今日は大変な一日でした。
スペインでは12月24日と1月6日にクリスマスプレゼントを贈りあう習慣があります。
その第1回目の24日に向けて
有り金すべてつぎ込んでプルガは最後の大規模な仕入れを行いました。
ロベルトとメリは今週の月曜日の早朝からバルセロナまで往復700キロを車で日帰りし、
一日中駆けずり回ってあちこちに頭を下げ(借金があるところも多いので)仕入れをしてきたのです。
速達扱いで余分にお金を払い、
宅配会社に火曜日の午後にバレンシアに到着する手続きをしてきたそうです。
それが火曜日になっても着きませんでした。
メリはイライラしながらも12月はどこもかしこも繁忙期なので仕方ないと諦め、
シフトを見ながら、翌日水曜日の朝からバイトに入っていた私に
「明日は朝バルセロナから18箱荷物が届くから
それを午前中の間に私とミズエとモンチョの3人でさばくことになるから心の準備をしておくように。」
と言い渡されていました。
水曜日、仕事がしやすいように髪もきちんと束ね、朝の掃除も猛スピードで終らせ
準備万端で私とメリは今か今かとに荷物の到着を待っていました。
それがいつまで経ってもやってきません。
メリはイライラの頂点に達し、ヒステリックに叫び始めました。
お客さんはどんどん入ってくるのにお店はからっぽで売るものがないのです。
バルセロナに電話をすると18箱はもうとっくの昔に発送したとのこと。
宅配会社に電話をかけてもラインが混線しているのか全く繋がらないそうです。
運良く繋がっても皆出払っているようで
対応に出るのはアルバイトのような頼りのない女の子で
18箱は一体どこへ行ってしまったのか全く埒が明かないそうです。
水曜日は私は結局何もすることがないまま午前中のバイトが終わり、
「午後は役立たずのオヤジ2人組のマエストロとムショ帰りのへスースだから
メリはまたヒステリックになって大変なことになるだろうなぁ・・・」
と思いながら家に帰りました。
翌木曜日の夜、昨夜ゴルの家に行った後、
タンゴ・イ・トゥルコで軽くビールを飲んで帰ろうとすると入れ違いに丁度マエストロが入ってきました。
ミ・「よ、マエストロ!今日は忙しかった?」
マ・「忙しいもなにも、ゴルダ(デブ女の意)キーキー喚いて全くウンザリしたさ。
荷物が届かねーくれーでヒステリーおこすなっつーの!あーつかれたーっ!」
ミ・「マ、マエストロ!まさかバルセロナからまだ18箱届いてないのっっっ!?」
マ・「こねーもんはこねーんだ!神様がそう決めたんだろうよっ!」
この人と話していても埒が明きません。
もう24日まで3日しかないのに売れ筋の商品が大きな段ボール18箱分届かなかったら
メリでなくてもヒステリックになることでしょう。
そして今朝バイトに行くとメリはもうヒステリーを通り越して笑っていました。
メ・「もう私は知らない!どうにでもなれ!あはは~!」
既に頭の血管が2,3本切れてしまった様子です。
こういう時が実は一番怖いんです。
ロベルトも真っ青な顔をして宅配会社に電話をかけ続けています。
暖かい家で冬眠していたゴルまで起きだしてやってきました。
結果、速達扱いの18箱は手違いで宅配会社の倉庫で丁寧に保管されていたそうです。
宅配会社のアルバイトの女の子のセリフ。
「ご心配要りませんよ、こちらできちんと丁寧に問題なく保管してありますから。」
メリは怒りの心臓発作で死ぬかと思うくらいの勢いでアルバイトの女の子に罵詈雑言を吐き続けていました。
その2時間後、18箱がやっとプルガに到着しました。
メリは全く関係ない宅配会社の配達のお兄ちゃんにも八つ当たりで顔を真っ赤にさせて
ツバを飛び散らしながらありとあらゆる罵声をあびせかけ、最後にはうひゃひゃひゃーと笑っていました。
この時期のこの3日間の遅れはプルガにとってとんでもない損害だったことは間違いありません。
メリは「運が悪いとしか言いようがない・・・。」とかわいそうに涙ぐんでいました。
しかし泣いていても始まりません。
今一番重要なことはとにかくひとつでも多くの商品を売り場に出すことなのです。
それにしてもクラッとくるくらいものすごい数の段ボールです・・・。
チェロとモンチョを緊急にアルバイトに呼び出し、
私一人をレジに置いてお金の計算とお客さんを全てまかされ、
あとのメリ、アンドレア、オスカル、チェロ、モンチョ、5人がかりで荷解きを始めます。
荷物を解いていくはじからどんどん売れていきます。
まだ値札もついていない商品がレジに次から次へと差し出されます。
6時間以上レジが途切れることはなく常に長蛇の列で私は孤独にレジでマシーン状態です。
助けを呼びたくても皆手一杯なので呼べません。
昔から暗算は大の苦手で算数もさっぱりできなくて、
10以上の足し算はさりげなく指を使わなければできなかった筈なのに
火事場のクソ力とでもいうのか頭の中は冴えきっていてレジに打ち込む前に一瞬で回答が出ます。
右手と左手で同時に2人のお客さんのおつりをさばき、その合間にカード清算をしていたりもしました。
そんな自分にかなり真剣にびっくりです。
人間本当に追い詰められると意外と結構なんでもできてしまうものなんだ、
ということが今日改めて良く分かりました。
3時間延長で夜7時まで働き、一瞬お客さんが途切れた隙にやっと抜け出すことができました。
先ほどメリからメッセージが届きました。
レジを閉めると誤差はなんとプラス2セント(約3円)のみだったそうです。
「今日はお疲れ様、よくがんばってくれました。ありがとう。」とのことです。
私もやればできるじゃん!
人間その気になればなんだってできるんです。
ミズエ