もう手遅れなのか
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」は、我が国の将来の人口規模や年齢構成等の人口構造の推移を推計している。このうち、中位推計(出生中位・死亡中位)では、合計特殊出生率は、実績値が1.45であった2015(平成27)年から、2024(平成36)年の1.42、2035(平成47)年の1.43を経て、2065(平成77)年には1.44へ推移すると仮定している。最終年次の合計特殊出生率の仮定を前回推計(平成24年1月推計)と比較すると、近年の30~40歳代における出生率上昇等を受けて、前回の1.35(2060(平成72)年)から1.44(2065年)に上昇している。
この中位推計の結果に基づけば、総人口は、2053(平成65)年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人になる。前回推計結果と比較すると、2065年時点で前回の8,135万人が今回では8,808万人へと673万人増加している。人口が1億人を下回る年次は前回の2048(平成60)年が2053年と5年遅くなっており、人口減少の速度は緩和されたものとなっている。
白鴎大学の川本敏氏は「少子化脱却は喫緊の国民的な課題である。 わずかではあるが2006年から改善傾向にあった合計出生率は、2016年か ら改善が足踏みしている。出生数、人口数も減少傾向を続けており2017年 は著減している。このままでは希望出生数1.8の達成は極めて難しく、100 年後には東アジアの老小国となってしまうであろう。 危機意識を持つ識者中にも戦略的な人口縮小論が台頭している。少子化 脱却への社会的意欲が失われれば、少子化が少子化を呼ぶ「少子化の罠」 に陥ってしまう。 少子化は徐々に効いてくるので真剣な対応が遅れがちである。消滅の危 機に際して生物や人間社会には組み込まれた対応力、反転力あるはずであ るが、この発現は危機的状況が日常的に感ぜられるようになってからであ る。それから「合成の誤謬」に気づいていたのでは取り返しは不可能である。幸いに、フランスやスウェーデンのように少子化を改善して人口がほぼ 安定状態になっている国もある。 未婚化・晩婚化の流れを食い止めて改善に向かわせることができるかが、 少子化脱却の鍵である。要因分析、費用対効果分析を徹底してその成果の もとに、これまでの少子化対策の体系を見直して、新たな体系のもと効果 的な対策を進める必要がある。 そのためには、政権トップのリーダーシップや少子化担当大臣等の積極 的な役割が欠かせない。地方や地域、企業の新たな取り組みも期待される。 総理大臣を議長とした、月次の少子化対策フォローアップ閣僚会議の開催 も必要である。 また、少子化に関する原因分析、政策効果分析、国内外の動向分析など を継続的に行う世界有数の少子化問題研究所を創設して、合理的な政策立 案、問題解決に貢献していくことも大切である。」と述べている。
初めての人口縮小
近代社会は有史以来の稀有な人口増加(人口爆発)を前提として発展を遂げてきた。経済大国とは、言い換えれば人口の多い、つまり大きな市場を持つ国が、製造業など近代的生産手段を手に入れ、生産活動を活発化させた国家のことである。したがって、人口減少による長期にわたる経済の縮小は、近代国家にとって始めて経験する出来事なのである。
人口縮小は先進国からの没落、大国から小国へ転落と考えることは妥当なのであろうか。明治初期の日本の総人口は3千800万人程度であった。その後、戦争中の一時期を除き、2015年の1億2700万人まで人口は増え続け、このままでは100年後に5千万人ほどまでに縮小する。縮小する国家は貧しい国家になるのか。少なくともグローバル企業は世界中で経済活動を行い、発展を続けることは問題ない。企業が儲かっても、国家や国民が豊かにならないのは、アメリカ型グローバル化が原因である。つまり、日本企業が日本国や日本国民のために経済活動を行えば、人口は少なくなっても、経済の縮小は起こらない。しかしそれは、他国で稼いだ利益を日本国内に持ち込むという意味で摩擦や対立を生み出し実現不可能なことである。
生産性の向上とAI化による自動化で経済発展は出来る
少子化によって生じる諸問題は、AIによる経済の発展で解決可能である。生産労働人口は2000万人減少すると考えられるが、ロボット自動機械などの開発で経済活動は維持できる。そのためにはベーシックインカムなどを動員して、国民の所得を大幅に増やし、消費を拡大し続けることが重要である。それによって年金問題、格差の問題等を解決できれば、その後の安定した豊かな社会を構築することは困難ではない。
移民の導入
10年ほど前の議論で日本は移民を受け入れないという合意が出来上がった。その後、再び議論がなされ、移民を受け入れようということになっって、現在200万人の外国人労働者が国内で働いている。問題は社会的問題を引き起こす、外国人労働者に対する賃金差別や格差の容認である。彼らが日本に定着し、日本人として誇りをもって生活していけるよう、そして日本人は異文化を受け入れる度量を持つことが求められる時代になったのである。