こんにちは、たにえんです。

今回はレゴで作った艦上攻撃機「流星」について解説します。

 

<元ツイート>

https://x.com/Ravine_garden/status/1691390517429583872?s=20

 

 

<概要>

 B7A1流星は、第二次世界大戦末期に中島飛行機が開発した艦上攻撃/爆撃機です。当時の日本海軍(大戦期日本に空軍はありません!) では、運用効率化の観点から、艦上機において従来分けられていた爆撃機と攻撃機の統合が構想されていました。

 本機はそれに基づいて開発され、要求性能には2名での運用や爆弾と航空魚雷の搭載能力など、順当な要項に加えて、攻撃機としてはハイレベルな空戦性能が求められました。重爆以外のあらゆる機種に破格の空戦性能を求めるという要求志向は大戦期の日本機にありがちな一方、現代のマルチロールファイターに近い思想も感じます。

 

 さて、プロジェクトに色々要求しすぎると失敗するのは人類史の中で幾度となく繰り返されてきた出来事ですが、流星の場合はそれには当たらず、2000馬力級航空用エンジン「誉」の搭載や、主任設計者尾崎紀夫氏の努力によってどうにかモノになりました。その代償と言って良いかは分かりませんが、艦上機にもかかわらず本機は大重量のため当時の帝国海軍のどの空母からも発艦出来ない機体となりました。実際の流星は極端に重い機体という訳でもなく、当時の日本が大重量の艦載機を射出できるカタパルトの開発に失敗したという要因の方が大きいのですが、ともかく結果は同じですね。

 戦争最末期には他の多くの機体と共に東京防空や特攻に使用され、終戦当日の朝に飛び立った最後の特攻機がこの流星だったとされています。

 現存するのは一機のみで、米スミソニアン博物館の倉庫でレストア待ちの状態のものが保存されているようです。

 

 ちなみに名称には旧軍の制式兵器呼称でいう所の爆撃機を表す「○○星」が付いていますが、個人の好みで当ブログでは攻撃機と呼ばせて頂きます。爆撃機より攻撃機の方が素早い感じがしてカッコ良くないですか(?) あとなんといっても流星という響きが良すぎる。英語にしてもシューティングスターですよ、シューティングスター、強さとかっこよさと美しさが詰まったこの命名は最高にシビれます。

 

 

さて、本作の製作上のコンセプトは

・片手持ちで空戦ごっこが出来る強度

・実機のギミック完全再現

・月光と同じスケールでの再現

です。このうち最も製作が難航しそうだったのが空戦ごっこをするための強度の実現です。この作品で最大のネックが特徴的な逆ガル翼の部分で、ここの強度熟成には多くの時間と1パーツの妥協もない徹底的な作りこみが行われています。作品規模的にも大型な部類に入るので強度確保は必須かつ難題であり、完成した今思えば最もカタルシスを得た部分と言えるでしょう。

 

<構造> 

 最大の特徴はやはり逆ガル翼でしょう。史実では機体下部にスペースを確保しつつ、着陸脚を短くする為に採用されました。同時期のF4Uコルセアでも採用例がありますが、本機はそちらよりも角度が緩く設定されており、また違った印象を与えます。製作ではこの流麗なシルエットの再現に力を入れました。同時に本機は中翼配置でもあります。

 

 胴体と主翼は3カ所のクリッププレートで固定されています。固定には胴体側のブラケットと翼側のポッチスロープを噛み合わせることで、角度決めと隙間埋めを同時に行っています。これによりロックヒンジでは出せない角度を作ると共に、逆さに持っても翼が自壊しない強度を持たせています。

 最初に書きましたが、翼と胴体の固定部は3か所しかないので、分解・輸送・整備は割合しやすい構造となっています。バチッッとくっつけるだけで取り付けることが出来、感触もなかなか気持ち良いので気に入っています。

 

 翼中間の折れ曲がり部分にはロックヒンジを使っています。ヒンジ部の隙間を埋める為に翼端の折りたたみ部分から先が半ポッチ丸ごとずらして接続しているのと、フラップや主脚の取り付け基部が集まっているため、主翼を下から見るとこの部分はやたらごちゃごちゃしています。

 

 月光には艦上機おなじみの翼折りたたみ機構があります。見た目のスマートさと強度の観点から関節部にはペグ穴付1×2プレートを使い、固定にはクリップを用いています。艦載機は翼折りたたみが目を引きますし、シチュエーションの変化も見せやすいのが美点だと思います。

 

 主脚の構造や収納方法は工夫した所なので少し詳しく解説します。流星の主脚は内側の主翼に引き込まれるため、90°以上の可動域を必要とします。普通のクリッププレートでも90°以上動きますが、主脚の受けが強度的に弱い主翼外側に来てしまいます。それでは構造再現的にも色々とよろしくないので、1×2プレート上クリップと2Lバーを使い主脚の接続部を胴体側に設けています。

 

 流星は当時としては珍しくセミファウラーフラップを採用していました。セミファウラーフラップとは、下に向かってせり出し垂れ下がるように動くフラップ形式で、現代の旅客機においては中型機以上の殆どが装備している非常にポピュラーなものです。本作ではボールジョイント付きバーとミクセルジョイントにより、せり出しつつ角度を変えるような動きまでしっかり表現しました。

 

・胴体

 胴体は前半が微分組み、後半が積分組みとなっています。流星は風帽の縁が↗↘_↗⇀⇀↘_↗のように変化する特徴的な形状をしています。側面上部はカーブスロープとポッチスロープを併用し、高さも0.5プレートずつ調整することでこの形状をクリアしています。

 

 また風帽の隙間はできる限り減らしました。後部の二式13mm対空機銃架は実機と全く同じ構造とし、回転風帽のギミックは差し替えによって表現しました。

 

・機体下部

 機体下部には爆弾倉があります。流星は従来の艦爆と違い、爆弾倉を採用したことで爆装状態でも空気抵抗を低減していたのが優れた点と言えます。爆弾倉扉も可動し、二重関節式とすることで、実機同様に開きつつ横にスライドする動きを再現しています。

 

・尾翼

 今作では垂直・水平尾翼共に新しい構造を採用しています。実機の角度はウェッジを素直に組み合わせるだけでは再現出来なかったため、他の方の作品を参考にしつつ補助翼そのものに角度を付けたような作りとなっています。(追記:参考にした本人に見せたら構造がキモイ、とのことでした。)

 

<制作中の写真>

製作期間はおよそ4か月です。極初期の構想段階も含めると半年くらい掛かった気がします。

ミニフィグが座った状態にスケールを合わせて

おおよその形に板を貼って尾翼などの位置を決め...

タイル張りで滑らかにしつつ、一部は微分組みに変換

着陸脚や爆弾倉などを取り付けて、

☆☆☆☆☆☆完成!☆☆☆☆☆☆

 

<まとめ>

 本作はツイッター(現:X)での本発表に先立つJBF2023で初公開しました。飛行機作品としては二機目ですが、一機目の月光の要素を踏まえつつ逆ガル翼や折りたたみ機構など新しいギミックに挑戦し、これまでに無いハイクオリティな作品に仕上げられたと思います。今後は雷撃も爆撃も空戦も出来る流星の特徴を表現できるように展示の方を工夫していけたら良いなと思います。あとは大戦機だけで無く現代ジェット機も作ってみたかったり…?

今回はここまで、ではまた~。