鉱物の顕微鏡写真186 ―轟石― | 天然鉱石専門店 ミネラルショップ たんくらのブログ

鉱物の顕微鏡写真186 ―轟石―

顕微鏡写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉱物の顕微鏡写真-186-

轟  石

 

産地:北海道余市郡赤井川村明治 轟鉱山(非売品).

 


Todorokite 轟 石

[組成]           (Na,Ca,K,Ba,Sr)1-X(Mn4+,Mg,Al)6O12・3H2O

                             ((Mn2+,Ca,Mg)Mn4+3O7・H2Oという文献もあり)

[結晶]          単斜晶系.自形結晶は微細な板状.ロゼット状・束状・

               繊維状・放射状・球状・樹枝状・しのぶ石状・苔状・ブドウ

               状・塊状集合などになる.結晶は脆い.

[色]            黒色・帯紫灰色・帯赤黒色・褐黒色など.

[光沢]          亜金属光沢~樹脂光沢.塊状のものは土状光沢.

[モース硬度]      1.5.(結晶質のものは4内外という文献も)

[比重]          3.65~3.67

[劈開]          {100},{010}に完全.

[条痕]          黒色・鋼灰色・鉛灰色など.

[原産地]         北海道余市郡赤井川村明治 轟鉱山.

[名称]          原産地名より.

 


 

 ひとつきぶりの顕微鏡写真シリーズになりました.今回は轟石にしました.いわゆる「二酸化マンガン」の系統の鉱物で,晶癖がはっきりしていて,検討が付きやすい種です.1934年に北海道余市郡赤井川村の轟鉱山で発見された鉱物で,以後各地から報告されるようになりました.

 冒頭の画像は原産地のもので,知人よりお土産として頂戴した標本です.サイズは小さいですが,短冊状に集合した轟石の集合の一部に空隙があって,板状の結晶が観察できたため,かなり拡大して冒頭に持ってきました.周囲にギラギラした水マンガン鉱を伴っていて,母岩は石英だと思っていたら魚眼石でした.

 

 

産地:静岡県賀茂郡松崎町池代 池代鉱山(非売品).

Locality:Ikeshio mine, Mochikusa river side, Ikeshiro, Matsusaki town, Kamo

           district, Shizuoka prefecture.

 

 上の4枚の画像は市場で多く出回っている池代鉱山の轟石です.同一の標本をいろいろな部位を取って撮影しました.風化してくると褐黒色になるようで,触れると黒色の粉が手についてなかなか取れないことがあって,普段はパックに入れています.帯青鋼黒色~黒色部が轟石です.ほかの白色部はセピオライトとのことで,こういう部分に貝化石とかが時折ついていました.

 

以下はそのほかの産地の標本です.

産地:東京都西多摩郡奥多摩町川乗谷(非売品).

Locality:Kawanoridani valley, Okutama town, Nishi Tama district, Tokyo.

 購入品です.聞きなれない産地でXRDの試料を採るために匙で欠いたような跡がありました.黒色~褐黒色部が轟石とのことです.

 

産地:長野県上伊那郡辰野町横川 浜横川鉱山(非売品).

Locality:Hamayokokawa Mn mine, Yokokawa, Tatsuno town, Kami Ina district,

           Nagano prefecture.

 

 購入品です.もともとついていたラベルは黒色の煤がこびりついて,真っ黒でした.これを消しゴムで擦ると取れてくれました.標本を持ってみると軽石のような感じで,比重が3.67もあるような感じはしませんでした.

産地:福井県三方郡美浜町新庄 若狭珪石鉱山(非売品).

Locality:Wakasa Keiseki Silica stone mine, Sinzyo, Mihama town, Mikata

           district, Wakasa old county, Fukui prefecture.

 

 知人からの提供品です.塊状でいろいろ混じっているとのことでした.御岳山という山の山頂付近から北東の山麓まで広い範囲で稼業されていた珪石山で,マンガンが出たのは山の南東とのことでした.

 

産地:富山県富山市大山町亀谷 亀谷鉱山宝蔵坑(非売品).

Locality:Hokora-koh adit, Kamegai Pb-Zn mine, Ohyama-choh, Toyama city,

           Toyama prefecture.

 

 知人からのお土産で頂戴した標本です.当初は全面についている異極鉱の標本でしたが,裏面に瓦状の二酸化マンガンが付いていました.以前に分析したサンプルと一緒に試験したところ,轟石でした.亜鉛がすぐ近くにあったので,カルコファン鉱か何かと期待していましたが,轟石でした.標本を裏向けにして,黒色のモコモコを上にしました.ラベルを轟石にしました.

 

産地:滋賀県大津市田上里町 田上山滝ヶ谷(非売品).

Locality:Takigatani valley, Tanakamiyama mountains, Tanakami Sato-choh,

           Ohtsu city, Shiga prefecture.

 知人からの提供品です.花崗岩質ペグマタイトの長石の上にモコモコした黒色の鉱物が轟石と教わりました.真ん中の黒色部が何かで欠いたような跡があって分析に使用したものかもしれません.

 

産地:京都府南丹市園部町船岡大和谷 大和谷鉱山(非売品).

Locality:Yamatodani Cu mine(Funaoka mine), Yamatodani valley, Funaoka, 

          Sonobe-choh, Nantan city, Kyoto prefecture.

 こちらは学生時代にサンプリングした轟石です.通常は船岡鉱山の名称で知られている鉱山で,おもに銅鉱が採鉱されました.銅と亜鉛の酸化帯があって,轟石は亜鉛の酸化帯に近いところに割とみられました.二酸化マンガン系の鉱物は見かけが黒く見栄えがしないので,現地では結構見られました.羽毛状の晶癖が観察できた部分を拡大しました.

 

産地:愛媛県西予市野村鉱山(非売品).

Locality:Nomura Mn mine, Seiyo city, Ehime prefecture, Shikoku island.

 ラベルに轟石・クリプトメレンともともとあって,分析する機会があって,これも一部を欠いて持ち込んだところ,轟石のほかに褐鉄鉱と粘土鉱物が入っていました.ほかにもいくつかよくわからないピークが数本あって,ランシー鉱様の鉱物もはいっているとか.肉眼ではさっぱりわかりませんでした.

 

産地:長崎県長崎市樫山町西樫山海岸(非売品).

Locality:Nishi Kashiyama beach, Kashiyama-choh, Nagasaki city, Nagasaki

           Prefecture, Kyushu island.

 学生の頃にサンプリングした標本です.以前にアルデンヌ石の回で紹介した現場の近くです.河口近くの紅簾石片岩を回収に行ったときに,緑閃石などとともにサンプリングした標本です.白色部はアラレ石で,自形結晶の集合の間隙に半自形結晶の集合をしています.画像では黒っぽく写っていますが,強い光源のもとで見ると,俄かに赤色味が強い黒色でした.

 

産地:長崎県平戸市辰巳砕石(非売品).

Locality:Tatsumi quarry, Hirado city, Hirado island, Nagasaki prefecture.

 

 購入品です.凝灰岩質の母岩の割れ目に,帯赤黒色~黒色亜金属光沢を呈する繊維状の集合をなしています.

 

産地:青森県西津軽郡深浦町岩崎 丸山鉱山(非売品).

Locakity:Maruyama Mn mine, Iwasaki, Fukaura town, Nishi Tsugaru district,

           Aomori Prefecture.

 購入品です.標本箱の内部はほぼ真っ黒で煤だらけでしたので,売り手が少しまけてくれました.掃除してラベルを付け替えました.白色の石英などが混じっていましたが,持ってみるとこの石もかなり軽く感じました.

 

産地:京都府亀岡市高村鉱山(非売品).

Locality:Takamura Mn mine, Hiedano-choh, Kamoka city, Kyoto prefecture.

 筆者が中学生のころにサンプリングした標本です.白色の菱マンガン鉱-ピンク色のパイロクスマンガン石からなる集合の酸化被膜の分厚い部分が繊維状になっていました.それからずいぶん経ってから,分析してもらえる機会があって,欠かして持ち込みました.それで轟石とわかりました.下の白色部は菱マンガン鉱.