鉱物の顕微鏡写真47 ―鱗珪石― | 天然鉱石専門店 ミネラルショップ たんくらのブログ

鉱物の顕微鏡写真47 ―鱗珪石―

 

 

 

 

鉱物の顕微鏡写真47 ―鱗珪石―

 

産地:島根県隠岐郡西ノ島町美田船越.(恵与品で非売品)

矢印の先についています.

 

 

Tridymite     鱗珪石

[組成]:SiO2  

[結晶系]:直方(擬六方)・三斜晶系

[色]:無色・灰色・黄灰色・白色.

[光沢]:ガラス光沢.

[モース硬度]:6.5~7

[比重]:2.25~2.28

[劈開]:無し.

[条痕]:白色.

ほか産地によって短波紫外線灯で暗赤桜色に蛍光するもの

があるそうだ.

 

 

  久々の更新です.石英の同質異像(多形)鉱物として広く産する鉱物です.いつもは初めの写真に海外産の鉱物の写真を使用するのですが,手元に適当な標本が無かったうえ,造岩鉱物なので国産モノに絞って撮影してみました.火山岩の空隙に微細な結晶をしていることが普通ですが,上の写真のように肉眼で判別できるものは少ないようです.上の写真の鱗珪石は最大約6㎜ありました.870℃前後かそれより上の温度で生成したもので,その範囲は文献によって多少の違いがありました.

 

 鱗珪石.顕微鏡下で撮影しました.

 

 西ノ島の鱗珪石は新生代新第三紀中新世に噴出した島前火山を構成する多孔質の安山岩に入っています.全体的に荒っぽい岩石で,孔にはほかに球状の菱鉄鉱?や方珪石のような粒状の鉱物も入っていました.

二枚目の写真の拡大です.

 

三枚目の写真の上の方についていた鱗珪石です.

 

2つ目の標本.

産地:熊本県熊本市西区島崎5丁目 石神山.(購入品で非売品です)

 石材としても有名な石神山の鱗珪石です.2002年頃に高速バスで熊本まで行き,地図で見ていると案外近いと思い,熊本駅から徒歩で目指して,夕立に遭って敗退した思い出のある現場です.その後に上の標本を購入しました.新生代第四紀更新世に噴出した金峰山火山を構成する角閃石安山岩の孔壁に付いています.現在は現場は公園になったとか.白っぽい安山岩で,空隙に白色―灰色の鱗珪石や角閃石が入っています.後日,お土産で頂戴した岩石標本にした石から,石灰岩を取り込んだらしく500円玉くらいの大きさのゼノリスを含んでいました.中央部は再結晶した方解石でしたが,安山岩と接する部分はウグイス色の緑簾石ができていました.

 

上の標本の顕微鏡下での拡大写真です.

 

共存ずる角閃石はパーガス閃石としましたが,ほかに弗素エデン閃石やケルスート閃石などの角閃石もあるらしく,肉眼では判別できませんでした.今回は従来通りのパーガス閃石にしています.

 

ほかの部分の拡大写真です.中央よりやや下に見える三角形は小さすぎて判別できませんでした.

 

 

 

3つ目の標本

産地:静岡県沼津市大平大井.(提供品で非売品)

 母岩とのコントラストの良い菱沸石や葡萄石・緑簾石などの標本を産した下徳倉の山に近いところからの産出とのことです.中新世―更新世噴出の安山岩の空隙に産した鱗珪石です.近くの黒い粒は変質した鉄橄欖石のようです.

 

こちらは上の標本の別の部分の拡大写真です.

 

更に拡大したものです.

 

 

 

 

4つ目の標本

産地:長崎県諫早市森山町田尻倉津 五穀岳.(提供品で非売品)

矢印の部分についています.

 

 この標本は提供していただいた方が,むかし何かの文献で当地の鱗珪石の写真を見て,わざわざ京都から鉄道を乗り継いで訪問されたとのことです.現場の様子を伺ったあとで当方で調べてみると,現場は雲仙のある島原半島の付け根当たりにある小さな山で,干拓地から山頂へ突き上げる谷付近でサンプリングされたようでした.母岩は新生代第四紀更新世前期に噴出した安山岩で,多少青色味を帯びた灰白色の粗粒な岩石です.一番大きな鱗珪石に集合体は約4㎜あり,十分に肉眼で観察できました.

 

上の標本で一番大きな結晶の集合体の拡大写真です.

 

こちらは少し画像処理しました.

 

さらに拡大した顕微鏡写真です.

 

こちらは同じ標本の別の部分の拡大写真です.六角板状に見える結晶をしています.

ほかこの標本に,方解石や白色粒状の方珪石,茶褐色鱗片状の金雲母などが入っていました.