【土屋文明の歌集から】
言ふよりは容易ならぬ道君立てば頭をふして吾は送らむ
芝の上に子を抱く兵多くして君若ければこともなく見ゆ
君が身は国の柱としづけるかまた飄々とかえりたまへよ
この者もかく言ふ術を知れりしか憤るにあらず蔑(さげす)むにあらず
北支那より帰りし君を伴へど雪の下には採(つ)むべきもなく
風なぎて谷にゆふべの霞あり月をむかふる泉々(いづみいづみ)のこゑ
にんじんは明日蒔けばよし帰(かへ)らむよ東一華(あづまいちげ)の花も閉ざしぬ
ゆふ闇は谷より上るごとくにて雉子(きざし)につづくむささびのこゑ
老い朽ちし桜はしだれ匂はむも此の淋しさは永久(とは)のさびしさ
※ 今日は角川の「短歌」を書店にて購入。
結社賞受賞の方々の歌に目を通す。
吟味推敲された言葉の調べに、ほっとする。
意味不明の歌が目立つ時流の中に、真っ当な歌が並んでいることに安堵する。