12日に歌舞伎座御摂勧進帳を見た。もともと顔見世狂言として知られている。私は故二代目猿翁と松緑のを見た覚えがある。特に猿翁のが印象的だった。今回のは劇中巳之助の弁慶が「紀尾井町の兄貴に習った」と言っているから松緑に指導を仰いだと思われるが、問題点もある。一つは橋之助の富樫と市蔵の斎藤次の印象が薄いこと。確か猿翁の時には富樫と斎藤次が決まったときはS字の見得をかっきりしていたと思う。今回はあっさりしてさっさと退場してしまう。またアドリブが多すぎたのも問題だ。ちょうど橋之助が元乃木坂46のアイドルと結婚を発表した日だったので、それを手下が言ったのは仕方ないとして、弁慶が切った数多の雑兵の首を片づけるのにゴミの分別がどうこうと、しかも素の声で言っているのは余分だ。言うならこういう芝居だったら張って言う方がいい。問題は他にもある。弁慶が関所で雑兵の首をかき混ぜるところ、芋洗いのところで、何故か背景を海辺にしたことだ。この芝居は勧進帳とあるわけだから、当然関所で行われるとしなければならない。関所が海辺ということもないだろう。そうはいっても巳之助の弁慶は独特の隈がよく似合い、愛嬌もあって役にはまっている。橋之助の富樫も二枚目らしい品があった。また市蔵は久しぶりに見たが、アクの強い斎藤次を演じていたと思う。この古怪な芝居のおおらかさは出ていたと感じた。