ロシアのウクライナ侵攻で注目を浴びている兵器がある。
侵攻するロシア軍戦車をくい止めているといわれている対戦車兵器「ジャベリン」対戦車ミサイルだ。
FGM-148 ジャベリンは、アメリカ合衆国でドラゴン対戦車ミサイルの後継として開発された歩兵携行式多目的ミサイル。
1983年より開発構想が検討され、1991年に初の試射が行われた。
アメリカ軍への配備開始は1996年のことである。
主な目標は装甲戦闘車両であるが、建築物や野戦築城、さらには低空を飛行するヘリコプターへの攻撃能力も備える。
完全な「撃ちっ放し」(ファイア・アンド・フォーゲット)機能、発射前のロックオン・自律誘導能力、バックブラストを抑え室内などからでも発射できる能力などを特長とする。
ミサイルの弾道は、装甲車両に対して装甲の薄い上部を狙うトップアタックモードと、建築物などに直撃させるためのダイレクトアタックモードの2つを選択できる。
トップアタックモードでは高度150m、ダイレクトアタックモードでは高度50mを飛翔する。
ミサイルは、画像赤外線シーカーと内蔵コンピュータによって事前に捕捉した目標に向かって自律誘導される。
メーカー発表によれば、講習直後のオペレーターでも94%の命中率を持つという。
弾頭は、タンデム成形炸薬を備えている。
これは、メイン弾頭の前に、より小さなサブ弾頭を配置したもので、サブ弾頭により爆発反応装甲などの増加装甲を無力化した後にメイン弾頭が主装甲を貫通するように設計されている。
FGM-148は、CLU(Command Launch Unit)と呼ばれる発射指揮装置の部分と、弾薬の部分(LTA(Launch Tube Assembly)と呼ばれる発射筒体と、発射筒に収められたミサイル本体)から構成されている。
総重量は22キログラム。
ミサイル本体は射出用ロケットモーターによって発射筒から押し出され、数m飛翔した後に安定翼が開き、同時に飛行用ロケットモーターが点火される。
これにより、バックブラストによって射手の位置が露見する可能性を抑え、後方が塞がっている室内(高さ7フィートx幅12フィートx奥行15フィート)などからも安全に発射することができる。
ミサイルは完全自律誘導のため、射手は速やかに退避することができる。
運用は1名でも可能であるが、通常は射手と弾薬手の2名で行う。
弾薬手は、発射時の周囲警戒も担当する。
我が陸上自衛隊では01式軽対戦車誘導弾と呼ばれる。
型式名ATM-5は、防衛庁(現在の防衛省)技術研究本部と川崎重工業が開発した個人携行式対戦車ミサイル。
陸上自衛隊において、対戦車兵器としての84mm無反動砲の後継として配備されている。
防衛省は略称を「LMAT」、愛称を「ラット」としているが、配備部隊では「01(マルヒト)」や「軽MAT」とも呼ばれる。
一人の射手が肩に担いで照準、射撃する個人携行式である。システムは発射筒と重量11.4kgの飛翔体(ミサイル本体)、発射機、日本電気製夜間照準具から構成されており、総重量は17.5kg。
ミサイルを含む発射筒は照準器と一体化した発射機に簡単に着脱でき、毎分4発の発射が可能。
弾種は、対戦車弾頭のみであるが、訓練の際には、ミサイルの代わりに演習弾と呼ばれる安価な無誘導ロケットも使用できる。
弾薬手が存在しないため予備弾薬を含めれば総重量約35kg分を一人で担ぎ戦闘行動を行わなければならないという状況も存在する。
赤外線画像誘導を採用し、戦車などの装甲戦闘車両を含む軍用車両の発する赤外線を捉えて誘導するため、命中まで誘導し続ける必要がない撃ち放し能力(Fire&Forget)を持つ。
発射の際に射距離に応じて戦車の弱点である上面を攻撃するダイブモード(トップアタック)と低伸弾道モード(ダイレクトヒット)を使い分ける事ができ、二重(タンデム)の成形炸薬弾頭を搭載することで爆発反応装甲(ERA)にも対応する。
発射時の後方爆風が少ないことから掩体や車上からも発射が可能となっている。
また、普通科部隊が装備する軽装甲機動車の上面ハッチ上から発射する事も想定している。
射程は公表されていないが、近年の富士総合火力演習において距離1,000mの固定目標への射撃展示が行われている。