鉱物の顕微鏡写真79 ―水マンガン鉱― | 天然鉱石専門店 ミネラルショップ たんくらのブログ

鉱物の顕微鏡写真79 ―水マンガン鉱―

 

 

 

 

 

 

鉱物の顕微鏡写真79

―水マンガン鉱―

 

産地:岐阜県土岐市下石町拾石.(非売品)

 

Mnganite  水マンガン鉱

[組成]:MnO(OH)  

[結晶系]:単斜晶系(擬直方)

[色]:黒色・褐黒色・暗灰色・帯赤黒色.錆びると青っぽい錆が出ることがある.

[光沢]:亜金属光沢.

[結晶]:柱状.柱状結晶が並行に集合.球状集合になる.

[モース硬度]:4

[比重]:4.29-4.34

[劈開]:{010}一方向に完全,{110},{001}三方向に明瞭.

[条痕]:赤褐黒色.

塩酸に可溶.

 

 

 次は水マンガン鉱にしました.海外の標本を探しましたが手元に無く,今回は国産の標本を使用しました.二酸化マンガン系の鉱物で結晶しやすい鉱物です.ただし内部がそっくりパイロリュース鉱(軟マンガン鉱)に変質しているものが多くあり,分析してみないことには水マンガン鉱が残っているかどうかは判らない.判別する方法は,表面がギラギラしているものはパイロリュース鉱に変質していて,水に濡れたような光沢をしているものは水マンガン鉱の傾向があるという.

 上の標本は5年くらい前に美濃帯の工事現場に美濃礫層などを観察に行ったときに,サンプリングした標本です.当地はアスファルトのような外観で光沢の強い二酸化マンガン鉱の空隙に,菱マンガン鉱の束沸石のような結晶を産したことで有名になったのですが,現在は工場が建ってしまって消滅したようです. のちに人伝で前述のアスファルトのような外観の二酸化マンガンの鉱物は「水マンガン鉱」だったということを伺いました.美濃帯の堆積層から産した鬼板や藍鉄鉱などを整理したところ,1サンプルだけ空隙に水マンガン鉱の結晶の付いた石がありました.ダメ元で空隙に鏨を充てて割ってみたところ,うまく大きな晶洞にあたり,上の標本となりました.空隙の大きさは7㎜~8㎜ほどありました.

 

顕微鏡下での拡大です.短柱状の結晶が折り重なるように集合していました.

 

こちらも顕微鏡下での撮影です.晶洞の際から結晶が生えているのが観察できました.肉眼で判別できるような共存鉱物はありませんでした.

 

 

 

以下,いくつかの産地の標本の顕微鏡写真を撮ってみました.

 

産地:京都府京都市右京区嵯峨水尾鳩ヶ巣 水尾鉱山.(非売品).

 現場はJR保津峡駅から水尾川に沿って約2㎞強,遡った北側の山にある二酸化マンガンの鉱床です.15年くらい前の雪が降る日に訪問しました.尾根に突き上げる小さな沢に入ってすぐのところに,貯鉱跡のような小広い場所があり,そこに二酸化マンガンがみられました.空隙の無い採集意欲のそそらない二酸化マンガンで,帰りかけたところ上の石を見つけてサンプリングしました.そんなわけで,当地の標本は上の写真の石が一つしかありません.2~3の空隙があって,ややはっきりした結晶が生えていました.

 

4枚目の写真の拡大写真です.はじめの美濃帯の水マンガン鉱よりややギラつきが強いので,パイロリュース鉱に変質しているのかもしれません.

 

 

 

産地:北海道島牧郡島牧村湯ノ沢鉱山(非売品)

  熱水鉱床の脈石として産した,と元ラベルにありましたが,訪問したわけではありませんので詳細は不明です.購入品.丸箱に入った小さな標本ですが,晶洞に沿って割ったのか全面に短柱状の結晶が付いています.あまりギラついていないので,水マンガン鉱だろうと思っています.

 

5枚目の写真の拡大写真です.小さな晶洞に生えた結晶ですが,かなりシャープです.この標本もほかに肉眼で判別できるような鉱物は付いていませんでした.

 

 

 

産地:青森県南津軽郡大鰐町早瀬野 早瀬野鉱山(非売品)

 

 市場で比較的多く出回っている産地の標本です.購入品.元ラベルには「水マンガン鉱仮晶」とありましたので,すでにパイロリュース鉱に変質しているそうです.顕微鏡を覗いてみて強い光を当てると,白っぽくなりほかの産地の標本よりもギラついてみえました.

 

 

6枚目の写真の拡大写真です.ギラついてはいるもののはっきりとした結晶になっていました.この標本の母岩の晶洞以外の部分は,まったく光沢の無い二酸化マンガンで,一部に繊維状の鉱物があり,轟石やバーネス鉱を含んでいるのかもしれません.

 

産地:岐阜県大垣市上石津町前ヶ瀬 千珠鉱山(非売品)

 

  4年前の京都ショーでL社で購入した標本です.現場は南北に連なる鈴鹿山脈の東側に沿って連なる養老山地にあるそうです.いつも下調べで色々お世話になっている,地調月報の古い文献に当地のマンガン鉱床が記載されているのを知っていました.顔なじみの店で標本の沿革を伺うと,「地調に記載した方のラベルがついているよ.」とおっしゃっていました.小さなサンプルですがすぐに購入しました.母岩はかなりボロボロのようで,細かい破片が下の方に溜まってした.黄色いところは褐鉄鉱のようです.球状のに二酸化マンガン(クリプトメレンか?)の表面に結晶している標本で,格好もよく気に入っています.

 

 千珠鉱山の水マンガン鉱の拡大写真です.水マンガン鉱の結晶についている球状の部分はクリプトメレンかと思いましたが,違うような感じです.横須賀石かもしれません.

 

結晶がシャープなのでもう一枚撮ってみました.手前の白色部は粘土鉱物のようです.錆びているのか仮晶になったものと違い,殆どギラギラしてませんでした.

 

産地:滋賀県甲賀市土山町野上野鉱山(非売品).

 

 購入品です.最後に塊状の水マンガン鉱です.下の方に脈状になっているのが水マンガン鉱で,はじめ見たときブラウン鉱かと思いました.産状が面白く,いいサンプル標本になりました.