アブリルの死 | ピアソラの蜜柑

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オレンジの街での生活

昨日アブリルが天国にいきました。

実は2ヶ月ほど前から症状が明らかに悪化し始め、
1ヶ月ほど前からはもう後ろ足で立ち上がれなく寝たきりになり、
垂れ流し状態でおむつをつけて生活していました。

日に日に筋肉がなくなっていき、足は骨と皮だけに、毛も抜け落ち、
顔の筋肉もなくなり大きな目は飛び出したようになり、おなかだけがぽっこりとしていました。
薬の副作用かあちこちの皮膚が破れはじめ出血したり膿が出たり・・・

獣医に言われるまでもなくアブリルが壊れ始めていることはよく分かりました。

それでもまだ食欲もあったし、垂れ流しで世話は大変だったけど排泄もしていました。
顔の表情もまだ目に嬉しそうな光もあったし、喜びの感情も感じられていました。

しかし今週になり、足が突然紫色になって痛々しくむくみ始め、
月曜日に毎週のように通っていた獣医のオスカル氏のところへ連れて行くと
中で既に内出血をおこしていてどうしようもないとのこと。

アルバロ男爵はもう既に分かりきっていた事実でしたが、
今まで直接アブリルの死について触れなかった
オスカル氏にいくつかのことをはっきりと確認してきたそうです。

オスカル氏曰く、この一年半の間に2度の手術を含め、できる限りのすべての治療をしてきたこと。
やるべきことはすべてやり尽くした。
ここからはこちらからの指示を待ちます、とのこと。

私は聞かされていませんでしたが、この時様々な「その時」が来た時のことや
事後のこともアルバロ男爵はきちんと聞いていたようです。

私は今週は心の準備をするので精一杯でした。

毎日のようにぜいぜいとひどくなっていく辛そうな息使い、
ウンチには血が混じり、内臓も壊れ始めていることが分かりました。

水曜日からはいやいやずっと飲み続けていた薬も一切やめました。
いまさら薬を飲んで一体何になるというのか?

私たちの中ではアブリルが本当に痛みはじめたら
オスカル氏のところに連れて行き、楽にさせてあげようと決めていました。

なんとも辛い1週間でした。

木曜日には水しか受け付けなくなり、金曜日はウンチも出なくなり、目に光もなくなってきました。

かわいそうなアブリル・・・。

金曜日の夜は上等の肉を買い、
アブリルの大好きなバーベキューをし、ワインで乾杯しましたが食べる力もなかったようです。

それとも既に何かを感じていたのかもしれません。

そして土曜日の朝、アブリルはやっと楽になることができました。

私は獣医に行く心の強さは持ち合わせていなかったので家でももちゃんと待つことにしました。
アルバロ男爵は洗濯したてのきれいなピンクの毛布にくるみ、アブリルを連れて行きました。

アルバロ男爵はずっと冷静を保っていましたが、
家の扉を出たとたんもう堪えきれなくなり号泣だったそうです。
どれだけ引き返したいと思ったことか・・・と。

最後までアブリルはすごく強く、いい子で、まるで楽になれることを待ち望んでいたかのように
いつもなら不安で診察を嫌がり、私たちにしがみついてくる診察台の上で
微動だにせず、とても静かにアルバロ男爵に優しく撫でなれながらその時を迎えたそうです。

犬一匹死んだくらいで・・・と思われて笑われるかもしれませんが、
まったくもって私たちふたりしてぼろぼろと大号泣でした。

後からアルバロ男爵はアブリルがその日の朝、
「ここまでがんばったんだからもういいでしょ?早く楽にして。」
と言っているのを感じたと言っていました。

私も朝、アブリルをシャワーできれいにし、きれいに乾かして毛をとかし終えた後、
ソファの上からなぜかじっと長い間私を見つめてそんな風に言っているように感じました。
利口なアブリルはすべてをちゃんと理解していたような気がします。

最後まで本当に本当にいい子でした。

遺体は私たちが引き取り、
イバンとサブリーナの車でバレンシアから30キロほど離れたTORRES-TORRESという村の山奥へ
埋葬しに行きました。

見晴らしのいいきれいな空気の山の上へ上り、
とても静かで誰も踏み込んでこないようなかなり山奥の木の下に埋葬しました。

踏み荒らされないように大きな石をそばに置き、
その上には私が家から持っていったサボテンを植えました。
イバンはひまわりの種を植えてくれました。

ひまわりが咲くといいなぁ。

その後はいつもの村のおいしくて安いパエージャでアブリルに乾杯します。



ここなら週末パエージャを食べに来るたびにアブリルのお墓参りができるので安心です。

しばらくはぽっかりとあいたいつものアブリルの場所を見るたびに涙が止まりませんが、
もうこれでアブリルは苦しまずに静かに眠っているだけなのだと言い聞かせ
気を取り直して夏を迎えようと思います。


こんな空気のきれいな山の中。



アブリルのお墓。



トーレス・トーレスの教会。


去年の夏、まだ元気だった頃のアブリル。

ミズエ