鉱物の顕微鏡写真194 ―銀星石― | 天然鉱石専門店 ミネラルショップ たんくらのブログ

鉱物の顕微鏡写真194 ―銀星石―

顕微鏡写真

 

 

 

 

 

 

 

 

鉱物の顕微鏡写真194

―銀 星 石―

 

産地:Mauldin mountain quarrys, Mauldin mountain, Montgomery county, 

       Arkansas, USA.(非売品)

 


 

Wavellite 銀星石

[組成]                         Al3[(OH,F)3|(PO4)2]・5H2O       

[結晶および形態]           直方晶系.自形結晶は断面が菱型で庇面と柱面か

                 らなる角柱状ないし針状.柱面に条線が発達するこ

                                 とがある.双晶は知られていない.結晶は脆い.束

                                 状・繊維状・放射状・球状・ブドウ状・皮膜状・鍾乳状

                                 などの集合になる.

[色]                            無色・白色・灰白色・灰色・淡黄色・黄色・黄褐色・淡

                 緑色・黄緑色・緑色・青緑色・灰青色・淡紅色・褐黒色

                                 など.集合の表面などに水酸化鉄などの被膜が被る

                 ことによって色が変わることがある.

[光沢]             ガラス光沢~やや脂っこいガラス光沢.劈開面上に

                 真珠光沢.透明―半透明.

[モース硬度]        3.5~4.

[比重]             2.36~2.37

[劈開]             {110}に完全.{101}に良好.{010}に明瞭.

[条痕]             白色.

[酸による反応]       容易に可溶.

[原産地]           High Doun quarry, West Backland, North Devon,

                                 England, UK.

[名称]             UKの医師・植物・博物学者の

                 William Wavell(1750-1829)

                 に因む.

 


 

 

 2か月ぶりの顕微鏡写真シリーズです.今回は銀星石にしました.

 

 アルミニウム(Al)の含水燐酸塩鉱物の一つです.おもに,堆積岩(主にチャートの酸化帯など)・火砕岩中の脈・ノジュール・変成岩中の脈・浅熱水鉱床・堆積性燐・褐鉄鉱鉱床・熱水変質岩中などに産します.

 本邦で目に触れやすい産状はチャートの酸化帯で,黄色のカコクセン石やコニンク石・ストレング石などとともに産する例がありました.

 

 上の画像の標本は20年前くらいの京都ショーで手頃なサイズだったので,購入した標本です.断面が一面研磨に近いくらいまっすぐに割れていて,放射状に集合しているのが観察できました.

 

産地:Moores Mill, Mount Holly springs, Cumberland county, Pennsylvania, 

    USA.(非売品).

 もう一つは小規模な堆積性燐鉱床から産した銀星石です.こちらは層状の褐鉄鉱中に赤褐色角柱状の酸化ベラウン石に黄色―黄褐色金剛光沢に近い微細な針状のカコクセン石を伴う標本です.黄色―黄褐色のカコクセン石の一部の表面に微細な白色繊維状をなしています.購入品で元ラベルには「カコクセン石」の名前がついていました.その脇に白色部は銀星石とあったので,ラベルの付け替えに際に併記して,新ラベルにしました.

 

 

以下は国産品です.顕微鏡写真シリーズで取り上げる標本用に改めてサンプル購入したものがいくつかあって,それも併せて掲載します.

産地:福島県郡山市熱海町高玉 高玉鉱山/Takadama Au-Ag mine, Takadama, Kohriyama city, Fukushima prefecture, Honshu island, Japan.

(非売品)

 購入品です.古くから金銀を稼業したやや規模の大きい鉱山から産した銀星石です.母岩はやや珪化した凝灰岩質の母岩で,母岩の礫の周りを黒色の煤状の物質で諸所に染まり,石英脈の空隙に細かい水晶が生えているような母岩です.網目状に貫入している石英脈の肥大部に,黄色の鮮やかな球状集合をなしています.角礫状をなす母岩の一部には,黒変した塩化銀鉱を少量伴っていました.

 

産地:高知県高知市南河の瀬町吉野/Yoshino, Minami Kawanose choh, 

    Tosa old county, Kohchi prefecture, Shikoku island, Japan.(非売品).

 

 知人よりお土産として頂戴した標本です.新しい団地の造成現場と伺っています.チャートの酸化帯から産した銀星石です.俄かに黄色味を帯びた光沢のやや強い球状の集合をなしています.球の表面はやや粗く自形結晶が確認できる部分もありました.母岩は銀星石以外に燐酸塩鉱物はついていないようで,一部に水酸化鉄と思われる褐色の染みがありました.

 

産地:岐阜県大垣市赤坂昼飯町花岡山/Old quarry, Hanaokayama mountain, Akasaka Hirui-choh, Ohgaki city, Gifu prefecture, Mino old county, Honshu island, Japan.(非売品).

 こちらも知人から提供された標本です.上の産地の山は砕石によってすでに無くなったそうです.美濃帯の泥質岩を伴う砂質部を挟む灰色チャート内の酸化帯で,灰色チャートの割れ目に銀白色ないし白色の放射状集合をなしています.当地からは黄色―黄褐色球状のカコクセン石や淡紅色のストレング石に似たような産状のヴァリシア石などが観察できたそうです.