1. オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)の概要

背景・経緯: eMAXIS Slim 全世界株式(通称「オルカン」)は、三菱UFJ国際投信(現・三菱UFJアセットマネジメント)が2018年10月31日に設定したインデックス型の投資信託です​

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。従来、先進国株や新興国株、日本株と地域ごとに分散投資するには複数のファンドを組み合わせる必要がありましたが、オルカンはこれ1本で世界中の株式に投資できる手軽さを狙って生まれました。ちょうど積立NISAなど長期分散投資の制度が広がる中、低コストで幅広い分散効果を得られる商品として企画され、eMAXIS Slimシリーズ(業界最低水準の運用コストを目指すファンド群)の一つに位置付けられています。個人投資家からの支持も厚く、愛称である「オルカン」で親しまれています​

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商品の特徴: オルカンは世界株式の代表的な指数であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(MSCI ACWI)(配当込み・円換算ベース)に連動する投資成果を目指しています​

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。先進国23か国と新興国24か国、合計約47~50か国の株式が投資対象で、日本を含む世界全体の株式市場を幅広く網羅しています​

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。具体的には米国の比重が半分以上を占め、上位構成銘柄にもAppleやMicrosoftなど米国の大型ハイテク企業が名を連ねます​

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。一方で、日本や欧州、新興国企業にも投資されるため、地域偏重によるリスクが抑えられる構成です。このファンド1本で世界の時価総額に応じた国際分散投資が実現でき、「世界経済の成長をまるごと取り込む」ことをコンセプトとしています​

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  • 運用方針: ベンチマークであるMSCI ACWIに連動するようパッシブ運用が行われます​

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    。対象インデックスに含まれる日本を含む全世界の株式に主として投資し、原則として為替ヘッジは行いません​

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    。したがって各国株式市場の値動きや為替変動が基準価額に反映されます(為替ヘッジなしのため、円建てでは円安時に有利に働き、円高時に不利になります)。
  • 手数料: 購入時手数料はノーロード(無料)、信託財産留保額もゼロと良心的です​

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    。運用管理費用(信託報酬)は当初年率0.1133%程度でしたが、競合商品の登場を受けて2023年9月に年0.05775%以内まで引き下げられ、現在も国内最低水準を維持しています​

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    。※受益者還元型信託報酬を採用しており、純資産総額がさらに増えれば信託報酬率は段階的にわずかに低下します​

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    (既に純資産5兆円超という巨大ファンドに成長しており​

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    、スケールメリットも費用低減に寄与しています)。
  • 分配金: 決算は年1回(4月)ですがこれまで分配金は出さずに自動的に再投資されています​

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    。そのため複利効果で基準価額が効率的に積み上がる設計です。
  • その他: NISAや積立NISAの投資対象として利用可能であり​

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    、100円からの少額積立にも対応しています​

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    。まさに長期の積立分散投資に適した商品性であり、「Fund of the Year 2024(個人投資家が選ぶ投信ランキング)」でも第1位に選ばれるなど圧倒的な支持を集めています​

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2. 過去の成長トレンド分析

基準価額の推移: オルカンの基準価額は設定来おおむね右肩上がりで推移してきました。2018年10月末に10,000円でスタートした基準価額は、その後世界株式市場の成長に伴い上昇し、5年後の2023年末頃には22,000円超とおよそ2倍以上に成長しました​

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。直近では2024年の好調な相場を受けてさらに値を伸ばし、2025年初め時点で27,000円台に達しています​

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。この間、純資産総額も急拡大しており、前年から倍増以上の勢いで資金流入が続いています​

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。設定来トータルで見れば大きなリターンを上げていますが、その道のりにはいくつかの波もありました。

リターンの実績: 年ごとのリターンを振り返ると、世界経済や市場動向を反映して上下の変動を経験しています。例えば、設定直後の2018年末は世界株安で一時的に基準価額が落ち込みましたが、翌2019年は各国の景気刺激策などで大きく反発し年間で二桁%の上昇となりました。さらに2020年は新型コロナ・ショックで急落(一時▲30%前後)したものの、その後各国の金融緩和とIT企業の業績拡大により急速に回復し、2020年末から2021年にかけては過去最高値を更新しました。2022年は世界的なインフレ高進と金利上昇を背景に調整局面となり基準価額も伸び悩みましたが、2023年には米国を中心に株式市場が持ち直し再び大幅上昇に転じています。​

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このように短期的には景気・イベント要因で乱高下するものの、長期的な平均リターンは年率換算でおおむね5~10%台と健闘しており​

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、世界経済の成長に合わせて着実に基準価額が積み上がってきたと言えます。実際、世界経済は人口増加などを背景に緩やかながら持続成長してきており、株式指数も長期で見ればその成長トレンドを捉えて上昇してきました​

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。オルカンはその世界全体の成長エンジンに連動するファンドだけに、過去の推移も世界GDPや企業利益の拡大と高い相関関係が見られます。

他ファンドとの比較: オルカンの成績を他の代表的な投資信託と比較すると、大きく劣後することも優位に上回ることもなく、概ねグローバル株式市場平均のリターンを忠実に実現していることが分かります。例えば、米国株に集中投資する「S&P500連動型」のファンドとの比較では、直近数年はハイテク株好調な米国株ファンドの方がわずかに高いリターンを上げた局面もありました​

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。実際、2020年のコロナ後の急回復局面では米国市場の立ち直りが他国より早く、同期間のS&P500連動ファンドのリターンがオルカンを上回りました​

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。しかしその差は大きくなく、オルカン自体も半分以上が米国株で占められているため値動きは概ね似通っています​

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最大の違いは分散効果で、オルカンは米国以外にも先進国全般や新興国株式も含むため、仮に米国株が低迷した局面でも他地域の好調さで補える可能性があります​

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。一国集中よりリスク分散に優れる点は投資戦略上のメリットです。一方、日本株や新興国株に限定したファンドと比べれば、オルカンの方が米国主導の恩恵を受けてこれまで安定した成績を収めてきました。

また、他社の類似の全世界株式ファンドとも比較してみましょう。ニッセイやSBI、楽天などからも全世界株式に投資するインデックスファンドが提供されていますが、いずれも同じMSCI ACWIなどをベンチマークとしているためリターンはほとんど差がありません。違いが出るとすれば信託報酬の差や運用手法によるわずかなトラッキングエラー程度です。オルカンは先述の通り信託報酬が非常に低廉であること、ファンド規模が大きく運用効率が良いことから、実質コストや乖離率の面でも有利と考えられます。その結果、投資ブロガーや個人投資家から「最有力の一本」と評価されることが多く、投信の人気ランキングでも常に上位に位置しています​

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。総じて、オルカンの過去の実績は「グローバル市場平均並みのリターンを安定的に享受できている」と言え、これはまさに本ファンドの目指すところと一致しています。長期で見れば世界経済の成長と株価の上昇は歩調を合わせており​

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、過去のトレンド分析からもオルカンがその恩恵をしっかり捉えてきたことが裏付けられます。

3. 2028年に向けたシナリオ分析

今後5年ほど先の2028年を見据え、オルカンのリターンがどのようなシナリオを辿り得るかをポジティブ・ネガティブ・中間の3つのケースで考えてみます。それぞれの前提と市場環境、リスク要因を整理し、本ファンドへの影響を展望します。

ポジティブシナリオ:世界的な経済成長が続く場合

シナリオ概要: 世界経済が今後も順調に拡大を続け、各国の企業収益が底堅く成長していく楽観シナリオです。具体的には、米国をはじめ主要国のGDP成長率が従来予想以上に高水準を維持し、新興国も含めた世界全体で年平均3%台後半以上の経済成長が続くイメージです(中期的なベースライン予想は3%台半ば程度ですが、それを上回る展開)​

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。インフレ率は徐々に安定し、各国中央銀行は急激な金融引き締めに追い込まれることなく適度な金利水準で経済成長を下支えします。政治的にも大国間対立が緩和傾向に向かい、例えば米中の貿易摩擦が改善・協調路線に乗るなど地政学リスクの顕在化が回避される状況を想定します。また技術面ではAIブームが実体経済に大きく貢献し、生産性向上や新産業の創出によって世界全体の企業利益を押し上げます。実際、国際的な調査では「2030年までにAIが世界経済に約20兆ドルの付加価値をもたらす」との予測もあり​

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、技術革新が経済成長を力強く牽引する可能性があります。

市場・ファンドへの影響: このポジティブシナリオでは、世界の株式市場は基本的に強気基調(ブル相場)が続くと予想されます。企業収益の拡大と投資マインドの改善により、先進国・新興国を問わず株価は年々上昇基調を描くでしょう。オルカンの基準価額もそれに伴い安定した上昇トレンドを維持し、年率で見れば一桁台後半から二桁近いリターンが期待できます。地域的には、時価総額の大きい米国株の好調さが引き続き全体をけん引しつつも、これまで低迷気味だった地域(例えばヨーロッパや新興国)の株式も追随して上昇することで、より広範な分散効果がリターンに寄与する展開が考えられます。実質的な世界経済の拡大ペースが上がれば、MSCI ACWI全体の年率リターンも高まる傾向があります。たとえば世界GDP成長率が1%高まると、企業利益成長や株価上昇率もそれに応じて数ポイント押し上げられる可能性があります。そうなれば2028年頃にはオルカンの基準価額は現在より大幅に高い水準(ケースによっては数万~数十%以上上昇)になっていることも十分あり得ます。

リスク要因への影響: ポジティブシナリオでは主要なリスク要因が概ね抑制された状態と考えられます。地政学リスクが表面化しなければ企業活動は安定し、サプライチェーンも円滑に機能し続けます。ドルをはじめとする基軸通貨体制にも急激な変化はなく、為替市場は比較的安定推移するでしょう。仮想通貨も従来資産の補完的な位置づけに留まり、金融市場を揺るがす存在にはならない前提です。技術革新に関してはプラス面(生産効率向上、新市場の創出)がマイナス面(既存産業の衰退や雇用喪失)を上回り、経済全体として恩恵を受ける形です。結果として、株式市場は緩やかな金利上昇や一時的な調整局面はあっても、大きな崩壊なく成長軌道をたどるでしょう。オルカン投資家にとっては、このシナリオでは順風満帆で資産が増えていく展開となり、世界株式への長期投資の効果を実感できるはずです。

ネガティブシナリオ:経済停滞・市場崩壊リスクが高まる場合

シナリオ概要: 世界経済が停滞または大きな危機に見舞われ、株式市場が低迷・崩壊的下落を経験する悲観シナリオです。考え得る要因としては、各国で景気後退(リセッション)が連鎖的に発生したり、金融引き締めの影響で企業活動が萎縮して長期停滞に陥るパターン、あるいはリーマンショック級の金融危機が再発するパターンが挙げられます。また、ロシア・ウクライナ情勢の深刻化や台湾海峡を巡る米中対立の激化など重大な地政学リスクが顕在化し、エネルギー価格高騰やサプライチェーン寸断によるスタグフレーション(景気停滞下でのインフレ)が起きる可能性もあります。実際、仮に米中貿易戦争がさらに激化し各国が保護主義に傾けば、世界経済が大きく落ち込むリスクがあると指摘されています​

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。IMFなど国際機関の予測でも、2028年まで世界成長率はコロナ前より低い水準にとどまり中期的な成長鈍化が見込まれる中​

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、そうした下振れ要因が現実化すれば一層深刻な景気悪化となるでしょう。

市場・ファンドへの影響: このネガティブシナリオでは、世界の株式市場は長期低迷または暴落に見舞われます。各国の企業業績が悪化し、投資家心理も冷え込むため、株価指数は大幅な下落を被るでしょう。具体的には、リーマンショック時のようにピークから半値近くまで急落し、その後数年経っても回復しきれない、といった展開も十分考えられます。オルカンの基準価額も世界株安に引きずられて急低下し、仮に▲50%以上のドローダウン(高値からの下落幅)を記録する可能性も否定できません。特に世界同時不況の様相となれば分散投資の効果も限定的で、先進国・新興国ほぼすべての市場が下落してオルカン全体でも大幅なマイナスとなるでしょう。経済停滞が長引けば、2028年時点でも基準価額が現在値を下回るようなシナリオもあり得ます。例えば1970年代のスタグフレーション期や、2000年代初頭の「失われた10年」のように、長期間リターンが得られない局面が訪れるリスクです。

リスク要因への影響: ネガティブシナリオでは複数のリスク要因が同時発生・連鎖することが想定されます。まず地政学リスクが現実化し、戦争や対立により貿易・投資が停滞、企業マインドも萎縮します。原材料価格の高騰や供給網混乱で企業コストが増大し利益が圧迫されます。各国中央銀行はインフレ抑制と景気悪化の板挟みに陥り、政策対応も後手に回る恐れがあります。世界経済の分断が進めば国際協調による危機対応も難しくなり、負のスパイラルに陥る可能性があります​

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。為替面では、リスクオフ局面で安全資産とみなされる円やスイスフランが買われ、逆にドルの信認低下が起きるかもしれません(※ただし有事のドル買いという現象もあるため、状況次第ではドル高・円高いずれの可能性もあります)。日本の投資家にとっては円高が進行すると外貨建て資産の評価額目減りを招き、円建てのオルカン基準価額は株安と円高のダブルパンチを受けかねません。仮想通貨については、金融システム不安からビットコインなどに投機的資金が流入する場合もあれば、逆に急落して市場全体に連鎖ショックを与える場合も想定されます(近年のピーク時には仮想通貨時価総額が約8,000億ドル(90兆円)を超え、無視できない規模に達したとの指摘もあります​

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)。技術革新も経済にマイナスに作用し得ます。たとえばAIの普及で雇用喪失が深刻化し消費不振に陥る、サイバー攻撃やシステム障害など新技術由来のリスクが顕在化するといったケースです。総じて、悲観シナリオでは多くの悪材料が重なり合うため、オルカンの投資リターンも低迷またはマイナスになってしまう可能性があります。こうした場合、長期投資であっても含み損に耐える局面が続く恐れがあり、投資家にとっては我慢の時間帯となるでしょう。

中間シナリオ:緩やかな成長と変動が混在する場合

シナリオ概要: 上記二極端の中間に位置する、現実的にありそうなシナリオです。世界経済は成長を続けるもののそのペースは年2~3%台の緩やかなものにとどまり​

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、好調と不調の波が交互に訪れるイメージです。例えば、「米国経済が好調だが中国が減速」「今年は欧州が停滞したが来年は新興国が牽引」といったように、地域ごとに明暗が分かれつつ全体ではそこそこの成長率を維持する形です。インフレ率は一部で高止まりするものの全体としては徐々に落ち着き、各国中銀も利上げと利下げを小刻みに行いながら経済を支えるコントロールされた環境が続くでしょう。政治的には大国間の対立は残るものの、極端にエスカレートはせず**「決定的な破局は避けつつ小競り合いが続く」**状態が前提です。技術面でもAIやDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化は進むものの、一夜にして経済構造が変わるほどの破壊的インパクトはまだ出てこない、という想定です。

市場・ファンドへの影響: この中間シナリオでは、株式市場は適度な変動を伴いながら緩やかな上昇基調をたどる可能性が高いです。好材料が出れば株価は上がり、悪材料が出れば下がるという当たり前の動きを繰り返しつつ、長い目で見れば緩慢な成長が積み上がっていくイメージです。年間のリターンで見ると、プラスの年もあればマイナスの年もあるでしょう。たとえば5年のうち3年はプラス・2年はマイナスで、トータルでは年率数%のプラス、というような結果が考えられます。これは過去20~30年程度の世界株式の平均的な振る舞いとも整合的です。​

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オルカンの基準価額も、急騰と急落を繰り返しながらもジグザグに水準を切り上げていく展開が予想されます。具体的には、2028年頃までに現在より数十%程度上昇している可能性が高いものの、途中では一時的に▲10~20%程度の調整局面が何度か訪れるといったシナリオです。地域別には米国株の独走状態が一服し、入れ替わりで新興国株が台頭する年があったり、日本株が見直される局面があったりと、リーダー役が年ごとに変化するかもしれません。しかし分散されたオルカンではその波を均しつつ安定したリターンを狙えるでしょう。為替についても大きなトレンド変化はなく、ドルと円の相場はレンジ内で緩やかに推移する前提です(多少の円高円安の振れはあるが長期では相殺される程度)。したがって円換算の基準価額にも為替要因で極端なブレは生じにくいでしょう。

リスク要因への影響: 中間シナリオでは、良い方向にも悪い方向にもリスク要因が部分的に表れると考えます。世界景気は概ね堅調ですが、時折地域的な景気後退や市場ショック(例えば一時的な金融市場の波乱や資産バブルの崩壊など)が発生し、その都度調整が入るイメージです。たとえば米国の金融政策ミスで一時株価が急落するが、他地域の成長や迅速な政策対応で立て直す、といった具合に小さな危機を乗り越えながら前進する展開です。地政学リスクもくすぶり続けますが決定的な世界大戦のような事態には至らず、マーケットへの影響も限定的に留まります。為替面ではドル基軸体制に徐々に変化の兆し(人民元決済拡大など)が見えるものの、2030年頃までにドルの地位が劇的に低下することはなく、移行は緩やかでしょう。仮想通貨も金融商品の一部として一定の地位を築きますが、株式市場を脅かす存在にはまだ成長しないか、あるいは規制と共存する形で安定化するかもしれません。技術革新は着実に進展し、新たな収益機会を生む一方で旧来産業の淘汰も進みます。しかし株式インデックスは常に新陳代謝(指数構成の入れ替え)を行うため、イノベーションによる恩恵と悪影響の両方を吸収しながらゆるやかな成長を続けるでしょう。総じて、中間シナリオは「高成長も崩壊もないが平均的に見れば堅実」という現実的な着地であり、オルカンの投資家も5年後にはそれなりのリターンを手にできている期待が持てます。

考慮すべきリスク要因

上記シナリオを検討するうえで、特に注目すべき主要なリスク要因を整理します。これらは今後の市場環境を左右する要素であり、オルカンのパフォーマンスにも大きな影響を及ぼし得ます。

  • 世界経済・市場動向: 世界全体の景気サイクルや成長率は、オルカンの土台となる企業収益に直結します。世界経済が順調に拡大すれば株価も押し上げられ、逆に景気後退局面では株価は下落します​

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    。IMFなどの見通しでは、今後数年はパンデミック前より低成長にとどまる懸念も示されています​

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    。投資家としては、GDP成長率や失業率、金利動向などマクロ経済指標に注目し、大局的な市場トレンドを把握することが重要です。特に米国・中国・欧州など主要経済圏の動向がカギを握ります。
  • 政治的な変化(地政学リスク、大国関係): 各国の政治情勢や国際関係も市場に大きな影響を与えます。貿易政策の転換や関税の導入、政権交代による経済政策変更などは株式市場を揺るがします。なかでも米中対立やロシア・中東情勢など地政学リスクは注意が必要です。米中関係が改善に向かえば世界経済は追い風を受けますが、逆に対立激化で保護主義が広がれば世界経済全体が落ち込むリスクがあります​

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    。また有事の際にはエネルギー・食料価格が高騰し企業収益を圧迫する恐れもあります。投資家はニュースや国際情勢にもアンテナを張り、必要に応じてポートフォリオの地域配分やリスク資産比率を見直す柔軟性が求められます。
  • 為替変動(特にドルの役割変化): オルカンは為替ヘッジを行っていないため、円と主要通貨(米ドルなど)の為替レート変動が円建て基準価額に影響します​

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    。一般に円安・ドル高になれば基準価額の押上げ要因、円高・ドル安になれば押下げ要因です。特に米ドルは基軸通貨として重要で、世界的なリスクオフ局面では**「有事のドル買い」でドル高・円安になる場合と、逆に日本円が安全通貨とみなされ急激な円高**が進む場合があります。後者では日本人投資家の外貨資産評価額が目減りするため注意が必要です。近年、一部新興国による「脱ドル化」の動きやデジタル通貨の台頭など、ドルの国際的地位に変化が生じる可能性も指摘されています。もし今後ドルの信頼が揺らぎ大幅安となれば、米国株にはプラスでも円換算リターンにはマイナス、というケースも考えられます。為替は予測が難しい要因ですが、長期投資では一時的な為替損益に一喜一憂せず、必要なら為替ヘッジ付き資産との組み合わせも検討するなど、為替リスクへの認識と対応策を持っておきましょう。
  • 仮想通貨の普及と金融市場への影響: ビットコインを代表とする暗号資産(仮想通貨)の存在感も近年無視できなくなっています。一時は仮想通貨全体の時価総額が約8000億ドル(90兆円)を超える規模に達し、経済への影響も無視できないとの分析があります​

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    。今後、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入や仮想通貨への規制整備が進むと、金融システムや資金の流れが変化する可能性があります。仮想通貨が黄金期を迎えれば、一部の投資マネーが株式から暗号資産へ流出し株式市場の資金流動性が低下するリスクがあります。逆にバブル崩壊的な暴落が起きた場合、投資家のリスク回避姿勢が高まり株式から資金が引き上げられる可能性もあります。ただし現時点では株式市場に比べ規模は小さく連動性も高くないため、直接的な影響は限定的と見る向きが多いです。それでも技術革新による金融環境の変化は注視が必要であり、今後5年で仮想通貨がどの程度主流化するか、不確実性の一つとして考慮しておくべきでしょう。
  • 技術進化(AI、ブロックチェーン、エネルギー技術など): 技術革新は長期的に経済と市場に大きなインパクトを与えます。ポジティブな面では、生産性向上により経済成長率を押し上げたり、新産業の勃興で企業収益機会が拡大したりといった恩恵があります​

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    。例えばAI(人工知能)の普及でビジネス効率が飛躍的に高まれば、多くの企業の利益率が改善し株価上昇要因となるでしょう。また再生可能エネルギー技術やEVなどのグリーン産業が成長すれば、新興企業の台頭や関連分野の株価上昇が期待できます。一方でネガティブな面もあります。急速な技術進歩は創造的破壊を伴い、既存企業が競争に敗れて倒産・株価下落するリスクもあります。AIの台頭で従来型産業が衰退したり、人員削減による社会不安が高まれば、経済に一時的な混乱をもたらすかもしれません。またサイバーセキュリティや個人情報保護など新たなリスクへの対応コストが企業収益を圧迫する可能性もあります。オルカンは世界中の幅広い企業に投資しているため、技術進化の「勝者」と「敗者」の両方を内包します。そのため個別企業の浮沈リスクは分散されますが、技術トレンドの大波そのものには乗っていく形になります。投資家としては、有望な技術分野の動向をウォッチしつつ、大局的にはインデックスに組み込まれる主要企業群(例えばGAFAや次世代のテック企業)の動向に注意を払うと良いでしょう。技術革新は長期には株式市場を押し上げる原動力である一方、短期的な変動要因にもなり得ることを認識しておく必要があります。

 

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