● 宮 柊ニ ●


梅の花ぎつしり咲きし園田ゆくと
泪ぐましも日本人われ

笛を吹く緑の体(たい)の
小河童(こがっぱ)も

悲しからむと妄想に持つ

横浜に呼名風太郎の群れを見て
雨ふる銀座をいま歩きをり

惨たる戦争態の来らむを

知らざりし
殉死の将軍かなし

ピアノ鳴る音きこえきて現しかる
人生(ひとのよ)を思ひ

悲哀なども思ふ

プラハにて人の綴れる一文の
忘れがたくて冬過ぎにけり

雨ののち吹く風ありて風のなか
色くれなゐに顕ちてくる合歓

熱きものこみあげて来ぬ思へば

あはれ様々に人は謀りき