3. インフラ改修で成長が期待される国内企業の分析
老朽化した社会インフラの改修需要拡大に伴い、その分野で中核的役割を果たす企業群に注目が集まっています。日本国内の上場企業の中から、インフラ維持・更新関連で成長が期待される主な企業と、その強み・特徴を整理します。
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ショーボンドホールディングス(1414) – 道路や橋梁、トンネルなど社会インフラ補修・補強の専業大手です。耐震補強や老朽部分の補修を中心とした「総合メンテナンス企業」であり、工事売上の大半がインフラの補修・補強関連となっています
。老朽化対策需要の本格化により業績拡大が期待されており、道路・橋の老朽化対策銘柄として筆頭に挙げられます。 -
クボタ(6326)&日本鋳鉄管(5612) – 上下水道インフラ関連の代表企業です。クボタは上下水道向けの鋳鉄管やバルブ製造で実績があり、近年は独自の水環境向けIoTソリューション「KSIS」を開発してプラント設備の維持管理効率化サービスも提供しています
。また2023年8月には日本鋳鉄管との間で、国内の水道用ダクタイル鉄管製造に関する合弁会社設立に基本合意しました 。日本鋳鉄管(5612)は水道用鋳鉄管の専業メーカーで売上の大半を水道管向けが占めます 。老朽水道管の更新需要増大を背景に、2021年には首都圏での地震による水道管破裂事故をきっかけに同社株価が急騰する場面もあり、市場でも水インフラ更新関連として注目されました 。両社の提携により、今後の水道管更新プロジェクトに対応する供給体制強化が期待されます。 -
日特建設(1929) – トンネル・橋梁・水圧鉄管など土木構造物の補修・補強工事に強みを持つ建設会社です。特に上下水道管の更生技術である**「SPR工法」**(既設管内部に塩ビ製の螺旋状プロファイルを巻き立てて管を再生する工法)を手掛けており、非開削で老朽下水道管を補修できる技術として国内外で採用が進んでいます
。インフラ長寿命化需要の高まりで同社の技術への引き合いも強く、老朽管路の更新市場で存在感を発揮しています。 -
川崎地質(4673) – 建設コンサル系企業で、地質・土質調査の大手です。近年は国土強靭化関連の受注が好調で、とりわけ道路や下水道の維持管理、斜面防災などの調査業務に注力した結果、2021年度は営業利益が前年同期比4.2倍になるなど業績が急伸しました
。老朽インフラ対策では事前の詳しい調査・診断が欠かせず、地質調査の専門企業である同社は老朽構造物の健全度診断や補修工法検討の基盤を提供する役割として成長が期待されます。 -
大成建設(1801) – 五大ゼネコンの一角で、インフラ改修需要にも幅広く対応しています。特にグループ会社の大成ロテックは道路・空港舗装を手掛けると共に、上下水道管や電線類の地中化工事も担っており、老朽管路の更新や無電柱化などライフライン改修分野で強みを持ちます
。大手総合建設会社はトンネル補修や橋梁補強、大規模更新プロジェクト(高速道路の架け替え等)で中心となるため、インフラ更新マーケット全体の底上げが各社業績にプラスに働くと見込まれます。中でも大成建設は水処理施設や下水道工事の実績も多く、上下水道分野に強いゼネコンとして注目されます 。 -
栗本鐵工所(5602) – 上下水道向けの管材メーカーで、ダクタイル鋳鉄管・バルブ類から強化プラスチック複合管まで水パイプライン製品を幅広く展開しています
。グループ会社に管路の調査・補修を行う専門会社を持ち、水道管の劣化診断や洗浄、更生工事にも携わります 。老朽管の更新需要に伴い、管材提供だけでなくメンテナンスサービスまで一貫対応できる点が強みです。競合の日本鋳鉄管やクボタとの市場シェア争いの中でも、豊富な製品ラインナップと全国展開力で需要を取り込むことが期待されます。 -
海外企業の参入動向 – 日本のインフラ改修市場には海外企業も関与し始めています。例えば仏ヴェオリアグループは上下水道運営で世界的な大手ですが、子会社ヴェオリア・ジェネッツが宮城県の上下水道コンセッション事業(みやぎ型管理運営方式)に参画し、2022年から運営を開始しました
。老朽化した地方水道の効率的運営・更新に海外の水メジャーの技術とノウハウが活用されるケースです。また、アメリカのインフラ診断技術企業や設備メーカーも日本市場を有望視しています。米国商務省のレポートによれば、日本の老朽インフラ問題は**「米国企業にとって検査・診断サービス提供の機会」**と捉えられており 、高精度センサーやクラウド型モニタリングシステムなどの分野で輸入・提携が進む可能性があります。今後、必要に応じて海外の優れた技術を取り入れることで、日本のインフラ更新を担う企業群にも国際的な競争と協業が生まれるでしょう。
以上のように、インフラ改修関連の企業は多岐にわたりますが、それぞれ専門分野で強みを持つ企業ほど老朽化対策需要の恩恵を直接受けやすいと言えます
。総合建設大手に比べ、補修・補強に特化した企業は業績への寄与度が高く、市場からの注目度も増しています
。国土強靭化やインフラ老朽化対策が今後本格化すれば、ここで挙げたような企業は日本の安全インフラを支える中核として成長が期待されるでしょう。
Sources:
【2】 株式会社フォレストホームサービス プレスリリース (2024) - 「地球4周分の水道管が寿命迎え老朽化・耐震化状況」
【8】 Nippon.com (2013) - 「Avoiding an Infrastructure Crisis」
【13】 国土交通省「道路メンテナンス年報2023」 - 「50年経過橋梁の割合(現在約37%、10年後61%)」
【18】 乗りものニュース (2021) - 「首都高 老朽化進行・重大損傷増加」
【22】 メトロ設計(株) ブログ (2024) - 「水道管老朽化事故事例(和歌山・市原)と耐震化率・老朽管率」
【25】 CFR “State of U.S. Infrastructure” (2023) - 「バイデン政権の過去最大のインフラ投資とPPP・インフラ銀行の提案」
【26】 CFR - 「2021年11月 米議会が歴史的インフラ投資法を可決(1.2兆ドル)」
【28】 CFR - 「ASCE2021レポートカード: 米国インフラ評価C-と投資ギャップ2.6兆ドル」
【33】 マネックス証券 (2021) - 「老朽化インフラ維持・補修関連銘柄: ショーボンドHD・NIPPO」
【34】 マネックス証券 (2021) - 「インフラ老朽化対策銘柄: 日本鋳鉄管、川崎地質 業績寄与」
【41】 Trade.gov 米国商務省 (2023) - 「Japan’s aging infrastructure & US companies opportunities」
【42】 毎日新聞・週刊エコノミスト (2022) - 「宮城県コンセッション事業:メタウォーター・ヴェオリアなど10社SPC」
【45】 ダイヤモンドZAiオンライン (2023) - 「水インフラ補修関連銘柄: クボタのIoTと日特建設SPR工法、大成建設の管路地中化」
【46】 英国土木技師学会(ICE) プレスリリース (2025) - 「老朽インフラへの投資遅れは安全・供給に影響(維持管理優先を提言)」【46†L119-L127}
【23】 CNBC (2018) 他引用 - 「ドイツの老朽橋(レーバークーゼン橋)重量車通行止めと投資不足」