朝起きて、慌てて劇場に向かおうとして
あ、もうないんだった……と気づいて
胸がぎゅっと苦しくなりました。
それくらい、赤坂に通う日々は私の日常でした。
一昨年の12月に採寸があって
昨年の2月にフィッティング。
袖を通した瞬間の感動は今も鮮明で、
鏡の中にホグワーツの生徒が立っている…!とニヤニヤが止まりませんでした。
でもその衣裳は2日間にわたる長いフィッティングで、
動けない上に生地が上質すぎてとても重くて、
腰も肩も足もガチガチになったのを覚えています。
それでも、本国から来てくださった衣裳さんや床山さん、オンラインでも何人もの方がミリ単位の微調整を重ねてくださって、
「ハリー・ポッターの世界を作るってこういうことなんだ」と背筋が伸びる思いでした。
そして5月から始まった稽古。
3時間40分ノンストップの舞台。
終わりが見えず、稽古場で何度も途方に暮れました。
本番を観に行ったとき、完成度の高さに圧倒されて、自分がそこに立てるのかという大きな不安を抱えながら、必死で稽古しました。
ただ演出のエリックが丁寧にバックボーンから考える手伝いをしてくださって、スウィングの私からも意見を引き出してくださって、
世界的に有名な物語の主人公のハリー・ポッター!から、1人の人間としてのハリー・ポッターとして考えられるようになりました。
私が演じさせていただいたのは
ハーマイオニーとロンの娘のローズ・グレンジャー・ウィーズリーと嘆きのマートル。
(細かくいうとローズ役の時は他に魔法省の職員や他のグリフィンドール生、Vワールドの住人、
嘆きのマートル役の時は他にもポリー・チャップマン 、魔法省職員、フラー・デラクール 、リリーポッター、Vワールドの住人)
ローズは映画ではほんの少ししか映らないので、ハーマイオニーとロンの要素を足してみたり、(ハーマイオニーの方が影響力強そうだからハーマイオニー要素多めかな?とか妄想して)
ラブラブな夫婦に愛情たっぷりに育てられた子供ってどんなだろう?と想像を膨らませました。
嘆きのマートルは、映画でのイメージが強い分、好きな方たちをがっかりさせないようにというプレッシャーもありましたが、、エリックが「映画に寄せる必要は全くない。この子がどういう人生を生きて、どういう経緯でゴーストになったか、それだけを考えれば自然とマートルになる」と言ってくださったので、そのことに集中できました。
先輩の倉澤雅美ちゃんから教わり、本役の飛香まいちゃん、出口稚子ちゃんと話し合いながら
役を作っていく時間は難しくも楽しく、学びの日々でした。
ムーブメントでは
ムーブメント補のヌノが基礎体力作りから付き合ってくださって、毎日30分のウォーミングアップで皆鍛えられました。
仲間と一緒にワークショップのように学ぶ時間があって、より打ち解けられた気がします。
独特な動きも多かったけれど、キャラクターになりきることから始め、
難しいところは何度も練習させてくださって、本当に感謝しています。
ヌノもエリックも一人一人に向き合ってくれて、名前を初日からしっかり呼んでくれたのが本当に嬉しかったし心強かった。国が違うのにすぐに心を通わせられて安心して稽古に臨めたのは、彼らのおかげです。
稽古場では、ムーブメントキャプテンの横山千穂さんが
継続キャストとの細かな違いを伝授してくださったり、英語も堪能なのでヌノに伝えてくださったり、わかりにくいところも、寄り添って説明してくださって…本当に心強かったです。
演出部さんや衣裳さんにも、小道具やクロークの使い方、初年度に苦労したことなど、たくさん伝授していただきました。
こうして少しずつ世界観に馴染ませていただけることが有難かった。
そして、水嶋ユウさん、はやふみさんには魔法を教わりました。自分でも驚くくらい、「本当に魔法が使えた…!」と思える瞬間があって。
永井大さんが稽古場に炊飯器とお米を持ってきてくださって、皆で同じ釜の飯を食べた時間は、文字通り絆を深めるひとときでした。
舞台稽古に入ってからは、魔法の世界ならではの照明や舞台装置に苦戦の日々。
特に嘆きのマートルのシンクシーンは難しくて、最初は起き上がるだけで精一杯。
足中あざだらけで、痛くて痛くて…。
制作さんがアイスバケツを作ってくださり、なんとか乗り越えられました。
舞台稽古の期間は、他の舞台よりは長いけれど、
それでも足りないと感じるほどでした。
初日の幕が上がるときは、息が苦しくなるくらいドキドキして。
でも…音楽が鳴り始めた瞬間、
緊張はすっと解けて、ときめきへと変わりました。
胸の奥から湧き上がる、言葉にできない幸せ。
ああ、私は今、本当にこの物語の中に生きているんだ…
そんな感覚でいっぱいでした。
衣裳さんやヘアメイクさんには、何度も助けられました。
早替えが多くて、時間との戦いの日々だったけど、いつも落ち着いていて、優しくて、一心同体で駆け抜けたこの1年間。
衣裳さんやヘアメイクさんのおかげで、私は安心して舞台に立つことができました。
1年間同じ舞台に立ち続けるなんて、
「途中で飽きてしまうんじゃないか」「苦しくなるんじゃないか」
稽古前はそんなふうに思っていました。
でも…そんなことは一度もありませんでした。
もちろん、自分の不甲斐なさに泣きたくなる日もあったけれど、
毎日が挑戦で、毎日が新鮮で、
この舞台に、このカンパニーにいられることが、ただただ嬉しかった。
赤坂駅に降り立つたび、あの魔法の世界に向かうたび、
胸が高鳴るのを感じていました。
大好きな仲間たちと
一緒に舞台に立ち続けられた時間は、
私にとって何よりも大切な宝物です。
公演期間中も、演出助手の佐賀みことさん、濱吉清太朗さんが
いつも温かくアドバイスをくださいました。
ムーブメントキャプテンの横山千穂さんや大竹尚さんが
細やかな修正を積み重ねてくださって、
その一つひとつのおかげで、舞台の上で自信を持てるようになりました。
仲間たち、先輩方からも、数えきれないほどの教えや栄養をいただきました。
感謝の気持ちは、どれだけ言葉を尽くしても足りないくらいです。
そして何より、お客様。
いつもあたたかい拍手を、本当にありがとうございました。
温かい言葉をいただくたび、何度も救われました。
寄せ書きをいただいたときは、涙が止まらなくて、「ああ、この世界で生きてきてよかった」
心の底から、そう思いました。
今は、寂しくてたまらないけれど…
でもまたいつか、どこかでお会いできる日を、信じています。
そして4年目の『ハリーポッターと呪いの子』が始まります。
同じ景色を見つめ、共に歩んできた大好きな皆さまと
そして、新たに加わるキャストの皆さまの舞台
きっとまた新しい魔法の世界が開かれると思います。
これからは、お客さんとして、
大好きなこの作品を見守り続けたいと思います。
またこれからも、
俳優として、表現者として、
誰かの心にそっと寄り添えるような存在でいられるように、
もっともっと学び、鍛錬を重ねていきたいと思います。
まだ見ぬ物語の中で、また違う人生を生きられるように。
この胸にあるときめきを忘れずに、
一歩一歩、丁寧に歩んでいきます。
1年間、本当に本当に、ありがとうございました。



