江東区は新宿や渋谷と言った街に比べ、
昔の町の匂いを感じる場所が多く、
何だか妙に落ち着く。
稽古場に行く途中に随所にある町工場。
昼間からつなぎを着たおじさんたちが、
薄暗く、風通しのない屋内で
タバコをふかしながら、しかし真剣に仕事をしてる。
山田洋次監督映画に『息子』というのがある。
何故だか分からないけど、学校の視聴覚室で見た記憶がある。
文部省(今の文部科学省)推薦とかだったのかなぁ。
なにしろかなりのインパクトだった。
映画自体は非常に淡々と、シンプルに、泥臭く進んでいく。
でもそこに出てくる登場人物達が、いちいち匂って来るくらいの
人間くささを醸し出してた。
そしてそれを捕らえるカメラ。
それまでテレビは見ても映画をあまり見てなかった僕は、
その突き放したような、それでいて温かく彼らを見つめ続けるカメラワークに
ショックを受け、知らず知らずのうちに引き込まれていったのを覚えている。
その中に出てくる、工場のシーン。
長瀬正敏がアルバイトで毎日資材を運ぶ得意先の工場に、
耳が不自由な事務員・和久井映見が働いてて、
ガソリンと鉄屑にまみれた、扇風機一つない工場の中でその姿は
それはもう、天使の様に映るわけで。
そんな、強烈な想い出の中の1シーンの工場と、目の前の工場が
重なり、思わずパシャリ。
良い匂い、してました。