『大阪都構想が日本を破壊する』を読みました。

この本は、京都大学大学院教授の藤井聡 先生が
『大阪都構想』の問題点と大阪を発展させるための『大大阪』構想について解説した本です。

『都構想』の問題点と大阪を発展させるために必要なことについて理解を深めることが出来ました。

■この本で印象に残ったところは以下のとおりです。

・「都構想」が実現すれば、現在の大阪市の人々は、「政令指定都市」という仕組みで守られた多くの権限(つまり自由にやって良いこと)と財源(つまりおカネ)を失い、その結果、行政サービスが低下してしまう危険性が色濃くあるのですが、それに気づいている方は、どれくらいいるのでしょうか?(p 5)

・実際、東京では、戦争中、戦時体制下で「都区」制度に移行され、その後、権限と財源の縮小に不満を抱いた区民たちによる「都」という制度に対する反対運動が巻き起こっているのですが、その事実を知っている方は、一体、どれくらいいるのでしょうか?(p 5)

・しかも、こうした大阪市の財源と権限の縮小によって、結局は、大阪の中心核である現大阪市の衰退は決定的となる、ということも考えられるのですが、そのリスクに気がついている方はほとんどおられないように思います。(p 5)

・万一、「都構想」が実現し、その時に後悔しても、それはもう後の祭りとなります。
そもそも「市」から「特別区」に移行する法律はあっても、「特別区」を「市」に元通りに戻す法律は存在しないのです。(p 6)

・とりわけ大阪市民の方におかれましては、しっかりとご自身で、今問われているのは、都構想についてのイメージや人気投票でなく、法的に定めされた「都構想の設計図」(=協定書)についての賛否なのだという事実を認識し、その中身についてご判断いただきますことをお願いしたいと思います。(p 10)

・その上で、賛成にせよ、反対にせよ、是非とも「都構想」の住民投票に参加していただくことを心から強く祈念申し上げます。
大阪の未来、関西の未来、そして日本の未来は、大阪市民一人一人の投票によって決定されるからですー。(p 10)

・そして賛成派は、夢あふれる「大阪都構想」と呼ぶのに対して、反対派は、現実の設計図に基づいて、「大阪市廃止分割構想」と呼ぶようになってきています。
ちなみにどちらも公式名称でなく、今、賛否が問われているのは、厳密には「特別区設置協定書」です。(p 22)

・図表1 大阪都構想ー知ってほしい「7つの事実」

【事実0】住民投票の対象は「大阪市民」、それ以外の「大阪府民」は対象でない

【事実1】今回の住民投票で賛成多数でも、「大阪都」にならず「大阪府」のまま

【事実2】「都構想」とは、大阪市を5つの特別区に分割する「大阪市5分割構想」

【事実3】大阪市民は年間2200億円分の「財源」と「権限」を失う

【事実4】2200億円が様々に「流用」され、大阪市民への行政サービスが低下する恐れ

【事実5】特別区の人口比が3割の大阪では東京のような「大都市行政」は困難

【事実6】東京23区には「特別区はダメ、市にしてほしい」という議論がある

【事実7】東京の繁栄は「都区制度」のおかげでなく、「一極集中」の賜物
(p 23)

・「都構想」を選ぶのかどうかという選択を迫られている現在の大阪市民の皆様は、極めて重大な責任を負っているのです。
だから、自分たちだけでなく、日本全体、そして、子々孫々のことを考えて慎重な判断をしなければならないーそんな状況に、今の大阪市民は置かれている、というわけです。(p 27)

・今度のいわゆる「大阪都構想の住民投票」で問われているのは、この「協定書」に対する賛否なのです。
つまり、「この『協定書』通りに、大阪府と大阪市の行政を改革するか否か?」という点が、大阪市民に対する住民投票で問われるのです。
したがって、仮に「都構想」というイメージに賛同している方でも、この「具体的設計図」はいかがなものか、思ったとすれば、「反対」をしなければならないのです。(p 28)

・大阪市は、自治体の中でも、最高ランクの政令指定都市ですから、大阪市は、すでに豊富な「財源」と強力な「権限」を持っています。
これが今の大阪市の現状なのですが、「協定書」では、この「大阪市」を廃止すると同時に、5つの特別区を設置することが提案されているのです。(p 32)

・大阪市は今、政令市ですから、255億円の「事業所税」を自由に使うことができます。
都市計画を進めていますから、549億円の「都市計画税」を使うこともできます。
さらに大阪市は、2707億円もの「固定資産税」も、1259億円もの「法人市民税」も使うことができます(2014年度予算)。(p 36)

・ところが、「都構想」が実現すれば、大阪市民は、これらの巨大なおカネを大阪市の判断で使う権限を失ってしまうことになります。
なぜなら、「特別区」ができれば、それらのおカネの一部が、そのおカネでこれまで大阪市民の判断でやっていた事業と共に、いったい「府」に吸い上げられる仕組みになっているからです。(p 36)

・大阪市はこれまで、「政令指定都市」であるがゆえに様々な権限(できること)と財源(そのためのおカネ)の双方をもっていたのですが、「特別区」になってしまえば、財源と権限の一部を、大阪府に吸い上げられることになるのです。(p 36)

・どれだけのおカネが大阪市の財布から「府」に吸い上げられるのかと言えば、その金額は約2200億円(2012年度一般会計を元に2288億円と試算されている。第16回大阪府・大阪市特別区設置協議会資料より)。
これは、現大阪市の一般財源の約4分の1の水準に及びます。
その中身は、まちづくりや消防をはじめとした様々な事業です。
この2200億円のおカネを使う事業は、これまで、大阪市が行ってきたのですが、これからは、大阪府が使うようになっていく、ということになるのです。(p 37)

・「都構想」が実現すれば、現大阪市民は、自分たちが払ったうちの2200億円もの税金を自分たちだけでどう使うかを決めることができなくなるわけです。(p 37)

・大阪市という1つの自治体・共同体から「流出」してしまうのは、2200億円だけではないのです。
そのおカネを使って自分たちの判断で行ってきた「まちづくり等の権限」もまた、大阪市という1つの自治体・共同体から「流出」してしまうのです。(p 40)

・「大阪市」という1つの「共同体」は、「都構想」が実現すれば、2200億円を使って事業をしていく「権限」を失い、(3割程度の影響力しか持ちえない)「大阪府」が、その事業を行う「権限」を持つことになるのです。(p 41)

・「都構想」によって大阪市の「政令市」という保護システムが解体されれば、大量の資金と権限が、大阪市民の共同体の外に「流出」するのも、当たり前だという次第です。(p 42)

・バケツの穴から漏れた水(大阪市民の税金)は、一体何に使われるのでしょうか?
それはもう、正確には断定できません。
大阪市以外のまちづくりや福祉に使われるかもしれないし、大阪府の借金の返済に使われるかもしれませんーというより、おカネに色がないことを踏まえるなら、大阪府の借金の返済に使われることは避けがたいと言うこともできるでしょう。(p 53)

・大阪市民から見れば、これはすなわち、「都構想」が実現すると、早晩、自分たちのためにやってもらっていた様々な行政サービスが、1つずつ停止されていく可能性があることを意味しているのです。
つまり、2200億円の「流用」は、すなわち、大阪市民が受ける行政サービスレベルの低下に直結しているのです。(p 62)

・大阪府は、今、極めて厳しい財政状況に置かれています。
現在、大阪府は、大阪市よりも格段に大きな債務を抱えています。
その総額は実に6.4兆円。
しかも、その債務は近年、着実に増加してきています。(p 63)

・道路や「まちづくり」に関して言うなら、「大阪市民イコール大阪府民」ではないのです。
大阪市民と大阪府民とでは、優先順位が違うのであって、そこに「カネ」が絡めば、もめ事が起きるのは必至です。
つまり、府民と市民の間に「利害対立」が生まれるのです。(p 71)

・我が国は多数決を用いる民主主義の国です。
つまり、2200億円を取り仕切る府議会議員の議論で、何に使うのかが決められるわけです。
では、その府議会の議員構成はどうなっているかと言うと、「大阪市民が3割、それ以外が7割」となっているのです。
そもそもの人口構成がそうなっているからです。(p 72)

・今日の大阪府の状況では、現在の大阪市の税収は、都心への集中投資よりも、周辺の自治体の行政サービスの底上げに活用される可能性が高いのです。(p 73)

・大阪とは逆に、東京は、「23区」が占める人口の割合が約7割にも及びますので、都の判断に、「23区民」は絶大な影響力を持っています。
したがって、「東京都」の行政は、必然的に「23区」に手厚い対応をすることになるのです。(p 73)

・「数の論理」から考えれば、東京都のような、都心を特に重視した「大都市行政」は大阪においては期待できない、ということになるのです。(p 74)

・東京23区が、仮に「東京市」であったとしたならば、東京都心にさらなる集中投資が行われるはずなのです。(p 76)

・東京23区という特別区の仕組みは、東京23区の人々のためにあるというよりも、むしろ23区「外」の人々に税金を配るための仕組みだ、と言うこともできるのです。(p 77)

・「中央政府」にとっても、「特別区」という制度は、自分の責任を軽減してくれるとても都合が良い仕組みなのです。(p 78)

・「特別区」という制度は、特別区の人々のためと言うよりはむしろ、税金がたくさん取れるエリアから多額のおカネを吸い上げるために作り出されたという側面があるのです。(p 78)

・事実、東京23区は、共同でとりまとめた報告書の中で、「都区制度の廃止」を明確に主張しています。(p 78)

・東京23区の皆さんは、明確に「特別区なんていう制度はダメだ。もう一度、市に戻りたい」と希望しておられるのです。
では、東京23区を何らかのかたちで「市」に戻すと、どうなるのかと言えば、最終的には、東京23区民が自由に使えるおカネが増える、ということになるのです。(p 79)

・都区制度によって、大阪市民が2200億円を吸い上げられるように、東京23区の人々も、様々な行政権限と共に多額の税金を吸い上げられてしまうのです。(p 80)

・東京23区にしてみれば、特別区という制度のせいで、東京23区全体として政府からもらえるおカネが、「目減り」してしまっている、つまり「損」をしている、ということになるのです。(p 82)

・さらに、東京23区が損をしているのは、「おカネ」についてだけではありません。
「権限」も奪われて自由な投資ができない、という不利益も被っているのです。(p 82)

・都区制度が生まれて以降、財源と権限を制限されてきた特別区の皆さんは、自主的な財源と権限、つまり「自治権」を求める闘争を続けてきたのです。
そうした闘争を経て、ようやく、1975年に「区長を選挙で選ぶ権利」を手にし、2000年に市町村と同等の「基礎的な自治体」と認定されたのです。
しかしその闘争も、未だ道半ばです。
まちづくりの権限など、通常の市町村が持っている権限は、未だ与えられていないからです。(p 86)

・こうした実情を垣間見ますと、「特別区」というのは、完璧に独立した一個の基礎自治体というより、半人前の自治体にすぎないと言えそうです。(p 86)

・東京23区の豊かさは、「都と特別区」という制度によってもたらされたものではありません。
「東京一極集中」という特殊事情がもたらしたものなのです。
その豊かさは、「東京市」という政令市の保護システムがないことによって、自主財源が流出しても、それを補ってあまりあるほどの豊かさ、というわけです。(p 89)

・それに対し大阪市には、東京23区とは比べものにならないほどの「少ない人口」と「少ないGDP」しかありません。
その分「少ない自主財源」しかもっていないのです。(p 89)

・なぜ、大阪市という、政令市の保護システムを解体するのか。
多額の自主財源と、多くの権限を共に失い、さらに疲弊するだけです。(p 90)

・「都構想」が実現し、いったい市が解体され、5つの特別区に分割されてしまえば、今のような格好で、大阪市を取り戻すことは、基本的に無理だからです。(p 100)

・我が国には今、大阪市を廃止して特別区をつくることを可能にする法律は存在しているのですが、その逆に「特別区」を廃止して、「市」をつくることを可能にする法律は存在していないのです。(p 100)

・図表7 大阪都構想ー知ってほしい「7つの真実」

真実1 「都構想」は一度やったら元に戻せない

真実2 堺市はかつて「都構想」を拒否し、自分たちの「自治」を失うこと

真実3 「都構想」とは、大阪市民が自分たちの「自治」を失うこと

真実4 様々な行政の手続きが「三重化」する

真実5 「都構想」の実現で大阪都心のまちづくりが停滞し、大阪全体がダメになる

真実6 「都構想」は「大阪」という大切な「日本の宝」の喪失をもたらす

真実7 「大阪」の発展に必要なのは「改革」でなく「プロジェクト」
(p 100)

・東京23区も、「市」に戻ろうと運動を続けているのですが、なかなか認められないのです。
理由は2つ。
第一に、東京都が、それを認めようとはしません。
第二に、都区制度があるおかげで、中央政府は、東京23区が「市」であるならば支払わなければならない交付金を支払わずに済んでいる、という事情があります。(p 101)

・「都構想」が実現した後、仮に後悔しても、元に戻すことは、絶望的に難しいのです。
(p 102)

・東京23区は、東京都内のかなりの面積を占めるものとなっています。
当初の「大阪都構想」は、これを真似て、大阪市だけでなく、大阪市周辺の堺市や東大阪市、吹田市などを含めた広い範囲で既存の自治体をすべて廃止して複数の「特別区」を作ろうとするものでした。(p 102)

・今回、賛否が問われる「都構想」もまた、「大阪市民」にとってみれば、大阪市全体としての「自治」を失うことを意味しています。
(p 105)

・そもそも「自治」とは、「自分や自分たちに関することを自らの責任において処理すること」を意味します。(p 106)

・今「大阪市」と呼ばれている、大阪の都心エリアでは、100年以上にわたって、「自治」が行われてきました。
自分たちでおカネを(税金というかたちで)出し合って、教育、福祉、まちづくり等の様々な共同の事業を進めてきたのです。(p 107)

・つまり「自治」とは、「大阪市会社」という会社の「経営」をすることです。
なのに、社員(市長や議員や役人)に不満があるからといって、会社を解体して、他の企業「大阪府会社」に、2200億円分の経営権を譲り渡すと同時に、5つの小さな会社に分割するようなマネをするのは「暴挙」の類いではないでしょうか?大阪市民の「自治」の視点から今回の「都構想」を解釈すれば、そういった、不条理な「会社の解体」話と何ら変わらないのです。(p 110)

・「都構想」が実現してしまえば、大阪市民の皆さんは、大阪市長と大阪市会議員という強力な政治的パワーと、大阪市役所という強力な行政組織を自由に活用できなくなるのです。
その代わりに皆さんにあてがわれるのは、圧倒的に政治力の弱い特別区長と特別区議会議員、行政能力が必ずしも大阪市役所ほどには高くない特別区役所だけなのです。(p 112)

・「都構想」は、大阪市にとって「自治体としての自殺」とすら言いうるものです。(p 115)

・「都構想」が実現すれば、「市」と「府」の「二重行政」は幾分解消するかもしれませんが、その一方で、大阪市という「1つの役所」が解体され、特別5区の「5つの役所」ができあがり、それを通して、行政コストが高くなってしまう、ということも懸念されます。(p 116)

・「都構想」というのは、正確に言えば、「大阪市という1つの公共団体を解体して、5つの『特別区』と1つの『一部事務組合』という、複数の公共団体を作ること」を意味しているのです。(p 119)

・そもそも、「大阪府・大阪市」の「二重行政」を解消するための「都構想」だ、と言われているのに、その「都構想」が実現すれば、むしろ「大阪府・プチ大阪市役所(一部事務組合)・特別区」という三重構造が現れてしまうのです。(p 119)

・これまでは「大阪市」という1つの組織しかなく、すべての調整を大阪市内で行う「一重構造」だったのに、5つの特別区を作った途端に、プチ大阪市役所(一部事務組合)が必要になってしまい、その結果として「二重構造」が新たに現れ、さらにそこに大阪府も介入してくれば、あっという間に、何ともややこしい「三重構造」が生まれることになる、という次第です。(p 121)

・大阪市を解体し、5つの特別区に分割すれば、行政が効率化するどころか、余分にコストがかかってしまうのです。(p 126)

・収入(税収)が抜本的に上がるわけでもないままに、1つの組織でやっていたのを6つの組織でやるようになるので、様々な行政サービスの手続きが「複雑化」してしまうのです。
そして、行政サービスが複雑化し、行政コストが上がれば、それだけサービスレベルが低下します。
それと同時に、そのコストをまかなうために、様々な料金が値上がりしていく可能性も当然でてきます。(p 129)

・「都構想」は、「大阪市という自治体の解体」という側面を持っていますが、現在の大阪24区の立場からみれば、「区の消滅」という意味を持ちます。(p 133)

・「おカネ持ち」なのは、大阪市で、相対的に「おカネ持ちでない」のは、大阪市以外の大阪府なのです。(p 138)

・豊かな大阪市の財源が、借金の多い大阪府に「むしり取られていく」ことになるのは間違いありません。(p 139)

・大阪の繁栄を支える大都市行政の根幹となったのは、政令指定都市としての大阪市の強力な財源と権限だったのです。(p 140)

・大阪の都心部の開発にあたっての行政手続きも、「都構想」の実現によって確実に煩雑化します。(p 143)

・大阪市があれば、大阪市民の「自治の力」によって、大阪の中心である大阪市に集中投資が可能であったのが、「都構想」によって大阪市民の自治の力が弱まれば、都心部の豊富な税金が、大阪府全域に薄く広く使われていくようになる、ということです。(p 145)

・「都構想」で、大阪市という政令指定都市を解体することによって、大阪は、都市間競争に勝ち抜くための「エンジン」を失い、大阪の地盤沈下はますます決定的になるということになります。(p 148)

・「都構想」はいったんやってしまえば、元に戻せないのです。
大阪市という政令指定都市を解体すれば、二度と戻せないのです。(p 149)

・「大阪都構想の設計図」である「協定書」は、大阪市を解体し、その上で、大阪市の業務や財源を、大阪府が引き継ぐ分と、「特別区」が引き継ぐ分とに「仕分け」ていくというものですが、要するに、100年以上の歴史のある、大阪市の仕組みをすべてご破算にする「改革」という名の「破壊」です。(p 153)

・「二重行政」の問題があるとしても、その解消は、「都構想」を実現せずとも、大阪府と大阪市が協調さえすれば、可能であるはずです。
何も「都構想」によらなくとも、大阪府と大阪市が協力して、現状の仕組みを改善、改良することの方が、大阪の人々にとってトータルとして有益であるはずです。(p 160)

・そもそも大阪市長は、大阪府知事と同格でしたが、区長は知事より圧倒的に格下です。
だから、区長がどれだけがんばっても、知事が首を縦に振らなければ、身近なところの府道・国道事業も進められません。
つまり、「強いリーダーが少々の距離にいる」ことよりも、「弱いリーダーが近くにいること」が「ベター」だとは一概に言えないのです。(p 163)

・大阪市と大阪府の財政状況や、基本的なインフラの整備水準を見比べてみれば、大阪市以外の大阪府に、大阪市を支えるための資金的余裕などありません。(p 163)

・「改革を行うにあたって大きなエネルギー、コストが必要となり、改革それ自体によって、疲弊してしまう。そして、具体的な仕事、プロジェクトができなくなってしまう」

つまり改革には「改革疲れ」がつきものなのです。(p 165)

・大阪市という組織と大阪府の関連部局は、その2年間、住民サービスなどの業務にその行政パワーをつぎ込むのではなく、自分自身の組織改革のために、とりわけ大阪市役所について言うなら、みずからの消滅、解体のために、全力を投入しなければならないのです。(p 166)

・今回の住民投票で問われているのは、「大阪都構想というイメージ」についての賛否ではありません。
「大阪都構想の設計図」である「協定書」についての賛否なのです。
ですから、仮に「大阪都構想」というイメージに賛成している方でも、しっかり本書で解説した「協定書」の中身に疑問があるのなら、決然と「NO」の投票をしなければならないはずなのです。(p 168)

・今、大阪は、大いに疲弊しています。
筆者が幼少の頃、大阪と言えば、東の東京に匹敵する、日本の経済の中心の街、すなわち「商都」でした。(p 174)

・かつては、日本のトップ100企業の過半数が大阪に本社を置いていました。
しかし、近年、東京への一極集中が加速化するなか、ほとんどの大企業が大阪から東京へと本社を移していきました。(p 175)

・大阪がリーダーとなって、周辺都市(京神・関西)、周辺地域(四国・北陸・山陽・山陰)、そして、中央政府・国会と徹底的に連携しつつ、「日本の宝」大阪をオール関西、オールジャパンで支え、発展させ、関西を再生し、豊かな西日本を築き、強靭日本を作る。
この「大大阪構想」は、基本理念からして、「ワン大阪」という「内向きのコンセプト」に基づいた「大阪都構想」とは大きく異なっています。(p 176)

・「大大阪」五大プロジェクト
▼プロジェクト1 「リニア大阪名古屋同時開業」プロジェクト
▼プロジェクト2 「北陸・関空・四国縦貫新幹線」プロジェクト
▼プロジェクト3 「友ヶ島」プロジェクト
▼プロジェクト4 「大大阪」コア形成プロジェクト
▼プロジェクト5 「USJワールドリゾート」プラン
(p 179)

・パリも、ロンドンも、ニューヨークも、ローマも、ベルリンも、皆、東京ほどの一極集中は起きていないのです。
それを考えますと、「政治の中枢が東京にあるから」ということだけが、東京一極集中の原因であるとは到底考えられません。(p 182)

・新幹線さえ通っていればかつての大都市は、大都市のままいられた一方で、新幹線がなければ、かつてどれだけ栄えていた都市でも、凋落していかざるを得なかったのです。
こうした歴史的事実は、「新幹線」の整備が都市の発展にとって極めて巨大なインパクトを及ぼしてきたことを明確に示しています。(p 184)

・東京に接続する新幹線は、ほとんどすべて整備が完了しています。
ところが大阪に接続する新幹線は、東海道・山陽新幹線こそ開通していますが、それ以外の4つの新幹線は、すべて未完成で、着工すらまだのものばかりです。(p 186)

・本数にして、東京は放射状に4本の新幹線が整備されているのに対し、東海道・山陽新幹線を一体と見なせば、大阪は一本だけなのです。
新幹線の整備水準の東京・大阪格差が、都市規模の東京・大阪格差を生んでいる極めて重大な、決定的原因となったいるわけです。(p 186)

・新幹線で結びつけられた都市と都市の間には、様々なビジネス上の交流が生じ、経済的な都市圏の一体化が進行していくのです。(p 189)

・東京を中心に、東海方面、仙台方面、新潟方面、金沢方面、そして長野方面の街々が皆、共存共栄で発展していき、東京を中心とした巨大都市圏が、東日本に形成されていったわけです。(p 189)

・リニアの同時開業を図ることで、東京一極集中が緩和されると同時に、大阪の人口減少に歯止めがかかり、東京の人口が、大阪に20万人規模、名古屋等に十数万人規模で分散化していくことを意味しています。(p 201)

・リニア同時開業を確実なものとした上で、大阪を中心に、東海、山陽のみならず、北側の北陸、南西側の四国を新幹線で接続していこうとするのが、「大大阪」構想なのです。(p 210)

・防災対策には様々な取り組みが不可欠ですが、今、大阪が最も恐れなければならないのは、超巨大津波が来たときに、大阪平野の大半が津波で徹底的に破壊される、ということです。(p 212)

・今、大阪府議会で議論されているのが、紀淡海峡にある「友ヶ島」の位置に防波堤を一部築き上げる、という対策です。
これによって大阪湾に侵入する津波エネルギーを大幅に減殺させようというものです。(p 213)

・新大阪・「うめきた」再開発ー「大大阪」コア形成プロジェクト(p 215)

・高速鉄道インフラが、東京を超巨大都市に押し上げたという歴史的事実をしっかりと踏まえつつ、大阪を中心に、北陸、四国との間を新幹線で結び、大阪を中心とした「大大阪」圏を形成しようとする構想です。(p 222)

・「都構想」とは、要するに「政令指定都市としての大阪市の解体」であること、「大阪都」という漫然としたイメージではなく、「都構想の設計図」である「協定書」の中身に対して賛否が問われていることを、今一度、認識していただきたいと思います。(p 226)

『大阪都構想が日本を破壊する』藤井聡、文春新書


■目次
はじめに
第1章 大阪都構想ー知ってほしい「7つの事実」
第2章 大阪都構想ー知ってほしい「7つの真実」
第3章 「大大阪」が日本を救う
おわりに