山の文芸書「アルプ」で串田孫一さんの存在を知り、その著作を何冊か購入した。
「山のパンセ」「若き日の山」は、何度も読み返したものだった。二階自室の本棚に納めてあったが、1階に隠居所を増築し、ほとんどの書物は引っ越しした。が、乱雑な整理で、その2冊がどこかに紛れ込んでしまった。
かろうじて目にしたのが山と渓谷社から1971年に出版された「山の独奏曲」と動植物をテーマにした文庫本「博物誌」Ⅰ~Ⅳが壁面に取り付けた書棚に並んでいた。

「山の独奏曲」は短文72編を収めたもの。
各編とも読んで楽しいものだが、後記が好きな一編だ。
今夜の月は赤い。気圧が急に変わって、頭が重く、月も懈(だる)いのかと思う。庭先に大きく育った山法師の花がそろそろ終わりに近い。それでもまだ数え切れないほど残っていて、窓からのあかりを嬉しがっているように見える。霧深い山て、日が暮れてから迷い歩いているうちに、崖のきわにこの花の咲いているのを見たのも、もう三年前になるのか。
ちょうど、皆既月食で赤い月が見られたというが、家呑みで寝てしまい、寝ぼけ眼で夜空を見上げても見出すことができなかった。
そして山法師。今年はヤマボウシの白い花を長いこと見られた。赤い実もたくさん採った......。