地域「伝承」の今日性 | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

来週の土曜日6月18日、
大阪民俗学研究会「阪俗研」にとって初めての
研究発表会を開きます。
いくら小さな研究会とはいえ、
名ばかりの「民俗学」では済まされません。


ボクは地域「伝承」の今日性について話します。
今、「むすび」を考えています。
知らぬ間にホンマは伝説やのに
「歴史面(-づら)」してまかり通っている今日を
問題にしようかな?


どんなメディアが「歴史面(-づら)」しているの?


マチ歩きマップなど
伝説の宝庫として楽しい読み物です。

観光ガイドブックの記事でも注意して
「○○神社に伝わってます」の
「伝わってます」という記述を読まない限り
「伝承」に気づきません。

インターネット情報など要注意です。
孫引きだらけで出典が有耶無耶なのが多いからです。


名所の伝説が
「歴史化・合理化される傾向」について
夙に*柳田国男は述べていることは
《 阪俗研で《「伝承」の発見》を発表します》に
記しました。
*柳田国男:『民俗学辞典』1951年「伝説の特徴」


そこで考えついたのが「伝説の生成についてのポイント」です。
今、考えておりますことは、
2011年10月3日に滋賀県立大学での
日本民俗学会での口頭発表
「伝説化する「蛸の松」」にまで溯ります。
その後、2012年11月3日の浦江塾では
「松の伝説から霊験譚へ」として話しました。


次に示しますのは、浦江塾での発表の一コマです。
伝説の生成についてのポイントです。
1 登場人物に注目
• 講談・芝居・歴史小説・映画・ 教科書・テレビ
2 ストーリーに注目
• 来臨→武勇→宝物(⇒証拠品)授与→安泰
3 証拠品に注目
• 樹木・塚・武具・宝物・絵画・感状・記念碑
• 開帳の品々
4 記念日に注目


伝説は生成されるというのは
民俗学の常識です。
「○○記念祭」や「△△周年行事」に際して
それまでの「由緒」「縁起」の編集にとどまらず
復古・再興を装って
新たに創作されることもあります。

主人公は「郷土」の英雄、遍歴する高僧、
戦いに挑む武将などの出てくるのは要注意です。
折口風に云えば「貴種流離譚」です。
大阪では、太閤秀吉、行基菩薩、菅原道真、
源義経、真田幸村です。
他にもおられますが、
伝説と云えばムッとされるかも知れませんので
差し控えます。(当日、話します。)


そのようなお方は、講談や芝居で
「実像」などお構いなしに脚色されています。
話はパターン化されています。
貴いお方が村に訪れ、
何か形見の品を残して去るわけです。
それが後生大事に宝物とされ
何年に一度のご開帳の時とか、年に一度の祭事に開陳され
信徒共同体の人たちが
事績を回想します。


「平家物語」は早く
「語り物」として文芸化しました。
近世になっての「勧化本」など
信仰を広めるための霊験譚を
満載した本です。


研究会での発表とはいえ、
ブログにはアップできないエピソードなど
気楽な話も交えることになるでしょう。

定員は15名程度です。
ご予約があれば配付資料を確保します。
詳しくは下記のページをご覧ください。
↓ここをクリック
http://ameblo.jp/tanonoboru/entry-12167246137.html
参加申込みは

tano@folklore-osaka.org まで


なお発表に
三隅貴史さん「都市祭礼研究の目的と対象」が
追加されました。
若い研究者から刺激を受けるのが楽しみです。


究会代表 田野 登