こんにちは、たにえんです。Twitterで拝見するレゴラーさん達の作品解説がどれもとても面白いので自分もブログを書いてみることにしました。サボっている内に一年経ってしまいましたが、自分の制作ペースに置いてかれないように適宜更新していけたらいいな~と思います。


 さて、初回の今回は今までにツイッターへ投稿した作品の中では最も反応が大きかったVK16.02レオパルト偵察戦車のラジコンの解説です。
<投稿時のツイート>

 

 この作品は元々三重で開かれるレゴRCレースオフ会である津オフ2021(仮)に向けて製作していた作品です。部分試作段階で1kgを超えることは分かっていたので、大きさ・重さ・速さを生かして他の出走作品を追い回して粉砕するラムアタックマシンを想定していました。惜しくも2020年を最後に津オフは開催されなくなったので、今作の本来の役割を果たす機会は失われたままですが…
 ああ、あと自分が作った5幅履帯を使ったラジコン戦車としては5作目にあたり、 ついに安定した動作ができるようになった記念すべき作品でもあります。それまでの4台のあれこれについてはまた紹介する予定なのでお楽しみに。


<概要>

          
 VK16.02レオパルトは第二次世界大戦末期のドイツで開発された偵察用軽戦車です。遠目にはティーガー2やパンターといった有名な戦車に似ているので強そうに見えますが、実際の重量は16tと戦車の中では軽い部類にあたり、主砲も60口径5cm戦車砲が計画されるなど見た目に反して意外とおとなしい性能だったようです。史実では 戦局の悪化によって、パンターなど主力級の中戦車の生産が優先されたため計画は中止され、砲塔のみが完成しました。今作の車体造形やディテールなどは青写真やWorld of Tanksという戦車ゲームに登場する本車両を参考に再現しました。縮尺は転輪や履帯のスケールに合わせて特に決めずに作りましたが、完成品を測るとおよそ1/22になっているようです。

<構造>

     


 主な造りとしてはシステムパーツの順組みで、一部をテクニックパーツで補強した構造となっています。

元々競争&体当たりを目的とした作品なので、軽量化と強度はディテールと相談した上できちんと考慮してあります。電源には単三電池ボックス、動力には走行用のPFL モーターと砲塔ギミック用のPFMモーターを2つずつ使います。モーターとバッテリーはバランスを考えて前後端に分けて置き、45:55くらいの重量配置となっています。

 

・横から。後ろが重いのと撮影時はサスペンションがへたり気味だったのでほんの 少しだけ車体が後ろに傾いています。

        

 砲塔は造形に悩んでいたところ、さくりんさんという方が作られたティーガーIIの砲塔の作例を見つけたのでそれを参考にさせて頂いています。

 

<各ディテール>

↑画面中央の焦げ茶色の柄の器具はワイヤーカッター(ドイツ戦車に特徴的な装備)

 

 
 右側の冷却ファンの中に電源スイッチが入っています。赤外線受光器はバッテリーの上に乗っているため少し飛び出ています。整備や説明をしやすくするために車体の天板は簡単に外せるようにしました。

 

           
 ターレットリングには昔のシティシリーズのクローラークレーンのターンテーブルを使っています。以前どこかのレゴラーさんが潤滑油の代わりにターンテーブルにマーガリンを塗っていたのを思い出したので、旋回部分にはリコーダークリーム(ABS樹脂用)をさしてみました。
          

<砲塔ギミック>

      
 砲身をラジコンで動かしたい時、操作するアクチュエーターの配置で悩むと思います。砲塔内にモーターを置く方法もありますが、砲塔を回し続けるとコードがねじ切れてしまうので全周旋回砲塔には具合が悪いです。僕は回転に制限を掛けたくなかったので、モーターを車体側に設置して無制限に回せるようにしました。(ターレットリング内にシャフトを通すので別途機構の小型化は必要になりました)


 上下に動き砲身の角度を変えるアクチュエータは一旦途中を2Lテクニックシャフト&アクスルピン(スムース)で繋ぎ直し、砲塔を回した時に軸に掛かるねじれ方向の力を滑らせることで回転の制限を無くしています。 (←の部分)
         


<サスペンション>
 ドイツ戦車の中でもパンター系の車両は上等なダブルトーションバーサスペンションを装備していました。乗用車でもハイエースなんかがトーションバーサスペンションを積んでいますね。今作では初めてトーションバーサスペンションに挑戦しました。製作にあたって最も時間を掛けた今作の目玉ギミックです。

 テクニックシャフトを互いに反対向きにねじろうとする際の反発力をサスペンションに使います。サスペンション1セットあたりの部品点数は6パーツと単純かつ丈夫で、テクニックシャフトも比較的安価な部品なのでもし壊れた際の交換も簡単に行うことができます。ただし第一転輪のサスペンションだけは特に大きな衝撃が掛かる

ため、トーションバー+ゴム製ブッシュ式とし、吸収力を高めています。
        


単純な再現性の話だけでなく、1㎏を超えるようなラジコンでは走行装置にかかる負担もかなり大きいため、トーションバーサスペンションのような上等なサスペンションで少しでも負担を減らしておくのは理にかなっているのではないかなと思います。


<履帯張度調節装置>
 ウォームギアと8歯ギアを使い、左右で独立して履帯のテンションを変えることが 出来ます。
↓実際と同じ(!)ハッチから調節可能

 
           張度調節用のクランク棒は車体装備品の一部として収納可能なのがポイント↑


<その他こだわり>

 ディテールにもこだわった本作では外装のチリあわせにも力を入れました。

 

・1×2逆スロープと1×2ブロックの角度合わせ


・砲塔上面のチリあわせ

砲塔側面装甲の形に合わせて砲塔の天板は0.5ポッチずらして接続しています。

 

<製作過程>
製作期間は休眠期間を除くとトータルで1年と3ヶ月くらいです。作っている途中で機構の配置を大きく変えたり、思い付きで急にギミックを付け足した所もありましたが、全体的にラジコン的な面白さとディテールのバランスを上手くとることが出来たかなと思います。

 

とりあえず動くようになった頃。駆動系のテストが目的だったのでガワは適当です

 

車体天板を仮設置し、仮砲塔で位置決めとバランスの確認。

 

ギミックと小物類は大体完成したものの、何か違和感があるのと受験期でこの後しばらく休眠。まだ完成版に比べて転輪の数が少ないのも特徴。

 

 

雪の中で走行テスト。最初は機構が上手く小型化できず、やむを得ずトレインバッテリーを使っていたので電池持ちが最悪でした。外装はこの後全て作り直しています。

完成直前のショット。砲身がゲーム内仕様の3cm機関砲になっていたり、クランク棒が左に付いていたりと微妙な違いがちらほら。

 

完成版(左)と本物(右) 

あまりモデルになった車両のことを知っている人はいません...(計画・試作止まりなので当たり前と言えばそうなんですが)

 

 

      (↓好きな写真)

     

<まとめ>
 2020年7月の発表以来いろいろな展示会で走らせていますが、頑丈で大きな故障もせず爆走してくれているお気に入りの作品の1つです。展示会で動かしている時に  集まってくれるちびっ子達はもちろん、自分がラジコン戦車を作り始めた年齢くらいの子に興味を持って貰えたりすると特に嬉しいですね。2022年時点では完成からしばらく経ったので、そろそろ代替わりさせようかなと思っていたりもします。近い作風では歯車さんという方がデカRC戦車を作られているので、そちらともいつか並べさせて頂いてみたいですね。
今回はここまで。ではまた~。