冬の間の野球の練習はと言うと体育館でのウェイトトレーニング。外ではランニング、ダッシュ
が主だった。あるとき、水泳部、ボクシング部、野球部の連中でいっせいにランニングを
することになった。
淀川のほとりをただひたすら走りつづける。約10kmぐらいだろうか。
もともと、私は長距離は苦手でこのときも途中からばてばてだった。
さすがの野球部の部員も水泳部やボクシングの部員とはかなわなかった。
水泳部は水の中ですいすい泳いでいるんだから陸の上で走るぐらい
なんともないようだ。
ほんとうに心臓に毛がはえてるんだな、と思った。

しかし、わたしが水泳部に唯一勝てるものは・・・それはマージャンである。
冬の練習のない水泳部は冬眠している?
そんなことはない。彼らの部室にはちゃんとやぐらこたつがあって
そこでマージャンをしているのである。

部屋をのぞくとまた、やってる。そういう日がいつもだった。
しかし、レベルが低すぎてどうにもならない。
チーとポンをまちがえたり、チョンボもお手の物。
うしろにたってある日彼らの対局を見ていたときのこと。
リーハイして並べかえていると、なんとこいつ、すでにあがっているではないか。
天和である。もう、すでにあがっているにもかかわらず、牌をかわに捨てようとした。
わたしは、思わず「あーーー」とうめいた。
生まれて初めて見た天和がくずれようとした瞬間だった。
お前は役満を知らないのか?
いやはや、マージャンのコーチもさせていただいた水泳部の部室の
楽しい思い出だった。