮)では、再エネ拡大と火力のクリーン化、原子力の活用、そして新興エネルギー技術(特に水素・アンモニア・CCUS)への投資拡大がキーワードとして示されていると考えられます。


2. 各産業への影響

  1. 電力・エネルギー関連産業

    • 再エネ発電(太陽光・風力・地熱・バイオマスなど)の開発・建設需要が拡大。
    • 蓄電池・系統安定装置などの需要増加。
    • 老朽化した火力発電所の更新や、アンモニア・水素混焼に対応するための設備投資需要が増大。
    • 原子力関連企業は新規炉の設計・安全対策工事などへの需要が増える可能性。
  2. 自動車産業・輸送機器

    • EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)普及促進による車載電池・水素関連技術の需要増。
    • バイオ燃料や合成燃料(e-fuel)など、脱炭素燃料の研究開発が加速。
    • 物流・鉄道なども含め、水素やアンモニアを活用した内燃機関の可能性検討が進む。
  3. 製造業(重工業・化学・鉄鋼など)

    • 鉄鋼業・セメント産業ではCO₂排出削減のためのCCUS技術導入や燃料転換需要が拡大。
    • 産業用ボイラーなどを水素・アンモニア対応に転換する設備投資が見込まれる。
    • 化学メーカーでは水素利用、カーボンリサイクル技術(メタネーションなど)の需要が増加。
    • 重工メーカーはプラント建設やエネルギーインフラ投資需要の恩恵を受ける可能性。
  4. 建設・不動産

    • 再エネ発電所や送電網、蓄電池設備建設への投資拡大により、建設業界の設備工事案件が増加。
    • 建物の断熱性能向上やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)対応の需要が高まり、省エネ関連の建材や設備投資が増える。
  5. サービス・IT

    • エネルギー需給管理のDX(スマートグリッドやAI予測)に関するITサービス需要拡大。
    • 企業の脱炭素・環境レポーティングを支援するコンサルティング・システム導入の需要増。
  6. 金融・保険

    • 脱炭素社会に向けたESG投資やグリーンボンドの需要が一層高まり、金融業界が新たな投資機会を獲得。
    • 保険業では自然災害リスク増大を背景に、再エネ設備への保険引受やサステナビリティ関連保険商品の開発が加速。

3. 第7次エネルギー基本計画を踏まえた成長期待銘柄(上位5社の例示)

ここでは、上記のエネルギー政策動向や2030年に向けた市場の成長可能性を総合的に考慮し、あくまで参考情報として選定した銘柄を5つ紹介します。実際の投資に際しては、企業の業績、財務諸表、競合状況、世界的な景気動向などを十分に調査・検討したうえで判断してください。

1. 三菱重工業(7011)

  • 主な理由
    • 原子力関連技術(原子炉の設計・メンテナンス等)やCO₂回収装置などCCUS事業の実績がある。
    • 洋上風力発電設備や水素ガスタービンなど脱炭素に向けた総合的なエネルギーソリューションを提供。
  • 今後の期待
    • 第7次エネルギー基本計画で推進される、火力のクリーン化・原子力再稼働、CCUSなど幅広い分野での需要取り込みが期待される。

2. IHI(7013)

  • 主な理由
    • タービンやボイラーの大手メーカーであり、火力発電所のアンモニア・水素混焼化改造などの実績がある。
    • 宇宙開発・海洋開発など多角的に展開しており、洋上風力の基盤設備にも関与。
  • 今後の期待
    • 将来の水素インフラ構築やCO₂回収・貯留(CCUS)分野での技術力を活かし、脱炭素関連投資の恩恵が期待できる。

3. トヨタ自動車(7203)

  • 主な理由
    • ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)など、電動化・水素化に向けた技術力で先行。
    • グローバル規模での生産・販売網を持ち、EVシフトと水素社会の両輪での戦略を進めている。
  • 今後の期待
    • 第7次エネルギー基本計画での水素インフラ拡充に合わせてFCVの普及が進む可能性。
    • EVやPHVへの投資強化も継続される見込みであり、世界的な自動車の電動化トレンドの恩恵を継続的に享受。

4. パナソニックグループ(6752)

  • 主な理由
    • 家庭用蓄電池、産業用蓄電池の大手サプライヤーであり、EV向け車載電池でもシェアを持つ。
    • 省エネ家電やスマートホーム関連、再エネ関連の機器・ソリューションにも強み。
  • 今後の期待
    • 蓄電池やスマートグリッド関連の需要拡大が続く中で、電力の需給調整や分散型エネルギー社会へのシフトに合わせたソリューションを提供しやすい。
    • EVバッテリー分野では海外メーカーとの連携拡大も見込まれ、電動化市場の成長を取り込める。

5. レノバ(9519)

  • 主な理由
    • 太陽光、風力(特に洋上風力)、バイオマスなど再生可能エネルギー発電事業を主力とする純粋再エネ事業者。
    • 国内での再生可能エネルギー導入加速を背景に、建設・運営する発電所を拡大中。
  • 今後の期待
    • 第7次エネルギー基本計画で再エネ比率引き上げを目指す中、洋上風力や太陽光発電のさらなる拡大により収益機会が増加。
    • 大型案件の開発・運営での実績を活かし、自治体や地元企業との協業も深まる可能性がある。

4. まとめと留意点

  • **第7次エネルギー基本計画(仮)**では、再エネ・水素・アンモニア・CCUS・原子力など多面的な脱炭素技術が推進されると想定され、関連業界に広く影響が及ぶと考えられます。
  • エネルギー転換のスピードや技術革新の進展、国際情勢・燃料価格の変動などによっては、計画の実効性や各企業の業績見通しも大きく左右される可能性があります。
  • 投資判断にあたっては、政府の正式発表や企業の決算情報、世界経済の動向、競合状況などを総合的に分析・検討することが必要です。ここで挙げた銘柄は、あくまで「エネルギー政策と関連が深いと考えられる企業の一例」であり、将来の株価上昇を保証するものではありません。

以上が現時点で考えられる「第7次エネルギー基本計画」の概要、産業への影響、そして2030年に向けて成長が期待される代表的な銘柄の例示となります。最終的には、最新の公式情報や企業の公表資料を確認し、ご自身の投資目的・リスク許容度を踏まえて判断なさることをお勧めいたします。