私達3人は2枚の紫色をした500ユーロ札を囲み沈黙していました。
ア・「今からメリが来るって。もしこれ偽札だったら私セップクするしかないわよね・・・。」
もう目に涙がたまっています。
ミ・「いや別にあんたがセップクしても仕方ないじゃん。別にあんたのせいじゃないし。」
ア・「でもでもでもでも・・・ああ!神様!!!私は死んでお詫びするしかありません!!!」
ア・「メリは買い物の仕方が明らかにおかしいって言うの。
例えば金持ちが気まぐれで高級デパートでこういう買い物をするのはおかしくないけど
プルガで、このプルガで!なにもよりにもよって共産党のマリファナ屋で
こんな買い物の仕方は明らかにおかしい。
もしくはドイツ人とかスウェーデン人とか外人の金持ちがジョークで国へのお土産で
買うならともかくあの家族明らかにスペイン人だったわよね・・・。
冷静に考えれば考えるほどおかしいって・・・・ああああああああああああ!!!!!」
事実、ワガママなゴルのタンゴ・イ・トゥルコのせいでプルガも会社も今火の車なのです。
もしも本当にこの2枚が偽札だとしたらもうとんでもない損害です。
15万円分の商品は勿論、おつりで渡した200ユーロまで損失するのです。
2枚をじっと見比べるアンドレアとリカルドと私。
プルガの運命を賭けた世紀の日曜日の朝刊の間違い探しスタートです。
リ・「あっ、これここおかしくない?」
ア・「ああ!ジーザス!」
2枚のお札を見比べると端の白い部分の幅が明らかに違うのです。
ついでに一枚のEUマークの部分に白い印刷ミスらしい小さな傷がついており、
同じお札には紫色のインクの染みまで付いています。
リ・「少なくともこの一枚は偽札じゃないか?」
アンドレアは顔面蒼白で卒倒寸前です。
メリが到着しました。
相当すっ飛んで来たらしく
ノーブラ、ノーパンでセネガルのあやしげな緑色のムームーのようなものを着ています。
ついでにスリッパのままです。
そんなことはおいといて。
今度は4人で間違い探しです。
確かに見れば見るほど片方のお札の色がおかしいように思えます。
メリももう泣きそうです。
メ・「あ、そうだ!隣のバルに偽札見分ける機械置いてあったわよね!ミズエちょっと行って来て!」
ミ・「了解!」
ミズエ選手、脱兎の如く駆け出します。
隣のバルでは仲良しのウェイターのお兄ちゃん達が3人でカウンターにいます。
ミ・「これ偽札かどうか機械で見分けて!」
3人・「わおーーーーーーー!!!ビン・ラディンだ!しかも2枚!!!!!」
500ユーロ札はスラングでビン・ラディンと呼ばれているそうです。
3人は興奮して嬉しそうに手にとって喜んでいます。
ミ・「ちょっと!こっちは必死なの!中でチビとデブが卒倒しかけてるんだからっ!さっさと見てっ!」
機械に写してもどうも微妙な反応のようです。
すると中の1人が白い紙にビン・ラディンをこすりつけます。
「あ、これ偽札かも・・・」
皆無言。更にこすり続けます。
「あ、いやちょっと待て!大丈夫本物と思うよ。」
彼曰く、本物だと紙にインクが付くそうです。
贋物なら付かないそうです。
ほんとかよ・・・?
もう時間も時間でこれ以上間違い探しをしても仕方ないし、
「すべては明日の朝、銀行が答えを出してくれる。」
ということで私達は解散しました。
今朝、メリに会うと昨夜は一睡もできなかったそうで今朝は銀行開店の朝8時半には
既に銀行の前でスタンバイしており、口の中でぶつぶつと神様に祈りながら
執行台に曳かれる死刑囚のような気持ちで窓口に立ったそうです。
結果無事通過しました。
少なくとも銀行は無事に通過しました。
もう手元を離れたらこっちのものです。
メリ・「実はね、今日は3つのまとまった額の結構きつい振込みの最終期限日だったの。
もうお金なんて何処探しても一銭もないし、どうしようかと思ってて・・・。
でもないものはないし、明日は明日の風が吹くって開き直るしかなかったのよね。
ひょっとしてあの家族はプルガを救う為の神の使いだったのかもしれない・・・。
私、全く信心深くないけど今回だけは神様の存在を信じる気持ちになったわ。
ホント、首の皮一枚で繋がったわ・・・。ああ、よかった・・・・・。」
メリ・「それにしても、理解不可能なお客さんだったわ。宝くじでも当たったのかしらねぇ・・・?」
一応、めでたしめでたし。
でも本当にあの家族は何者だったのか?
あのお札は本当に本物だったのか?
なぜカードではなく、あんな業務用の一般では出回らないお札で現金払いをしたのか?
謎は深まるばかりです。
ミズエ