利根川のほとり


      萩原朔太郎


きのふまた身を投げんと思ひて

利根川のほとりをさまよひしが

水の流れはやくして

わがなげきせきとむるすべもなければ

おめおめと生きながらへて

今日もまた河原に来り石投げてあそびくらしつ。

きのふけふ

ある甲斐もなき我が身をばかくばかりいとしいと思ふうれしさ

たれかは殺すとするものぞ

抱きしめて抱きしめてこそ泣くべかりけり。