地域別の主要国経済概観
アジア(Asia)
アジアは世界人口の約60%(約47億人)を抱え、世界で最も経済成長が速く、名目GDP規模でも最大の地域です
。東アジアから南アジア、東南アジアまで先進国と発展途上国が混在し、中国やインドなど新興経済国の台頭により世界経済に占める比重を高めています。また、中東の産油国も含み、資源に恵まれた国も多いのが特徴です。
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中国:GDPは約17.8兆ドル、人口約14.23億人で一人当たりGDPは約1万2,500ドル(2023年)
と、米国に次ぐ世界第2位の経済規模です。2018年のGDP約14兆ドルから大きく拡大しており 、輸出主導の急成長によって経済規模を伸ばしました。ただ近年は成長率が5%前後に減速し 、輸出依存から内需主導への転換や高齢化などが課題となっています。 -
日本:GDPは約4.2兆ドル、人口約1.24億人で一人当たりGDPは約3万3,800ドル(2023年)
です。かつて世界第2位でしたが長期停滞により経済規模の伸びが鈍化し、2018年の5.1兆ドルから縮小しました 。円安の影響もあり名目GDPが目減りした結果、現在はドイツに抜かれて世界4位となっています 。少子高齢化による国内市場縮小やデフレ克服が長年の課題です。 -
インド:GDPは約3.57兆ドル、人口約14.38億人で一人当たりGDPは約2,480ドル(2023年)
です。近年年率6〜7%台と高い成長を続け 、2018年の2.85兆ドルから規模を拡大させています 。サービス業を中心に成長しており、若い人口構成による内需拡大が追い風です。2022年には英国を抜き世界第五位の経済大国となりました 。 -
大韓民国(韓国):GDPは約1.71兆ドル、人口約5,174万人で一人当たりGDPは約3万3,100ドル(2023年)
です。高度に工業化・先進化した経済で、電子・自動車など輸出産業が強みです。ただし成長率は近年1%台後半と低下傾向にあり 、少子高齢化や輸出市況の影響を受けやすい状況です。経済規模は2018年とほぼ同水準で横ばいとなっています(2018年:約1.73兆ドル )。 -
インドネシア:GDPは約1.37兆ドル、人口約2.81億人で一人当たりGDPは約4,900ドル(2023年)
です。東南アジア最大の経済で、堅調な内需と豊富な天然資源に支えられ年約5%の安定成長を続けています 。2018年のGDP約1.04兆ドルから着実に規模を拡大しており 、将来の高成長が期待される新興市場です。 -
サウジアラビア:GDPは約1.07兆ドル、人口約3,326万人で一人当たりGDPは約3万2,000ドル(2023年)
です。中東を代表する産油国で、石油輸出収入に経済の多くを依存しています。原油価格の変動により経済成長は不安定で、2022年に高成長を遂げた後、2023年は減産の影響で成長率がマイナスとなりました 。2018年のGDP約0.85兆ドルから規模は拡大しましたが 、経済の多角化が長期的課題です。
欧州(Europe)
欧州はドイツ、英国、フランスなど先進国がひしめく成熟経済の地域です。EU(欧州連合)加盟国を中心に高い所得水準を持ち、ほとんどの国が世界平均を上回る一人当たりGDPを有します
。EU全体では約4億4千万の消費者市場と平均GDP/人2万5千ユーロを擁し、統合経済として見れば世界最大の経済圏ですが、近年の成長率は低く緩やかな傾向にあります
。少子高齢化や生産性の伸び悩みから、欧州全体の成長は他地域に比べやや停滞しています。
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ドイツ:GDPは約4.43兆ドル(2023年)で欧州最大、世界でも米中に次ぐ第3位の経済規模です
。製造業(自動車・機械など)を強みに持つ輸出大国ですが、エネルギー危機や需要減速の影響で2023年は成長率がマイナス(-0.3%)となり景気後退に陥りました 。それでも名目GDPは2018年の約4.2兆ドルから微増を維持し、日本を上回っています 。 -
イギリス:GDPは約3.33兆ドルで欧州第2位(世界6位)です
。金融・サービス業が中心の先進経済ですが、近年はブレグジット(EU離脱)後の不確実性や高インフレによるコスト高で成長が鈍化しています。2023年の成長率は0.3%程度と停滞ぎみで 、インドに経済規模で抜かれ6位に後退しました 。物価高による実質所得目減りなど課題が山積しています 。 -
フランス:GDPは約3.05兆ドルで欧州第3位(世界7位)です
。多様な産業基盤を持つ先進経済で、公共支出の大きさも特徴です。2023年は約0.9%の緩やかな成長 に留まり、経済規模も2018年(約2.93兆ドル)比で小幅な増加にとどまります 。失業率改善や年金改革など構造課題に取り組みつつ、堅調な個人消費が下支えしています。 -
イタリア:GDPは約2.19兆ドルで世界8位の規模です
。製造業と観光を柱とする経済ですが、公的債務の重さや政治的不安定さから長期的に低成長が続いています。2023年も成長率0.7%とわずかな拡大にとどまり 、名目GDPは2018年(約2.18兆ドル)とほぼ同水準です 。高失業や人口減少といった課題への対応が必要とされています。 -
ロシア:GDPは約1.86兆ドル(2023年)で欧州では5番目に大きい経済です
。エネルギー資源(石油・天然ガス)に富み、その輸出が経済を支える構造となっています。ウクライナ侵攻に伴う経済制裁や資本流出で2022年は経済が落ち込みましたが、ルーブル安とエネルギー価格高騰で2023年は一時的に持ち直し3.6%の成長率を記録しました 。しかし制裁下で中長期的な成長見通しは不透明です。
北米(North America)
北米は米国を中心に先進国と新興国が混在する地域です。米国は個人消費が牽引する世界最大の経済で、北米全体の経済規模の大半を占めています。カナダや米国は一人当たりGDPが高く生活水準も世界トップクラスです。一方、メキシコは中所得国ですが、北米自由貿易協定(NAFTA/USMCA)で域内貿易が活発で、製造業を中心に成長しています。北米全体として成熟経済ながら移民受け入れや技術革新による比較的堅調な成長が続いている点が特徴です。
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アメリカ合衆国:GDPは約27.7兆ドル、人口約3億4,348万人で一人当たりGDPは約8万ドル超(2023年)
と、いずれも群を抜いて世界最大です。2018年に約20.4兆ドルだった経済規模が5年で約35%拡大し 、現在も世界全体の約4分の1を占めます 。低失業率と旺盛な個人消費を背景に堅調な成長(2023年約2.9%成長)を維持しました 。IT・金融などサービス産業が中心で、イノベーションとドル基軸通貨の強みが経済の原動力です。 -
カナダ:GDPは約2.14兆ドル、人口約3,930万人で一人当たりGDPは約5万4,500ドル(2023年)
です。豊富な資源と高度なサービス業を持つ先進経済で、米国経済との結び付きが強く輸出入も米国依存型です。2023年の成長率は1.3%と穏やかでした が、移民の増加による労働力確保やエネルギー輸出を背景に安定した成長基盤があります。2018年のGDP約1.8兆ドルから着実に拡大しています 。 -
メキシコ:GDPは約1.79兆ドル、人口約1億2,974万人で一人当たりGDPは約1万3,800ドル(2023年)
です。石油など資源と自動車産業を含む製造業が経済の柱で、地理的近接性から米国向け輸出産業が発達しています。近年はマクロ経済の安定により年3%前後の成長を遂げ 、2018年のGDP約1.22兆ドルから大きく規模を拡大しました(為替レート要因も含む)。課題は貧富の差と非公式経済の大きさですが、若い人口構成が将来の成長余地となっています。
南米(South America)
南米はブラジルやアルゼンチンなど資源に富む国が多く、一次産品(農産物・鉱物・石油)輸出に経済が左右されがちな地域です。2000年代のコモディティブームで成長しましたが、その後は政策運営の課題もあって成長は減速し、地域全体の経済規模はアジアなど他地域に比べ伸び悩んでいます。インフレ率の高さや政治不安が経済に影を落とす国もあり、安定した成長基盤の構築が課題です。
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ブラジル:GDPは約2.17兆ドル、人口約2億1,114万人で一人当たりGDPは約1万290ドル(2023年)
です。南米最大の経済であり、世界でも9位の規模を持ちます。農鉱産物とエネルギー資源の輸出大国ですが、国内市場も大きく多角的な産業構造を有します。2015年頃の不況以降成長が低迷し、2018年のGDP(約2.14兆ドル)と比べてもほぼ横ばい で停滞気味です。近年は政治の安定化と構造改革により2023年は2.9%の成長を記録しました が、高インフレやインフラ不足の克服が長期課題です。 -
アルゼンチン:GDPは約0.65兆ドル、人口約4,554万人で一人当たりGDPは約1万4,200ドル(2023年)
です。南米第2の経済規模ですが、深刻な経済不安定に悩まされています。慢性的な高インフレと通貨安の影響で、実質成長率は変動が大きく2023年はマイナス成長(-1.6%)となりました 。名目GDPは2018年の約5,250億ドルから増加したように見えます が、これは主にインフレによる見かけ上の伸びであり、経済規模は潜在力を発揮できていません。豊富な農牧資源・エネルギー資源を活かしつつ、財政再建とインフレ抑制が急務です。
(注記: 南米ではコロンビアやチリなども経済規模が大きい国がありますが、ここでは代表的な2か国を取り上げています。)
アフリカ(Africa)
アフリカは54か国からなる人口約14億人の地域で、豊富な天然資源を背景に一部で高成長もみられますが、地域全体の経済規模は約3.1兆ドルと世界のわずか3%程度に留まります
。一人当たりGDPが低い国が多く、経済水準は全体的に他地域より低いものの、近年はサービス業や製造業の成長も見られ「将来の世界経済の成長エンジン」として期待する声もあります
。高い人口増加率(世界人口の約17%を占める)
も特徴で、若年層の多さは将来的な市場拡大要因です。
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ナイジェリア:GDPは約3,638億ドル、人口約2億2,788万人(アフリカ最大)で一人当たりGDPは約1,600ドル(2023年)
です。石油輸出に依存する西アフリカの経済大国で、産油量はアフリカ最大です。ただし汚職やインフラ不足により経済発展が制約され、一人当たり所得は低水準に留まっています。近年は石油価格の変動や通貨安の影響で成長が不安定で、2023年は実質2.8%成長でした が、人口増加を上回らず一人当たりでは停滞気味です。 -
南アフリカ共和国:GDPは約3,807億ドル、人口約6,321万人で一人当たりGDPは約6,000ドル(2023年)
です。サハラ以南アフリカで最も工業化が進んだ国で、自動車や金融など多様な産業を持ちます。しかし近年は政策停滞や電力不足などで成長率は低迷し、2023年も0.7%のわずかな成長にとどまりました 。失業率の高さや所得格差といった構造問題が経済成長の足かせとなっています。GDP規模は2018年とほぼ横ばいで推移しています。 -
エジプト:GDPは約3,960億ドル、人口約1億1,454万人で一人当たりGDPは約3,457ドル(2023年)
です。北アフリカを代表する経済で、近年は経済改革や投資促進により安定成長を遂げており、2023年も3.8%成長しました 。2018年のGDP約2,630億ドルから名目経済規模を大きく拡大させており 、アフリカでもトップクラスの経済規模となっています。観光業やエネルギー産業が強みですが、通貨切り下げに伴う物価高騰で一人当たり所得の伸び悩みが課題です。
オセアニア(Oceania)
オセアニアはオーストラリアとニュージーランドを中心とする地域で、人口は少ないものの高所得国が揃います。オーストラリアが地域経済の大半(オセアニア経済の約98%以上)を占め
、鉱物資源や農産物の輸出とサービス産業が経済を牽引しています。ニュージーランドも農牧産品と観光に強みを持つ先進国です。それ以外の太平洋島嶼国は経済規模が小さく、オセアニア全体としては世界経済に占める比率は小さいですが、一人当たり所得水準は比較的高い地域です。
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オーストラリア:GDPは約1.73兆ドル、人口約2,645万人で一人当たりGDPは約6万5,300ドル(2023年)
です。世界第14位の経済規模を持つ先進国で、鉱業ブームや中国との貿易拡大により過去数十年安定した成長を遂げました。2023年も3.4%の実質成長率で堅調でした 。2018年のGDP約1.42兆ドルから着実に拡大しており、豊富な地下資源と高度なサービス産業が経済の柱です。 -
ニュージーランド:GDPは約2,520億ドル、人口約517万人で一人当たりGDPは約4万8,800ドル(2023年)
です。農業・酪農製品の輸出と観光業が中心の小規模開放経済ですが、先進国として安定した経済基盤を持ちます。2023年の成長率は0.7%とやや低調でした が、政治・社会の安定に支えられ長期的には緩やかな成長を維持しています。地理的に孤立していますが、隣国オーストラリアやアジア市場との結び付きが経済に重要です。