S&P500指数連動投資(ETF・インデックスファンド)の保有状況と変化

バークシャー・ハサウェイは近年、S&P500指数そのものへの直接投資をほとんど行っていません。わずかながらS&P500連動型ETFを保有していましたが、その規模はポートフォリオ全体の0.01%程度と極めて小さいものでした​

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。具体的には、2024年第3四半期時点で**SPDR S&P 500 ETF (SPY)**を約39,400株、バンガード・S&P500 ETF (VOO)を約43,000株保有しており、評価額はそれぞれ約2,260万ドル(約30億円)前後でした​

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。しかし2024年第4四半期にこれらのETF持ち分は全て売却され、バークシャーの13F報告におけるS&P500指数連動ETF保有はゼロになりました​

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。つまり、2024年末以降、バークシャーはS&P500全体を対象とするETFやインデックスファンドを直接は保有していないことになります。

なお、2024年中には個別株としてS&P500採用銘柄の新規組み入れも一部ありました。例えば第2四半期には化粧品小売のウルタ・ビューティー(Ulta Beauty)株を新規取得し、第4四半期にはビール・酒類大手のコンステレーション・ブランズ(Constellation Brands)が新たに加わっています​

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。しかし、こうした新規ポジションはいずれも規模が小さく、一方で先述のS&P500連動ETFの持ち分は2024年後半までに整理(売却)されたため、S&P500全体への投資比率はむしろ低下しています​

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S&P500銘柄に対する投資比率・方針の変化(2024年後半)

2024年後半、バークシャー・ハサウェイは米国株式(多くはS&P500採用銘柄)への投資比率を大きく引き下げる動きを見せました。とりわけ同社ポートフォリオの筆頭であるアップル(Apple)株の大規模売却が注目されます。バークシャーは2024年夏から秋にかけてアップル株を約1億株(保有株数の25%)売却し、保有株数を約3億株まで減らしました​

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。2024年初めからの累計では6億株以上のアップル株を売却したことになり、割合にして約2/3の持ち分を手放した計算です​

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。アップル以外にも、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)など主要なS&P500銘柄の持ち分を一部売却しており、2024年第3四半期だけで合計361億ドル相当の株式を売却する一方、新規の買い増しはわずか15億ドルにとどまりました​

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。これにより8四半期連続で純売り越し(売却超過)となり、運用資金の現金比率が急増しています​

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こうした動きの背景には、バークシャーの投資方針の守りへの転換があると考えられます。2024年9月末時点でバークシャーの手元現金・短期国債等は過去最高の3,252億ドルに達しており、第2四半期末(2,769億ドル)から大幅に積み増しされています​

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。CFRAリサーチのアナリストは「バークシャーが現金を貯め込んでいることは、同社が**“リスクオフ”の姿勢をとっていることを示唆する」と指摘しています​

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。実際、米国株式市場は2024年に堅調(S&P500指数は年間+20%前後)でしたが、この間の株価上昇によって多くの銘柄が割高になりすぎている**との懸念が広がっていました​

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。バークシャーが株式を売り越し現金比率を高めたのも、「現在の市場水準では十分割安な投資先が少ない」と判断し、高値圏で利益確定と守りを固めた可能性があります。​

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背景要因のまとめ: バークシャーが2024年後半にS&P500全体への投資割合を引き下げた主な背景には次のような要因が推察されます:

  • 株式評価額の高騰: 2024年の市場上昇で株価バリュエーションが歴史的高水準に達し、「多くの銘柄が高すぎる」との判断​

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    。割安な投資機会が乏しいため、一部ポジションを縮小。
  • リスクオフ姿勢と現金確保: 景気や金融市場に対する先行き不透明感から守りを重視し、意図的に株式比率を下げて巨額の現金を蓄えている​

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    。これにより将来の下落局面や大型投資機会に備える狙い。
  • 集中投資の是正: アップル株に偏り過ぎたポートフォリオ構成を是正し、特定銘柄への依存度を下げることでリスク分散を図った(後述)。

こうした戦略転換は、ウォーレン・バフェット氏が個人投資家には「S&P500インデックスファンドへの長期投資が最適」と推奨しつつも、自社の資本配分においては市場環境に応じて柔軟に方針を変えていることを示しています。バフェット氏は割高と見れば現金で待機し、割安と見れば集中投資するスタイルで知られます。2024年後半の動きは、まさに**「今は待つとき」**との判断によるものであり、S&P500全体へのエクスポージャー(曝露)を意図的に絞った形と言えるでしょう。

ポートフォリオ内におけるS&P500採用銘柄の比率変化と戦略的意味

バークシャー・ハサウェイの株式ポートフォリオに占めるS&P500採用銘柄の構成比にも、2024年後半に大きな変化が生じました。最大の要因は前述したアップル株の比率低下です。アップルはバークシャーの単独銘柄として最大比重を占めてきましたが、そのポートフォリオ比率は2023年には約50%近くにも達していました​

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。それが大規模売却によって2024年末には約26%程度まで低下しています​

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。この結果、バークシャーの上位5銘柄(アップル、アメリカン・エキスプレス、バンク・オブ・アメリカ、コカ・コーラ、シェブロン)の合計比率もポートフォリオ全体の約2/3(約66~72%)程度となり、以前の約80%以上からやや分散が進みました​

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。つまりポートフォリオの極端な集中が緩和され、よりバランスの取れた構成にシフトしつつあります。

もっとも、アップル株は依然としてバークシャー最大の保有銘柄であり、その評価額約699億ドル(約10.5兆円)は依然ポートフォリオのトップです​

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。バークシャーは2024年通年で600百万株以上のアップル株を売却しましたが、それでもなお同社はアップルの2%以上の株式を握る主要株主です​

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。このことから、今回の売却はアップルへの信頼喪失ではなくポートフォリオ調整(利食いとリスク管理)の一環と見るべきでしょう。実際、アップル売却で得た資金や他の株式の売却代金は依然現金のまま保持されており、他のS&P500銘柄へ大規模な乗り換えが行われたわけではありません。

戦略的な意味合いとして、バークシャーがポートフォリオ内のS&P500銘柄比率を下げたことは、以下のように解釈できます。

  • リスク分散と資産保全: ポートフォリオの過度な偏り(特にハイテク株への集中)を是正することで、市場下落時のダメージを緩和しようとしています。特にアップル株の比重低下は、その株価変動リスクがバークシャー全体に与える影響を抑える効果があります。​

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  • 将来の投資機会への備え: 売却によって得た潤沢な現金は、将来的に**市場が下落して割安な水準になった際に投入できる「待機資金」**となります。記録的なキャッシュ蓄積は、大型買収や大幅下落時の買い増しに備える意図と考えられます​

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    。実際、バフェット氏は「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れるときに貪欲であれ」という方針を公言しており、高値圏では慎重になる傾向があります。現在の現金比率の高さは、その哲学に沿った行動と言えるでしょう。
  • 市場見通しの反映: S&P500構成銘柄の比率縮小は、現在の市場全体に対する慎重な見通しを反映している可能性があります。バークシャー自身、2024年の株価上昇局面でS&P500指数をやや上回るパフォーマンス(バークシャー株+25% vs S&P500 +20%)を上げました​

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    が、それでもなお積極的な買いは控えました。これは経営陣が「当面は市場全体よりも慎重な姿勢を維持すべき局面」と判断していることを示唆します。実際、「バークシャーの慎重姿勢は経済や市場に対する警戒感の表れではないか」との分析も出ています​

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    。このように、S&P500全体へのエクスポージャー縮小は、バークシャーの**マクロ戦略(景気循環や金利動向を睨んだ判断)**とも整合的です。

総合すると、2024年後半以降のバークシャー・ハサウェイはS&P500全体に対して防御的な姿勢を強めています。S&P500指数そのものへの直接投資は撤退し、個別のS&P500銘柄についても主力持株を一部売却して現金化することで、ポートフォリオのリスクを引き下げました。これは市場が割高と判断される局面での一時的な戦略転換であり、裏を返せば将来再び有望な投資機会が訪れれば、蓄えた資金を活用してS&P500銘柄への投資比率を再び高める余地を残しているとも言えます。現時点では、バークシャーは**「慎重のち攻撃」**の構えであり、S&P500全体に対しては控えめなポジションを維持しつつ、堅実な価値投資のチャンスをうかがっている状況と分析できます。

参考文献: バークシャー・ハサウェイのSEC提出書類(13F)および報道​

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などを基に作成しました。各情報源は、2024年第3~4四半期のデータやバークシャーの決算報告・ニュース分析を含んでいます。これらにより、同社のS&P500に対する投資スタンスの変化をデータに即して把握しています。